第5話 イーム教最高神ゴルダ
「ゴルダ様、どうか我々をお助けください。どうか、どうか。」
何万人もの子供を食い殺された人類は神にすがった。
最高神としては本来なら弱肉強食の掟には干渉しないのだが、ゴルダは人間界出身の神である。人間に肩入れし過ぎか、とも思ったのだがこれだけ多くの祈りを捧げられては無視もできない。
「少しだけ手を貸してやるか。」
「そこの君、その器を7日間お借りできないだろうか。」
それは身体を壊して物乞いをして生活している老人の欠けた、銭を投げ込んでもらうためのボロボロの茶碗であった。
「ははあ、ゴルダ様、おおせのままに。」
茶碗を差し出すと老人は不思議なことに歩けるようになった。老人は涙を流して平伏する。
「さて。」
最高神ゴルダは人さらいを企てる。
子供をひとり誘拐してこの茶碗に閉じ込めるのである。
この茶碗には上位の貧乏神が取り憑いている、ここに誘拐した子供を閉じ込めればそのスキルにより認識阻害されてどんな神にも探し出すことができないのだ。
ゴルダはこの世の最高神である。
天界。地上界、冥界、どこでも自由に現れ、移動することができる。
何万もの警備がひしめく立派な城の中庭にゆっくりと降り立つ。
そこでは幼い子供が三人無邪気に戯れている。
ゴルダはゆっくりと中庭に降りていく。
ゴルダの周りには暖かい日差しのような陽気が漂い、子供達はあまりの気持ちよさにお昼寝を始めた。
ゴルダが左手を出すと一番小さな子供がふわふわ浮いてゴルダの手のひらに収まる。
いや、正確にはゴルダの手のひらにある粗末な器に吸い込まれるようにその子は霧散した。
その子の気配は三界から完全に消滅してどんな高位の術士でも見つけることはできないだろう。
ゴルダがその器を何界の何処に隠したかは本人しか知らないのである。
この人さらいがこの後、幼い二人が死の瀬戸際においやり。万を超える命が失わられることになるのだがそんなことはゴルダの知ったことではなかった。
気まぐれで古巣の人間たちの願いを叶えることを決めた時点でその程度の命の代償は当然発生するのである。
最高神とはそう言った存在であり決して全員を救済するわけではないのだ。
ただ、「どの辺りに吉凶をあてがう」か、
ただそれのみなのである。
それが「神」というものである。
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