第3話 もうこわくないよ


 お母様が松明の炎で何かするより早く、背後で扉の開く音がした。

 私の名前を呼ぶ声と、ばしゅっと飛沫の上がる音がして。


 座っている私の頭上を飛び越え、水柱がお母様に正面から激突した。


 お水下さいって言ったけどぉ! 確かに言ったけどぉ!! 消火してくださいって思ったけどぉ!!

 滅茶苦茶直接水が来た!?


「イザベラ! ああ可哀想に! 今助けるよ」

「あっ、あぁみっ」


 アーミアン殿下ぁあああっ!


 背後から駆け寄って来た殿下。麗しのアーミアン殿下。

 水柱の下を掻い潜って来た所為でいつも以上にしっとりとした麗しさ。水に濡れた黒髪が白い肌に張り付き、渋みのある深い緑色の目は真っ直ぐ私を見詰め、麗しの外見から想像できない節くれだった意外と大きな手が私の頬に…あれ?


 ああいけない泣いてた。水柱から滴る水で誤魔化せないくらいには泣いてた。

 でもってアーミアン殿下の名前が呼べないくらい口元が覚束ない。そもそも呼吸が上手くできない。

 でも水柱がいい仕事したからもう平気。お母様の持つ松明は今じゃもうただのしけった木の棒だもん。怖くない。

 私の涙を拭った殿下が悲し気に目を細める。うっ顔が良い。産まれて来てくれてありがとう。好き。


「ちょっとアーミアン。早くイザベラを連れてってよ。いつまでこんな所に居させる気?」

「ああ、すまない」


 あああああ救世主ぅ! あっしゅぅううう!!


 アーミアン殿下が移動しても水柱はお母様一直線。そして私を呼んだ声は二つだった。つまり助けに来てくれたのはアーミアン殿下だけじゃない。

 殿下は手早く縄を解いて、ぐったりしている私を抱きかかえた。心の声は元気ですが私は死にそうです。

 ほんと呼吸がだめ。落ち着きだしているけど心臓も早鐘。そんな私をお姫様抱っこしてくれたまじもんの王子様が部屋の出入り口を振り返る。これ別の意味で私の心臓が落ち着かないわ。とか思いながらも私もやっとそっちを見れた。


 そこには、どでかいホース付き水鉄砲をお母様に発射し続ける無表情の我が双子の兄、アシュトンがいた。


 …なにそれー…?


 そのホースどこに繋がってるのー…? 成程ホース付きだからいつまでたっても水柱が衰えないのかぁーそっかぁー…それ私が「火災の時真っ先に消火する道具欲しい」って研究していた放水ポンプもどきじゃーん!?


 火災怖いからね!! 対処法をね!! 考えるよね!!! でもそれ人に向けていい奴と違う!!

 消防車程の威力はないけど水の威力を舐めちゃいかんよ! お母様呼吸出来てる!?


「オカアサマシンジャウ!」

「気絶すらしないよしぶとい人だから」


 辛辣ぅ。

 お母様から理不尽な暴言に晒されて来たアシュトンはお母様に対してとても辛辣。

 放水ポンプもどきで執拗に狙い続ける程度にはお母様を嫌っている。でもほんとそれ顔狙ったりすると危ないからぁ!! 首折れちゃう!!


「アシュ、アシュトン! オマエェエ!!」


 っあ―――っお母様びしょびしょ! 化粧も崩れて髪型も崩れて鬼の形相に!

 何とか抵抗しているけど全身濡れ鼠に!!

 ぶっちゃけ私も濡れ鼠ですがお母様とは雲泥の差!

 あと水の行き場がなくて地味に床が水浸しで魔法陣消えたねやったぁ! あれは明らかにヤバイものだったから消えて良かった!!


「公爵夫人は少し呪いにのめり込み過ぎているようだ。まるで病気だ。これ以上の問題を起こす前に静養したほうがいいのではないか?」

「そうだね。母は領地で静養させるよ。実の母親とはいえ次期王太子妃を怪しげな儀式に巻き込むなんて正気の沙汰じゃない。きっと大病だ。父上もわかってくださる」

「これは姉様に必要な事なのよ!」


 お母様相手は殿下です不敬ですよお母様! 今更ですけど!!


