ギルティ・カラミティ
@key3394
プロローグ
身も凍るような暴風雨、毒々しく黒い空、世界の終焉と言われても誰も違和感を持たないような景色が目に映る。しかしここが先程まで人の住んでいた街と言われて誰が信じるのか。辺りには瓦礫が散乱し、おぞましい匂いが支配している。そんな場所で、自分は何をしているのか。少年は一人足場の悪い場所を歩く。
[ザッ…ザッ…]
ゆっくりと歩みを進めて近くの瓦礫を持ち上げる。大きな音を立てて崩れた瓦礫の中にはバラバラになった肉片が転がっていた。猛烈な吐き気と共に瓦礫から手を離し大きな音が鳴り、肉片が飛び散る。
「オエッ……。」
口を抑えて吐き気を抑えて歩みを進める。暫く歩くも人影は見えず、変わりに不自然な肉片が辺りに散らばっている。
「どうして…こんな事に…。」
何故こうなったのか考える。昨日はまだ平和な日常だったのに、今では地獄絵図とも呼べる異質な状態になっている。家族も、友も、そして街に住む人の殆どが死に絶えた。
“普通の日常を送る人が妬ましい”
再び歩き出し、暫く進むと一際大きな建物の残骸にたどり着く。雨の音で聞きづらいが人の足音が僅かに聞こえる。人の声が聞こえたからか少し気分を上げて近づいていく。その先で数人の人を見つけた。
“集まっている奴等が妬ましい”
手を振ってその人だかり近づいて行く。近づいて気付いたが、その集団の中心に負傷した男がおり、その人の顔に見覚えがあった。すると集団のうちの一人がこちらに気づいたような動作をする。しかし、その動作は人を見つけたとは思えない程慌てたものだった。
「化物だ!化物が来たぞ!」
そしてそう叫んだ。形は後ろへ振り向くがその様なものは居ない。ふと、足元に溜まった水溜りに目が移る。そこには_
「あ…」
到底、人とは呼べない怪物が映り込んでいた。
形は歩みを進める。何があったかは分からない。周りに居た人は弾け飛び、空気を血で染め、肉は散らばっていた。しかし、負傷した一人の男だけはなんとも無い。そっと、その男に触れる。まだ、あたたかい。
「そうか…私は…」
おぼろげな記憶が蘇る。何故忘れていたかもわからない記憶が脳を駆け巡り、全てを理解させる。
「ああ…私は…」
ふと、背後からガタガタと音が鳴る。形は顔に手を当てながら立ち上がり、背後に向き直る。
「…私の罪を…清算する…。」
暴風雨が激しさを増し、辺りの空気が重苦しいものになる。
「ああ…妬ましい。その存在が私にとって…妬ましい…!」
顔から手を離すと、そこには狂ったような笑みが浮かんでいた。
「だから…殺す。」
形は使命を全うするべく、動き出す。その先に、幸せなど無いと分かっていながら。
ギルティ・カラミティ @key3394
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