第4話:心の渇きを潤して。

「え?なに支度って・・・飯でも作ってくれるの?」


「なに、言ってるんです・・・エッチですよ、エッチ」


「そのために私を引き取ったんでしょ」

「ノルマ果たさないとモニターさん失格ですよ」


「まじで言ってる?・・・マリア・・・」


「いやいや、いくらそう言うことに特化してるって言っても来ていきなりってのは

どうかな?」

「たしかに君は俺のタイプの子だけどエッチだけが目的で君に来てもらった

わけじゃないからね」

「まあ、そう言うことも、そのうち必要かもしれないけどさ・・・」


「僕としてはどっちかって言うとふたりで仲良くテレビ見て笑って・・・

マリアとの温もりのある暖かい生活が望みなんだけど・・・」

「どうしても君のプライドが許さないっていうのならまあハグとかキスくらいは

してくれていいけど・・・」


「本当にいいんですか?・・・遠慮しなくていいんですよ」

「・・・もしかして私に気を使ってくれてます?」


「って言うか、バカみたいかもしれないけど愛情もないのにエッチしたって

虚しい気持ちになるだけだろ?・・・そういうのはな〜」


「それにマリアがいくらセクサロイドでも、そんないい加減な気持ちで

君を汚したくないんだ」


「まあ、なんて人?」

「今時、そんなこと言う人いるんですね・・・男性はみんなエッチいこと

しか頭にないのかと思ってました・・・」


「・・・・・・え?」


「おいおい・・・なに?・・・どうした?なんで泣いてんだよ」


「今まで、私のことなんか考えてくれる人なんていなかったです・・・」


「え〜だからって泣かなくても・・・」


「レンタルですし私のこと電化製品かなんかだと思ってるんですよ、みんな」


「僕はマリアのこと電化製品だなんて思ってないからね」


「ありがとうございます」

「私、今までいろんな人のところで働いてたんですけど・・・」


「みんな君のことを、ちゃんと扱ってくれなかったんだ」


「そうです・・・私がセクサロイドだからかもしれませんけど・・・」

「でも、手荒く扱われたらやっぱり嫌ですよね・・・」


「そうだね、人間もガイノイドも同じなのにな・・・」

「そうか・・・君は泣くって感情をちゃんと持ってるんだ」

「僕はマリアに対する認識を改めなくちゃ・・・」


「さっきも言ったけど俺はマリアには体の欲求を満たすより心の渇きを

潤して欲しいって思ってるんだ」

「及川さんにはちゃんとセックスしてますって報告しとけばいいだろ?」


「分かりました・・・でも言ってくださいね、私頑張りますから」


「うん、でもそんなに頑張らなくていいから」

「ほら、おいで・・・」


そう言って僕は、マリアを抱きしめた。


「僕、エッチはともかくハグはいっぱいしてほしいかも・・・」


「はいっ」


「それとできたらチューも・・・」


僕がそう言うとマリアは背伸びして俺の唇にチュッてキスした。


「それよりさ・・・腹減ったんだけど・・・」


「あ・・・今すぐ昼食の支度しますね」


そう言うとマリアは小ぶりのトランクからエプロンを取り出した。


「私、シューちゃんのために腕を振るいます」


うん、いいんじゃないか、この雰囲気、僕がずっと求めていた暖かさ温もりが

ここにはあるよ・・・って喜んでいたらそしたらば早速なにかやらかした。


「きゃっ」って声がしたかと思ったら皿の割れる音がした。


「ごめんなさい・・・お皿割れちゃった」


「割れちゃったじゃなくて、割っちゃったんだろ?」

「あのさ・・・ガイノイドもそういうドジなこともするんだね?」


「私、人間に限りなく近く作られてますから・・・」

「ちょっとヌケてるところがあると思いますけど大目にみてくださいね」


「それってガイノイドに必要なことなの?・・・」

「人間みたいに感情的にならないで失敗しないところがウリなんだろ?」


「何もかも完璧ってつまんないじゃないですか?」

「少しくらいドジなほうが可愛いと思いません?」


「それを自分で言う?」

「でも、そんなことも言えるんだ・・・君ってマリアって面白い・・・」


僕はガイノイドってを過小評価していた。

まさか、ここまで人間に近いところまで進歩してるとは思わなかった。


そう、マリアは普通のセクサロイドと違って特別に作らてるんだ。

より人間に近いって言うか、もう人間そのものだって言ってもよかった。


僕の紳士的な?って言うか彼女にとった態度でマリアは一気に僕を

好きになった・・・って言うより僕を愛しちゃったみたいだ。


つづく。


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