第32話
ユリンシスが何もない壁の部分を3回ノックしても何も起こらない。
「中の人が出てくる気配が全くないんですけど?」
肩の上に乗っている俺に目を向け訪ねてくる。
「あれおかしいな上から見た時は確かにここら辺に扉があったんですけど?」
「別の方法で入らなきゃいけないとかですかね?」
(って言ってもここら辺を見渡してみても入れる扉みたいなのは見当たらないんですよね)
ユリンシスの疑問の言葉に答えながら当たりを見回すがやはり中に入るための扉のようなものはない。
「アリユスさん一つ聞きたいんですけど」
(何ですか?)
短く言葉を返す。
「中にいた人たちの人数ってどのぐらいでしたか?」
(おそらく奥の方にもいたと思うんではっきりとは見えてないんですけど少なくとも50人ぐらいはいましたね)
「となるともし入る方法が見つかったとしてもこのまま突撃するのはまずいかもしれません」
珍しくプレミアが真剣な口調で言う。
「おそらくお2人ならあまり手こずらずに全員倒せるとは思うんですけど中に奴隷にされている人たちがいるかもしれません」
(確かにそう考えるとただ単純にユリンシスさんに魔法を放ってもらって終わりにするっていうのはあまり得策じゃないかもしれませんね)
「私ってそんなすぐに魔法を放って終わりにしようとするやばいやつみたいに思われてたんですか2人の中で」
(いやそういうわけじゃないんですけど単純に何も考えずに攻撃をするともし建物の中に本当に奴隷にされている人たちがいた場合下手に攻撃すると大変なことになるかもしれないっていう話です)
「でもそうなってくるとこの建物の中に入る動向以前にこの建物の中にいる人たちが本当に悪い人たちで」
「奴隷としていろんなところから捕まえてきた人たちを売っているんだとしたら、この中にたくさんの連れ去られた人たちがいるってことですよね」
「となると私たちが下手に乗り込んだりしたらその人たちに被害が及ぶ可能性も」
(俺そのことについて1つ提案があるんですけど)
俺は考えている作戦を2人に伝えた。
「それじゃあまずは変装グッズを買ってくるところからですね」
2人は俺の言葉に納得し街の方へ戻る。
(でも変装するにしてもどのような服を着ればいいんでしょうか?)
(そうですねパッと見た時にプレミアちゃんだってわからなければいいんじゃないですか?)
(あの塔の中にいた人たちの中にもしかしたら俺たちが前に街の中で倒したやつもいるかもしれませんし)
(中に入り込もうとしてるのにその前にばれたら元もこうもありません)
(正直言って俺は傍から見たらただのバッタにしか見えないので返送するためのものを買う必要はないが、この2人は別だ)
(前に戦ったやつらが顔を忘れてくれていたらいいがそうじゃなかった場合一発で思い出されるかもしれない)
服屋さんにたどり着いていた。
「いらっしゃいどのような服をお買い求めで?」
「そうですね…」
ユリンシスが困ったような視線を肩の上に乗っている俺に向けてくる。
(こういう時ってどういうコーディネートをお願いしたらいいんですか?)
(え!)
(しまったただ単純に変装してもらうってことしか考えてなかったので具体的に2人にどういう格好をしてもらうとかは全く考えてなかったです)
(それじゃあユリンシスさんこう言ってみてください…)
俺は軽く指示をする。
(分かりました)
「ちょっと変なことを言うかもしれないんですけど…」
「何ですか?」
お店の女の人が短く疑問の言葉を投げかける。
「いつもとは違う自分になりたいというかいつも自分がしている服装とは違う服を着てみたいです」
「分かりました私に任せてください」
女の人は自信満々にそう言って自分の胸をどんっと軽く叩く。
それからあっという間に服を着替え終わり試着室の中から出てきたのはいつもとは全く違う服装をしたユリンシスだ。
ユリンシスが着替えさせられる前に言っていた要望通り派手な明るい格好ではなく少し地味目の大人っぽい格好に仕上がっている。
上のトップスはシアー素材の黒、スカートは黒色のレザー素材。
全体的に大人っぽい雰囲気でまとまっている。
次にプレミアが着替え全体的に白の服装でまとまっていてユリンシスとは少し違い大人っぽい服装ではなく幼さが残る服装に仕上がっている。
「ありがとうございますそれではこの服を一式買わせていただきます」
ユリンシスがお礼を言ってお金を払おうとしたその時。
女の人が俺の方に目を向け綺麗な花の模様が描かれた小さい布を頭にかぶせてくれる。
「せっかくですからお2人だけではなく一緒におしゃれをしないとね」
「ありがとうございます」
さっきと同じように頭を下げる。
俺たちはお店から出てさっきの塔へと向かった。
「変装するための服を変えたのはいいですけど」
「あの塔の中に入る方法が見つからない以上中に入れないんじゃないですか?」
プレミアがごもっともな疑問を口にする。
(そうなんですよね入る方法がわからない以上特に何もできないんです)
そんな言葉を口にしながら塔の周りをぐるぐると回り入れる場所がないか探しているとちょうど後ろの入り口のような場所から誰かが入っていくのが見えた。
(どうやらあそこから入れるみたいですね)
(怪しまれないように足音を殺していきましょう)
(最初はさっき伝えた作戦通りに振る舞ってください)
「分かりました!」
「分かりました!」
「いきなり申し訳ないのですがこの中を取材させていただきたいのですがよろしいでしょうか?」
「なんなんだお前!」
ユリンシスが尋ねるとガタイのいい男たちが顔を向ける。
1人のガタイのいいリーダー的な男が近づいてくる。
訝しげな表情でその男はプレミアに顔を近づける。
「よく見たらお前商品番号649番じゃねえか!」
「あの大道芸人の男に売り飛ばしたはずだがまた売り飛ばされたのか?」
(お前がプレミアちゃんをもののように扱ったのか!)
気がついた時にはもうそいつの顎に攻撃を食らわしていた。
「なんなんだこのバッタいきなり!」
「そうですかあなたがプレミアちゃんを奴隷として扱っていた張本人なんですね」
「奴隷を奴隷として扱って何が悪い!」
「こいつはあの時はただの商品だった!」
「むしろお前を売った俺に感謝をしてほしいぐらいだ」
「それ以上は喋らないでください不快です!」
ユリンシスは今まで俺が見たことがないほどの激しい怒りを含みながらもどこか冷徹な口調で言う。
「そうかまあいいお前ら全員やっちまえ!」
その相手の仲間たちは全員後ろに置かれている別々の武器を構える。
マシンガンを手に持った1人の仲間が特に何も考えていない様子でそのマシンガンを乱れ打ちする。
(随分と物騒なものを手に持ってるな)
50対3という圧倒的に不利な状況だったにも関わらず俺たちは特にてこずることもなくあっという間にそいつらを倒した。
「何なんだお前ら化け物かよ!」
自分の周りに転がっている仲間を見て震え上がる。
「そうだ649番俺と一緒に手を組まないか?」
「もちろん昔みたいにひどい扱いはもうしない純粋な仲間として来て欲しいんだ!」
「あなたの仲間なんかには絶対になりません!」
プレミアが強い怒りを含んだ言葉を返す。
「それに私はもう649番じゃない!」
「プレミアです!」
そんなこと言わず」
「お…」
(それ以上は何も喋るなお前の負けだ!)
俺はすかさずその男のみぞおちに攻撃を叩き込み気絶させる。
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