「いい加減にしなよ…まったく、ここは僕に任せてイザベラを上に。早く着替えさせてやって。風邪ひく」

「ああ、責任を持って着替えさせるよ」

「おい侍女に任せろよ」

「……勿論」

「その間は何だよこのむっつり…その状態のイザベラに手を出したら捩じるから」

「ねじ…?」


 あああああ体調が万全だったらなー! ドキドキのイチャイチャタイムが期待できたのになー!

 流石に貴族だから婚約者同士で着せ替えっこなんてあり得ないけどー!

 残念だなー! ほんとになー!!


 アシュトンに促されて移動するアーミアン殿下の肩越しに見えたのは、無表情のアシュトンが喚くお母様に放水し続けるシュールな光景だった。

 あんなに怖かったのに完全にギャグ。恐怖も水で流された。流石救世主アッシュ。


 見覚えのない部屋は地下室だったようで、お母様の部屋の暖炉から繋がっていた。

 一体いつの間にこんな部屋が。もしかしてずっと昔からあったんだろうか。我が家には他にも隠し部屋があったりする…? ちょっと待ってほんとうにこの家でクトゥルフのシナリオ書けちゃうじゃん待って。

 屋敷は大騒ぎで、私は行方不明扱いだった。まさか自宅で家族に拉致されて自宅の地下で儀式に巻き込まれるとは思わなかった。

 やっぱりクトゥルフ。邪神の召喚じゃなくて呪いの儀式だったけど大した違いはない。

 割とよくある。


 殿下は私を温めるように命じて、侍女たちによって湯船に入れられマッサージされすっかり温められた。トドメに蜂蜜入りホットミルク。ぽかぽかだ。

 とても時間がかかったのに、(公爵家的に)小さな談話室にはまだ殿下がいた。

 嬉しいけど、お忙しい人なのに。

 きゅんとすると同時に胃がしくしく痛む。ほんと忙しいんだよ王族って。御付きの人が何か書類持って来てるもん! ここで仕事してる! ひえー!


「殿下! お待たせして申し訳ありません」

「いいんだ。僕が指示したことだし…それに、公爵がまだ帰ってきていない。アッシュもまだ夫人の相手をしているし、あんな目に遭った君を一人に出来ないよ」

「うわしゅきぃ」

「僕も」


 被った令嬢の仮面猫三匹もすぐメロメロにされる。はぁーっ未来の旦那様は顔だけじゃなくて頭も性格もいいー! 産まれて来てくれてありがとう! 出会わせてくれてありがとう救世主アッシュ!


 アーミアン殿下は、クレイアン陛下とクトリーナ王妃の一人息子。

 クトリーナ王妃は元子爵令嬢で、クレイアン陛下と目と目が合った瞬間好きだと気付いちゃったけどクレイアン陛下にはエリザベス婚約者がいた。

 もうこれお約束だよね。イケナイことへの背徳感とどでかい障害で愛が燃え上がっちゃったんだ。

 やめて燃えないで! 誰かお水持ってきて!! 放水ポンプもどきでもいいから!!

 エリザベス伯母様と三角関係を繰り広げ、エリザベス伯母様の事故死で微妙な空気になりながらも、お二人は大恋愛の末に婚姻を結んだと巷で有名だ―――が、その大恋愛の恋人たちも燃え上がっていた炎に誰かが水をぶっかけてくれたのか、かなり冷めている。

 私がお願いしたタイミングじゃない。もうちょっと早く冷静になって欲しかった。


 まず、産まれたアーミアン殿下がクレイアン陛下に全く似ていなかった。クトリーナ王妃にも似ていなかった。

 どちらにも似ていない所為で、クトリーナ王妃の不貞が疑われている…理不尽って思うけど噂になるほど異性と近しかった。

 ちょっとぉ大恋愛って言ってたじゃん!!

