第5話 夢のような時間
ヴァネッサはグラスをテーブルに戻したところで、僕達がお酒に手を付けていない事に気付いたようだ。
「どうして、飲まな…」
そう言いかけたヴァネッサは、呼吸が荒くなっていた。
「な、何を、…飲ませ…」
そこまで言ったところでヴァネッサはテーブルに突っ伏すように寄りかかった。
…随分と効き目が早いな…。
お酒の効果も相まって、思ったよりも媚薬の効き目は早いようだ。
ヴァネッサの様子を見たアドリアンは自分のグラスの中身を一気にあおると立ち上がった。
「さて。それじゃ行こうか。ポーラ、案内してくれるかい」
アドリアンは立ち上がるとヴァネッサを抱きかかえてポーラの後を付いて歩き出した。
僕は一人、椅子に座ったまま、三人が食堂を出ていくのを見送る。
いよいよか。
今夜、僕達の計画が実行される。
だが、自ら望んだ事とはいえ、アドリアンがヴァネッサを抱くというのは、非常に腹立たしい。
しかし、女にしか妊娠出来ない以上、アドリアンがヴァネッサを抱くのは仕方がない事だ。
そのうちにポーラが食堂に戻ってきた。
「リュシアン様、これをどうぞ」
ポーラにハンカチを差し出されて、僕は初めて自分が血が滲む程に唇を噛み締めていた事に気付いた。
唇から流れ出た血をハンカチで拭う。
「ヒールをおかけしましょうか?」
「大丈夫。このくらいの傷なら自分で治せるよ」
ポーラの申し出を断って切れた唇にヒールをかけた。
僕自身はあまり回復魔法が得意ではないが、少しの傷なら治す事が出来る。
「ポーラ。これを下げてお茶を入れてくれないか?」
僕は媚薬入りのお酒が入ったグラスを脇に除けた。
ポーラはグラスを下げるとお茶を入れたカップを僕の前に置いた。
ゆっくりとお茶を味わった後で、僕はアドリアン達がいるヴァネッサの寝室へと向かった。
そっと扉を開けると、隙間から激しい息遣いとベッドの軋む音が聞こえる。
やがて女の絶叫が聞こえた後、静寂が訪れた。
僕はそっと扉を閉めると壁にもたれ掛かり、アドリアンが出てくるのを待った。
やがてバスローブを羽織ったアドリアンが扉を開けて出てきた。
「なんだ、そこにいたのか。まさか見ていたとか?」
…流石にそこまで悪趣味じゃないが、聞いていたのだから大して変わらないかな。
「…さあね。それより、お疲れ。お風呂に入るだろう。僕が洗ってあげるよ」
「助かるよ。それにしてもあの媚薬は効き目が凄いな。今度、一緒に飲まないか?」
…へえ、そんなに凄いんだ。それは楽しみだが、今からというわけにはいかないだろう。
「いいけど、すぐには無理だな。お前の結婚式が控えてるし、新婚早々、アンジェリックを一人寝させるわけにはいかないだろう」
僕が指摘すると、アドリアンはいたずらっぽい笑みを返す。
「そんなの、昼間の執務中でも出来るだろう。いつも二人きりなんだからさ」
「やれやれ。これが将来の国王の言う事かね。こんな国王がいる国民に同情するよ」
「何を言ってる。お前だってその国民の内の一人だろう」
そんな軽口を叩きながらも唇を重ね合う。
浴室に入るとアドリアンはバスローブを脱いだが、僕はその体に視線が行く。
「どうした? 媚薬は抜けたんじゃないのか?」
アドリアンの体の真ん中でその存在を主張しているモノを指差すと、アドリアンは肩を竦めた。
「全部抜いたつもりだったが、まだ残ってたみたいだな。君が慰めてくれるんだろう?」
アドリアンが突き出して来たモノに僕は湯をかけてやった。
「その前にヴァネッサの痕跡を洗い流さないとね」
手でしごきながら湯をかけてやると、それは更に硬さを増した。
アドリアンが我慢できないようにうめき声をあげるが、そう簡単にはイカせてやらない。
「まだ出しちゃ駄目だよ。…ほら、後ろを向いて」
アドリアンのモノを握りしめたまま、後ろを向かせて、お尻を突き出させる。
…さっきの媚薬をここに持ってくれば良かったな…。
そんな事を考えながら僕達は夢のような時間を過ごした。
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