活動記録12:『生徒会』←何故かバカみてぇに権力握ってる

「なるほどの。つまりおにおんおんが解き放たれたのはお主らの仕業だったわけじゃな」


「すんません、お主じゃないっす。コイツです、コイツだけの仕業です」


「私だけのせいにしないでちょうだい。連帯責任よ連帯責任」


「なめんな」


 場所は生徒会室。会長さんによる取り調べなう。


 やったら豪勢な造りの部屋だ。大きなシャンデリアや、何も入っていない本棚など、部屋のありとあらゆるものが宙に浮かんでいる。


 ちなみに、床から2センチほど。床の下はホコリだらけだ。


 そして何故か、シャンデリアは隅っこにある。


「ところで、なんでかいちょーさんは椅子じゃなくて机に座ってやがるです?」


「椅子がないからじゃ」


 部屋の方に予算使い切ったのだろうか。


 しかし、机に足を組みながら座り煙管を吹かせる会長さんはすげぇ絵になってる。


「この部屋に椅子を置くと、天井にまで浮いてしまうからの。そんなことより主ら、おにおんおんを解き放った責任、どうとるつもりじゃ?」


 まぁそうなるよなぁ。


 しかし、あんなバケモノを今までずっと放置してた側に問題あると思うのだが。


「でもちょっと待って? あのバケモノ、会長さんの力で瞬殺できたよね? なのになんでずっと封印してたの?」


 よし、いいぞトオル。もっと言ってやれ。


「理由はある。アレはの、冬の生徒会鍋パーティーに欠かせぬものだったのじゃ」


「なんすか、その生徒会鍋パーティーって」


「寒い時にやる、ただの鍋パーティーじゃ。おにおんおんがおるとな、鍋の美味しさが三割増に」


「叩き切っちまえそんなもん!!! じゃ何か!? アンタあんな力持ってながら生徒の身の安全より美味しさ三割増鍋を選びやがったのか!?」


「お、落ち着きなんし! あの祠は変な触り方さえしなければ問題無かったんじゃ! それに、わっちの目力はあんまり使いたくな……あっ、ちょっ、肩揺らさないで! えっち!!」


 おっといけない。会長さんの姿がよろしくないことに。でもわざとじゃないんだからね!


 それはそうと、今ちょっとキャラ崩壊してた気が……。


「あきちゃんあきちゃん。かいちょーさんが変な触り方って言ってやがりやすけど、何か心当たりはありますか?」


「別になんもないわよ。ただふつーに……あでも待って、確かあの祠を触る前に鼻クソほじったよーな……」


「ぜってーそれじゃん!!」


 ホントにろくな事しやがらねぇ!! つか汚ぇ!!


「まぁ過ぎたことグチグチ言ってもしょうがないじゃない。それよりアレよ。私たちは会長さんに用があるの。部室の申請なんだけど、できるかしら?」


「お主この状況でよく頼み事ができるの……」


 ホントにな。


「責任云々の話なら、後でいくらでも聞くわよ。でもいいの? 在校生全員、あの様子じゃ祠のことは知ってても、例のおにおんおんとやらは知らなかったようだけど」


「……何が言いたいんじゃ」


「べっつにー? ただあんな化け物を会長さんは私情で放置してたと知ったら、皆どんな反応するのかしらねーって」


「ぬぅ……汚いのお主……」


「分かったわよ、後で手洗ってくるわ」


「そういう意味で言ったわけじゃないと思うよ。あとあき、手は今すぐ洗ってきなよ」






 そんなこんなで、会長さんはあきのきったねぇ手から部室の申請書を受け取り、読み始めた。


 その間に、あきは手を洗いに御手洗へ。


 会長さんが申請書を読み終えたのは、丁度あきが戻ってきた時だった。


「なるほど、『フシギを探し求める部活動』、略して『フシたん部』、の。主ら、『フシギ』なんて古い言葉よく知っておるな」


 俺、あき、トオルの三人は顔を見合わせる。『フシギ』が古い言葉?


