じつは宇宙でした。
夕日ゆうや
じつはディストピアでした。
俺と晶は広大な宇宙空間から、青い星――地球を見下ろしていた。
『人ってすごいね』
『ああ。こんなところまでこれるんだからな』
俺は晶の言いたいことを引き受けて言葉にする。
宇宙服に反響する呼吸の音は、スピーカーから流れてくる晶の呼吸と一緒くたになる。
宇宙にちりばめられた星々は様々な色を見せ、この世界に俺と晶の二人だけだと言っている。
『兄貴、僕そろそろ戻りたい』
『そうだな』
晶にせかされるようにして宇宙船に戻る。
二重になっている扉――エアロックを開けると、俺と晶は宇宙服を脱ぎラフな格好になる。
ラフな格好の晶も……。
「兄貴、見蕩れているでしょ?」
「そんなことないぞ?」
晶は唇を尖らせている。
「もう、兄貴なら見られてもいいのに」
家族としての線引きをしているだけだ。
「さ、明日も人を探すぞ」
「うん。でも僕たち二人っきりもいいね」
宇宙に逃げた俺たちは地球の人々を救うことができなかった。
「兄貴はずるいな……」
「何がだ?」
「べつにー」
晶の態度を不思議に思いつつも、俺は宇宙船を操作する。
後ろからギュッと抱きしめられる。
前にお風呂場で感じたような柔らかなお胸がギュッと当たる。
俺は驚いて飛び跳ねる。
「兄貴ってば驚きすぎ」
恥ずかしそうにはにかむ晶がそこにはいた。
ピピピ。
時計のアラームが鳴る。
ああ。夢だったのか。
ひなたちゃんも光惺もいる世界。
ほっと一安心していつもよりも早い朝を過ごそうとリビングに向かう。
するとそこには晶が先にいた。
「いつもより早いな」
「兄貴だって」
晶の頬が少し赤らんでみえるのは気のせいか。
宇宙旅行、いつか行ってみたいな。
じつは宇宙でした。 夕日ゆうや @PT03wing
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