 さらにお母様が主張する、エリザベス伯母様の巻き込まれた火災への関与。

 お母様はクトリーナ王妃がエリザベス伯母様を嵌めたのだと嘯いているが証拠もなく、お母様がエリザベスを慕っていることはみんな知っているので、過剰に発言しているのだと気にしていなかったけど…。


 私がデビュタントした十五歳。王宮の夜会で。

 エリザベスと瓜二つのイザベラを見て、クトリーナ王妃は血の気を失い卒倒した。


 後日、その日は気分が優れなかったと発表があったけど、誰もが邪推した。

 クレイアン陛下が目を見張るほど、私はエリザベス元婚約者と瓜二つ。

 お母様ほど本気にする人はいないけど、エリザベスの生まれ変わりではないかと囁かれている。

 いや囁かないで? 写真の無いこの世界、皆の記憶から風化しかけたエリザベスの面影が濃いのが私ってだけでしょ? そうでしょ?


 恋敵似のご令嬢を見て卒倒した王妃。

 かつての三角関係の結末。

 事故は本当に事故だったのか?


 口さがない貴族たちはこぞって噂し、クレイアン陛下も疑いの目を向けるようになり、クトリーナ王妃は現在孤立して離宮で静養中とのこと。


 私が夜会に出ただけでこんな大ごとになるものです!?

 エリザベス伯母様の人間関係やばすぎませんかね!?


 そんな私なのに何故、アーミアン殿下の婚約者になったかというと…不貞疑惑が拭いきれないから。

 万が一本当にクトリーナ王妃の不貞で産まれたのがアーミアン殿下であった場合、アーミアン殿下は王家の血を引いていないことになる。

 クレイアン陛下にご兄弟はおらず、アーミアン殿下も一人っ子。王家と一番近い血筋が我が公爵家。

 万が一を考えて、血の返還の意味で私がアーミアン殿下の婚約者に選ばれた。

 アーミアン殿下の不安要素は血筋だけって言われるくらい優秀だったこともあり、立場的に王位を継ぐのはアーミアン殿下だけど影の王の血筋は私。血筋だけの扱いでは女王と王配の扱いになるらしい。


 ちょっと待って流石にそれは無理よ? 血筋だけよね? 女王として振舞えないからね? エリザベスなら大丈夫って言うけどアイアムイザベラ。皆さん正気に戻って。

 年代が上がるごとに帰って来たエリザベスって感じになっていてちょっと複雑。

 クトリーナ王妃もだけどクレイアン陛下も私を見る目が年々淀んでいてちょっと怖い。

 私イザベラ。エリザベス違う。


 完全政略そんな選ばれ方な私たちだけど、交流を繰り返しアーミアン殿下とは相思相愛になれたと断言できる。

 押せ押せごーごごーで腹を割っておしゃべりした甲斐があるってものよ。


 だって幸せになりたいじゃん!? 結婚するなら好きな人とが良いじゃん!

 政略結婚で選べなくても良い所見つけていけばハッピー! 嫌な相手じゃなくてマジ良かった! ちょっと卑屈なところあったけど環境の所為だね知ってる!

 なによりアシュトンのおかげで大騒ぎになる前から顔見知りだったのが一番の理由! お母様がデビュタントまで外に出さなかったからな私を!

 アシュトンがいなかったら人見知りが悪化して引きこもりになるか我儘三昧して世界で一番お姫さまになってたわ! アッシュは私の救世主!!


