第2話 悪役令嬢サラ

「……え、誰」


 俺の第一声は、そんな一言だった。


「私は、サラ。あんたこそ、誰よ」


 サラと名乗ったその子は、銀色でふわふわの長い髪を持ち、丸くて大きなブルーサファイアの瞳が特徴の美少女だ。


「俺は、草下翡翠……って、サラ!? あの悪役令嬢キャラの?」


「何、悪役令嬢キャラって。確かに、私はヴィクトール伯爵令嬢の1人娘、サラ・ヴィクトールだけど……どこかで会った事あるの?」


「いや……」


 どうなってるんだ?

 ゲームをしようと思っていたら、それに出てくるキャラが目の前にいるなんて。


 まさか、これって小説とか漫画とかによく出てくる、乙女ゲームの世界に転移した、ってやつなんじゃ……!?


 なんて思いながら起き上がると、ふかふかのベッドで寝ている事に気付く。


「あれ、俺……なんでこんな所で寝てたんだ?」


「何でって、あんたがうちの庭で倒れてたから、私のベッドで寝かせてあげたんだけど?」


「庭で……?」


 なるほど、何が起きたか全く分からないが、俺は彼女に迷惑をかけた上に、この天蓋付きのベッドで介抱されたらしい。


「ありがとう、助かったよ」


「え……」


「何か俺、変な事言った?」


 戸惑っているサラが不思議で、俺は聞き返す。


「そ、そうじゃなくて……。私、その……お礼なんて言われた事初めてだったから」


「嬉しかったの?」


「そ、そんなわけないでしょ! 別に、あんたを助けたくてしたわけじゃないからっ! 庭に倒れられたままだったら、ご近所さんがびっくりするだけなんだからねっ」


「うわぁ、ひと昔前のツンデレキャラだ……」


 今あまり聞かないけど、かなり昔にやたら流行ったキャラの口調に似ている。


「それで、ヒスイは何であんな所で倒れてたわけ?」


「いや……それが俺にも分からなくて」


「なるほど、どこに住んでるの? 場所教えてくれたら、運転手に送らせるけど」


「お前……悪役令嬢なのに、本当は良いやつだよな。知らなかったよ」


「な、な、何をいきなり言うのよ! 別にこれくらい普通でしょ?」


「いや、優しいよお前。可愛いし」


「いきなり告白しないでよね! 私は、あんたの事なんか……少ししか好きじゃないんだから」


 少しは好きになったのかよ。

 まさか、サラの好感度上がったのか?

 チョロインすぎだろ。





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