第4話 三田トリオ

 私の名前は徳田アン、中学2年生。


 横にいるのは双子の妹でショウコ。


 そして後ろからこっそりつけてくる怪しいやつは山田大、「大」と書いて「ラージ」と読むんだって。


 「おい。」


 「ここはのどかな田園都市で三人は地元の中学校に通っているの。」


 「オイコラ、ナレーションが口から漏れとるぞ!誰が怪しいストーカーやねん。」


 「ストーカーとまでは言ってない。」


 「お姉ちゃんとラージくん、いつも仲がいいね。」 

 ショウコがケラケラ笑ってる。


 「オレは山田ラージ、名前の通りいずれビッグになる男だ。そして優しいショウコちゃんの夫になる男、ショウコちゃん!オレと付き合ってください。!」

 「ごめんなさい。」

 

 間髪入れずに断ったのはアン。


 「なぜお前が断る!」


 「そりゃアンタのようなチャラ男に可愛い妹は渡せません。」


 山田は確かに軽薄そうな外見で実際に可愛い女の子には誰にでも声をかけているらしい。ただ、頭は良くていつも学年一位、将来は最高裁判所長官になるのが夢とかで本気で頑張っているみたい。


 こんなチャラい裁判官に判決を下されてしまう容疑者には同情を禁じ得ないわ。


 そんなことを考えてクスリとしてしまうアンであった。


 実はこの三人には共通点がある。


 なぜか幼い頃の記憶がないのだ。


 二人は8才の頃、畑でトマトをかじっていたところを警察に保護された。

 自分の名前以外の記憶がなく結局親も判明しなかったためイーム教の寺院が運営する孤児院に引き取られその後地元の名士である徳田家に養女として迎えられたのだ。


 山田大も10才の頃、市立図書館の玄関の軒下で立っているところを保護される。

 同じくイーム教孤児院に保護された後裁判官をしている父に養子として引き取られて今に至っている。

 徳田家と山田家は親同士も親交があったことから三人はまるで兄妹のような付き合いをしていた。


 校門を入ると同級生たちが声をかけてくる。

 「徳田さん、ショウコちゃん、山田くんおはよう。」


 なぜかアンだけは苗字で呼ばれる。

 双子の呼び分けなのかアンが一目置かれているのかはわからないがそうなのだ。


 「相変わらず三田トリオなのね、仲良いわね。」

 同級生の結城アイラちゃんである。

 クラスで「田」のつく生徒がアンたち3人しかいないので「三田トリオ」などと呼ばれるようになった?

 さくらとはいつもお昼ご飯は一緒なの。


 教室に入ろうとした。


 アンが勢いよく教室の引き戸を開けたらレールが外れた!


 ガッシャーン、とすごい音がして大きな引き戸が倒れ、ガラスが割れた。


 「いよっ!破壊神徳田!」


 入学してからアンがあまりにもモノを壊すのでいつのまにかアンのあだ名が「怪力女」とか「邪神」を経て「破壊神」へと進化したのである。

 アンは顔を真っ赤にしてショウコの胸に飛び込み、よしよしされるのであった。

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