 書類に目を通す殿下の邪魔にならないように…とか思ったけど我慢できなくてピッタリ隣に貼り付くように座った。そんな私をアーミアン殿下は嬉し気に見つめてくれる。


「アッシュが来るまでこうしていていいですか」

「アッシュが来てもこうしていてくれると嬉しいよ。ふふ、懐かしいね。アイツはあちこち走り回って、連れ回していたはずの僕たちを置いていくから…アッシュが戻って来るのを、二人でくっつきながら待っていた」

「アッシュに捨てられたら立ち直れないって二人で泣きましたね」


 いやガチで。

 救世主アッシュに見捨てられたら私たちの精神ポッキリ折れる。

 それだけ強烈に強引に、力強く私たちを狭い世界から連れ出してくれた。お母様の狂気を、貴族たちの悪意を振り切る位の勢いで…家族として、友達として、むんずと手を握ってくれたのはアシュトンだけだった。


 …その勢いについて行けず置いていかれたこと多数。殿下と揃って泣いた恥ずかしい思い出。

 思っていたより精神的にキテいたらしいお母様の言動。前世の記憶があってもあれは怖い。殿下と一緒にわんわん泣いて、励まし慰め合って、弱く柔らかい部分を共有して…泣き止んだ頃にアッシュが迎えに来るからまたわんわん泣いた。

 …振り返るとガス抜きさせていたのかなってちょっと思うけど、幼いアシュトンが何処まで考えていたのかは不明。

 頭のいい子だからあり得そうだけど、確認したことはない。あの子だって母親におかしな理由で邪険にされて思うところはあったはずだし、言わないなら聞かない方がいい。

 その分だけ、言われた事には真摯に向き合うと決めている。


「アイツは昔より厳しいから、僕も見捨てられないように必死だよ」

「アッシュはアーミアン殿下を臣下として支えるつもりですから、余程の暴挙に出ない限り見捨てたりなどしませんわ」

「分かっているけど、身近な指針になるからね。アイツが傍に居るうちは、僕でも大丈夫な気がする」

「貴方だから大丈夫なんです」


 ―――王家に一番近い血筋はスターレット公爵家。

 アシュトンはその嫡男で…アーミアン殿下に一番年近い、王位継承権を持つ男児。

 本人にはそんなつもりはないけれど、場合によっては担ぎ上げられる立ち位置に居る。アーミアン殿下に王位継承の資格なしと判じられれば、王位へと担ぎ上げられるのはアシュトンだ。

 繰り返すけど本人にそのつもりはなく、私とアーミアン殿下をいつも傍で支えてくれる。


「私も傍に、いますし」


 アシュトンが反旗を翻すとか、アーミアン殿下が耄碌するか私と婚約破棄しない限りあり得ないことだし!

 殿下は大きな手で私の肩を抱いて、そっと引き寄せた。今の私ってば風呂上がりなのでポカポカあったかですよ! なによりいい匂いするはず! あっ殿下好みの匂いかどうか不明…好みであれ!!


「アッシュだけじゃない。イザベラにも見捨てられたら生きていけない。僕の幸福は、いつも君たち兄妹が運んでくれる」

「いつだって今日みたいに助けてくれる殿下を見捨てるわけないじゃないですか」


 勿論アッシュもな! いつもありがとう救世主アッシュ!!

 アーミアン殿下もありがとう!! 流石に今回はもう駄目かと思ったよ! ここまでヤバイ儀式まで始めるなんて…。


 …私が王家に、殿下に嫁ぐことは殿下の王位継承の為、不安要素を排除するための決定事項。

 それに反対するようなお母様は不穏分子。

 このまま騒ぎにするのもまずいので、アシュトンは速やかにお母様を領地に送るだろう。お父様が帰ってきたらすぐにでも出て行けるよう準備しているはず。そのために今ココに居ないんだし。

 アーミアン殿下も儀式のことを思って、憂うような目になった。


「呪いの儀式は、やはり取り締まるべきだね。お呪いの域を出ないモノだって無視はできない…いくら我が国が呪いに対して否定的でも、のめり込んで信じてしまう人は出てくる。信じすぎるのは危険だ」

代表例お母様…」

「隣国では普通なのだから、ただ禁止するだけでなく規則が必要だ…悪い意味でのめり込む人は…心の拠り所を求めてしまうんだろうね。夫人はいつまでも、君の中にありもしない亡きエリザベス嬢の記憶を求めていた」

「…私は、私でしかないのに」


 前世の私もひっくるめて、私はイザベラ

 お母様は愛情深すぎて…不当に亡くなられたエリザベス伯母様を忘れられなかった。姉に瓜二つな、炎の悪夢に魘される娘に、炎で亡くなった姉が戻って来たのだと思い込んでしまっていた。


