第5話:ちゃんとした考えのマリア。

マリアと過ごすようになって早一ヶ月。


僕は会社へ行き、マリアは家にいて掃除や洗濯を甲斐甲斐しくしていた。

お互いの想いも大切な存在からもっとも愛しい存在へと変わっていた。


しかもなによりマリアの料理はプロ並みの腕で超美味かった。


「今夜はシューちゃんの好きなポトフ作りますからね、あとスクランブル

エッグ添えて・・・」


「めちゃ助かるわ・・・今まで自炊した、カップラーメンばかり食ってたし、

あとはコンビニ弁当だったり外食だったり・・・僕、けっこう食のバランス

悪かったからな・・・」


「あと4が月は私がいますから、大丈夫ですよ」


「ああ、そうなんだよな4ヶ月なんだ・・・マリアといられるの」


そう思うと俺は切ない気持ちになった。


「あのさ、マリア・・・ひとつ聞いていい?」


「なんでしょう?」


「君、今まで何人くらいの人のところにお世話になってたの?」


「ん〜どうでしょう・・・はっきりとは把握してないんです」

「たぶんですけど、5人くらいじゃないでしょうか?」


「え?たぶんって・・・覚えてないの?」

「それに5人って、そんなもんなの?」


「あのね・・・私、全員は記憶してないんです」


「どういうこと?」


「たとえば、私をモノみたいに扱った人とか、私が嫌いになった人とか

とにかく思い出したくないこととか、嫌なことは・・・私の頭に中から

全部消去しちゃいますからね・・・だから覚えてないの?」


「ああ・・・楽しかったことしか記憶にないんだ・・・」

「だったら、たぶんお世話になった人は少なくても10人はいたと思うな・・・」


「どうしてですか?」


「まあ、だいたい半分くらいの人は、どうしようもないクズだったって

思うから・・・」


「あはは・・・おもしろ〜い・・・あはは・・・」

「シューちゃん、すご〜い・・・それ当たってるかも〜」


(あ〜マリアはテンション上がるとタメグチになるんだ・・・)


「でさ・・・その中にマリアを買い取ろうって人いなかったの?」


「注文すれば買えないこともないと思いますけど、そんな高額払うよりレンタル

したほうがお安いでしょ」

「それに飽きちゃったら返品すればいいですし次のガイノイドレンタルすれば

いいでしょ」

「一度買っちゃうと飽きても壊れない限り破棄できないですよ・・・」


「ガイノイドにそんな大金払ってまで買おうって人は、よっぽど物好きです」


「冷静に言うね・・・」


(そうなのか・・・じゃ〜僕は物好きってことになるのか?)

(僕、今本気でマリアが欲しいって思ってるんだけど・・・)


「よく分かった、ありがとう・・・できたら僕のことは記憶からは消さないで

ほしいな・・・」


「ん〜・・・今のところは大丈夫かな?・・・」


「今のところってなんだよ?」


「・・・大丈夫だよ・・・そんな、顔しない・・・」

「シューちゃんいい人だもん・・・私の記憶から消そうと思ってもきっと

消えないと思いますよ」


「そうかな・・・いい人か・・・でも僕は聖人君子でもなければ清廉潔白な

男でもないよ」

「クチに出せないようなことだって考えてるし、人を恨んだり、憎んだりもするし

ウソもいっぱいつくしさ・・・心に闇だって抱えてるし汚れてるし・・・」


「そんなふうに自分を卑下しちゃだめだよ・・・」

「シューちゃんって、いい性格の人だって私には分かるよ・・」

「いろんな人、見てきたからね」


「自分のことをちゃんと分かってて自分に正直に生きてたらそれで充分だと

思うんだけど・・・」


「って、私・・・シューちゃんに偉そうなこと言ってるね・・・ごめんね」

「だからオーナーさんに嫌われるのかな・・・」


「いや・・・謝らなくていいよ・・・マリアの言ってることは正しい」


「そんなこと、いいじゃないですか、シューちゃんは私に優しく接してくれるし」

「私はそれだけでシューちゃんのところに来てよかったって思ってますよ」


「だからね・・・したいって思ったら言ってくださいね」


「え?何を?」


「エッチですよ、エッチ・・・」


「あ〜どうしてもそこへ持っていくのか・・・」

「それって習性?」


つづく。


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