「そんなに古い言葉なんですか?」


「それほど古い言葉でもないがの。目力が世に広まり始めた五十年ほど前までは使われていたはずじゃ」


(なぁ、今五十年ほど前って……)


(うん、言ってたね)


(言ってたわね。どうやら、この世界は私たちとは違う歴史を歩んできたようね)


「ん、なんじゃ、こそこそと」


「「「なんでもないでーす」」」


 家や身内がそのままであったことから、俺たちが五十年後に飛ばされたという線はないだろう。


 ならやはり、この世界は所謂パラレルワールドというやつなのだろうか。


 もしかしなくても、昨日の出来事の中に答えがあるのだろうが、謎は深まるばかりだ。


「はいっ! なんで使われなくなっちゃったんでしょーか!」


 さっきから俺が聞きたいことを先に聞いてくれるシェイさん。


「フシギとは、元々『不可思議』という言葉の略称じゃ。漢字で思議が不可と書く。つまり、思うこと、議論することなどの考えを巡らせることが不可能という意味じゃ」


 そういう意味があったとは。テキトーになんかよく分からないものに対して使う言葉だと思っていたが。


「じゃが、目力のおかげでそんな考えを巡らせることが不可能なことなど、最早日常茶飯事になった。今じゃ何が起こっても、『目力のせい』で済んでしまうの。結果、フシギという言葉は日常に溶け込む形で消えていったというわけじゃ」


 当然と言えば当然の話である。


 何が起きてもフシギでない、のなら、言葉も一緒に消えてしまうだろう。


「して、‎そのフシギを見つけて皆をアッと驚かせるのが活動目的と書いてあるのじゃが……」


「ええそうよ。ほら、このせか、んっんっ! ここ最近、皆生命の危機に陥らない限り誰も物事に関心を示さないじゃない?」


 その生命の危機に一日に二回も遭遇した件。


「そーこーで私たちの出番ってわけ! 皆をアッと驚かせて楽しんでもらうの! そして、私たちはその発見者として有名人になるの!」


 中学時代に、あきが俺に向かって言った台詞のまんまだ。


 会長さんはしばらく目を瞑り、腕を組んで考え込むと……


「なるほどの。つまり、大衆の『感情指数』を上げるのが目的のわけじゃな」


 なんだ『感情指数』って。


「よく分かんないけどそれでいいわ。で、私たちの部室はどこになるのかしら」


「待ちなんし。まだあげるとは言っとらん。生憎、空き部屋はひとつしかなくてな。加えて主らより前に申請に来た先約がおるんじゃが……」


「先約?」


「自分らだよ。なんだお前ら、『確実情報部』の部室を横取りする気か?」


 誰だ、誰だ、誰だー。


 後方に影。


 ストレートに下ろしたおさげヘアの藍色の髪。四角い額縁メガネ。


 いかにも真面目ちゃんな見た目の女の子から、見た目に似つかわしくない喧嘩腰な言葉が。


 まーたなんか出てきたよ……。






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キャラクターNo.9

『会長さん』

凪咲高校の生徒会長さん。学校にある組織は、全て彼女が管理している。年齢はユウ達の一つ上。煙管なんてその歳で持っちゃいけないもの持ってるけど、この世界では立派な成人だし、そもそもタバコじゃなくて鎮静剤だから問題なし。学校中をまとめられる手腕と美貌から、生徒達(主に男子)にとても慕われているようだ。どっか抜けてっけど。本人としては、もうちょっと女子からモテたいようだが、その見た目のせいであまり上手くいってない様子。六つ歳が上の兄がいるらしいが……。

ちなみに、シェイに負けず劣らず中々のモノを持っている。何がとは言わない。



イラスト!! 描き手はわた氏さん!!

https://kakuyomu.jp/users/b-san/news/16818093090826274170


わた氏さん

https://kakuyomu.jp/users/72Tsuriann


瞳の色:オブシディアン

目力:これでバッサリさよーなら

対象を切断するシンプルかつ強力な能力。何かしらの代償があるようだが……。


フシギ豆知識12

今回は感情指数について。感情指数とは、その人の向上心、好奇心、信仰心等の〇〇心と付く物をまとめ数値化した、言わば意志の強さのこと。この数値が高ければ高いほど、目力の性能がアップするぞ!

しかし、最近では物事に無気力、無関心な人が増えて、この感情指数の平均が低くなっているそうな。

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『フシギ』←を探しています ビーさん @b-san

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