 そうじゃないのに。

 ―――産まれた我が子を、我が子として愛した時だってあったはずなのに…。


 どうしてこうなっちゃったかなぁ。私が前世の記憶を思い出しちゃったからかなぁ。

 私が炎を恐れなければ、ただ似ているだけの娘になれたかな。

 そうすればアシュトンだって毛嫌いされず、息子として扱われたかな。

 そうすればもっとお父様も、仕事ばかりじゃなくて家庭を顧みてくれたかな。


 全部たらればで、もう起こってしまったことだけど。


 思わずしょんぼりすれば、殿下が慰めるようぎゅっとしてくれた。ううーん乙女としてそれだけで心のチャージは満タンですが寂しんぼとしてはもっとぎゅっとしていてください。


 ほんと、どうしようもない。前世の記憶もホント役に立たない。

 死の記憶こんなものないほうが上手く生きられたはずなのに。なんでこんなものあるんだろ。

 どうしようもないことだけどうだうだ悩んじゃう気持ちは捨てられない。

 殿下だって、せめて王妃様に似ていれば…ってどうしようもないことで沢山悩んだ。

 アシュトンだって、お母様のエリザベス伯母様への執着がなければって沢山悩んだ。

 だけどどうしようもない。

 どうしようもないけど…だからこそ、切り替えなくちゃ。


 親に恵まれなかった私たちは寂しがり屋。

 だからこそ、幼少期から築いた関係をなくしたくない。

 幸いなことに政治的にも血筋的にも問題ない。私たちは一緒に居る為に、周りを納得させながら、お互いの手を放さないよう誠実にならなくちゃ。

 何せ未来の王様と王妃様ですので! こんなようわからん想いを次世代の子たちに味わわせちゃいかんってもんだ!


 お母様への諦観や寂しさを誤魔化すように、慰め合うように殿下とくっついた。この人がいれば大丈夫。片割れがいれば大丈夫。だからこそ私も、彼らの為に王妃業務がんばろってもんです。

 呪いの儀式規制案とか、お母様が色々やらかしたからこそ私が頑張らねば。外交は王妃の仕事でもあるし、我が国の利点と相手の利点を考えて交流しないと…そう、これからやることは沢山あるのだ!

 やってやるぜ!

 ―――麗しい旦那様と救世主な片割れとずっと一緒に居るって約束したからね!





 その後、お母様は静養の為領地へと送られた。呪いの儀式が出来ないよう情報を規制し、使用人たちがしっかりと監視している。

 過激な儀式の規制の為、私は積極的に呪いに詳しい隣国と交流を重ねた。あちらも科学に興味があるのか、研究者気質の王女と友好的な関係を築けている。友好国として長く付き合っていけるかは、これからの私の大きな課題。

 そうそう、アシュトンは仕事人間になっちゃって結婚を全く考えていない。家庭に夢を見ず、貴族として血を残すこともせず、私に五人くらい産んで一人養子に欲しいって言ってくるほど。


 …いや五人って多くない? 多くない? 旦那様はそんな艶美に微笑まないで欲しい。だって五人ってやばくない?

 前世で大家族が存在していたし今世でも子沢山な家庭はあるから出来ないことはないけれど自分が五人産むって考えると多くない? やばくない? やばくない?

 いつまでも助けてくれるアシュトンのお願いは叶えたいけど五人って四人でもいいよじゃないのよ私まだ一人も産んでないんだから話が早すぎるって言うかじゃあ一人目頑張ろうねってそういう話じゃそういう話だったわね――――!!


 私たちはその後、七人の子供に恵まれた。

 そのうち一人は、アシュトンの養子になってスターレット公爵家を継いだ。


「ありがとう、イザベラ」

「だって約束したからね」


 予想以上に産むことになったけど…アシュトンが本当に嬉しそうだから気にしないわ。


 …でも八人目は考えさせてね旦那様ぁ!!


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