第26話
(それじゃああの男が言っていた敵の本拠地に向かいましょうか)
「ええ」
「はい」
2人が俺の言葉に頷く。
男から聞き出した情報を頼りに目的の場所へ向かう。
「確かあの男の人の説明によるとここら辺ですよね」
プレミアが辺りを見回しながらそう言葉を口にする。
「ここから地下に行く方法ってあるんでしょうか?」
ユリンシスが若干の不安を含んだような口調で言う。
(大丈夫ですよ探してれば何かが見つかるかもしれません)
そんな励ましになっているようでなっていない言葉をかける。
それからしばらく辺りを見回し地下室に繋がってそうな場所はないかと探しながら歩いて行くと。
とても大きな建物が目の前に見えてきた。
「何なんでしょうかこの建物は!」
プレミアはその建物を見上げ驚く。
「形だけ見ると何かの塔みたいですけど」
「何かに使われていた建物なんでしょうか?」
ユリンシスは同じように建物を見上げながら考えを巡らす。
「この建物の地下に入り込むにしても中の様子がわからないと危険ですね」
「確かにそうですね」
「お姉様の魔法でこの建物を壊して中で待機している人たちと戦うとか?」
(そんなことしたらこの建物全体が倒れてきて大変なことになります)
(プレミアちゃんてこんなパワータイプの考え方してたっけ)
「ごめんなさい他にいいものが思いつかなくて」
俺がどうしようかと頭を悩ませ特に何の理由もなく空を見上げていると鷹が飛んでいるのが見えた。
(あれを使えば)
(ユリンシスさん俺の魂が抜けたバッタの抜け殻預かっててもらっていいですか?)
「え…あ…はい」
よく分かっていない様子だったが飛んで過ぎ去られては困るので急いで今の体から魂を切り離し空を飛んでいる鷹の肉体に乗り移る。
目を開けてみるといつも通り目の前には不気味な光景が広がっていてさっき空を飛んでいた鷹が俺のことを睨みつけている。
「どうやらうまく入り込めたみたいだな」
俺はゆっくりと背中に背負っている剣を抜く。
緊張感を含んだ沈黙がこの空間を包む。
次の瞬間ものすごい勢いでかかってくる。
その攻撃を紙一重で避ける。
「さすがに知能が高い生物だけあってそれなりに強いな」
距離を取り様子を伺う。
相手も俺の様子を伺っているようで動きを止めると同じように動きを止める。
さっきまで感じていた緊張感とは別の緊張がこの空間を包む。
この緊張感の中先に動いたのは鷹の方だ。
さっきの倍くらいのスピードで周りを飛び回り俺に対する攻撃の隙を伺っているようだ。
鋭い視線を向けられ攻撃が来ると思いガードしようとしたが間に合わず右肩を思いっきり爪で引っ掻かれてしまう。
「さすがに一筋縄じゃいかないみたいだな」
さっきとは反対の左肩を攻撃しようとしてくるがすかさずその攻撃を剣でガードする。
「でも慣れてくれば対応できない速さじゃない」
問題なのはどうやってダメージを与えていくかっていう話だけどこのスピードに対応しながらすぐに攻撃を繰り出さなきゃいけないってことを考えると何がいい。
攻撃を避けつつしばらく考える。
痛み分けになりそうな気がするけど的確に攻撃を食らわせるには一番いい方法。
俺に攻撃を食らわせようとしてきたその時すかさず鷹の目を剣で貫く。
瞬間叫び声をあげる。
「完全に仕留めたと思ったけどギリギリかわされたか」
右目から少量の血が出ている。
「次で仕留める!」
剣を構え直し切っ先を向ける。
「この技久しぶりに使うな」
俺は鷹に向かって剣を振り下ろす。
すると俺に向かって攻撃をしてこようとしていた鷹はその斬撃で体が跡形もなく引き裂かれる。
目を覚ますとしっかりと体に乗り移れていた。
(2人とも俺が上から中の様子を確認してきますから問題がなかったら合図をするので乗り込みましょう)
「分かりました!」
「そういえばさっき預かったこのバッタの体はどうすればいいんでしょうか?」
(ちょっとやかもしれないんですけどそれわ一応持っといてください)
(もしかしたらこの中にいる人たちと戦いになった時そっちの体の方が有利な場合もあるかもしれないので)
俺はその建物の一番上まで飛びガラス越しに中の様子を確認してみる。
確かにあの男が言っていた通りこの建物が本拠地らしくたくさんの同じような格好をした奴らがいる。
(確認してきました)
「どうでしたか?」
ユリンシスが短く尋ねてくる。
(あの男が言っていた通りここの建物が 本拠地と見て間違いなさそうです)
(今乗り込んでも特に問題はなさそうなんですけど仲間がたくさんいるので気をつけてください)
「私たちの場合中に入るための入り口を先に探さなきゃいけないんですよね」
「プレミアちゃんの言う通り建物の中に入るための入り口を探すのが先です」
しばらく入り口を探し歩いているとプレミアが何かにつまずいたようで転んでしまう。
「大丈夫ですかプレミアちゃん」
(何なんですかねこれ?)
プレミアがつまずいた部分に目を向けてみると何かの一部分らしきものがあった
ユリンシスが周りについている砂をどけ確認してみる。
すると大きな扉が現れた。
その大きく重たそうな扉を俺が開けてみると下に続く階段が現れる。
「これが地下室へと繋がっているんでしょうか?」
(分かりませんけどとりあえず行ってみましょう)
俺たち3人は薄暗い階段を進む。
階段を降りたところで中にいるやつに気づかれたのか物音が聞こえてくる。
扉が開けられた瞬間俺たちはそれぞれの武器を構える。
「何なんだお前ら!」
とりあえず目の前にいる敵を倒していく。
「お前たち一体何なんだここに何しに来た!」
ユリンシスは敵の怒りを含んだ口調など全く気にせずこう尋ねる。
「なんであなたたちは街の人たちを困らせるようなことをするんですか?」
「お前らもしかして昨日街に向かったやつらを倒したっていうやつらか!」
「なんでお前らにそんなことを教えなきゃなんないんだ!」
「やはりただじゃ教えてくれませんか」
ひとつため息を漏らす。
「お前ら構わねえこいつら全員やっちまえ!」
その周りにいる敵を3人で協力し5分もかからず全て倒すことができた。
最後に残ったリーダー的な男にお前たちは何をしようとしているとユリンシスに俺の心の声を聞ける状態にしてもらった上で尋ねる。
「俺たちはただ上のやつらの指示でお金がもらえるって言うから引き受けただけだ」
(その上のやつらっていうのはどこにいるんですか!)
「知らねぇよ俺たちだって実際にあったことは一度もない」
「支持される時はいつも仲介人として間に誰か入ってたからな」
(どうやらだいぶ慎重に動いている組織のようですね)
「そうなってくると少し厄介ですね」
ユリンシスがため息を漏らす。
「とりあえずあなたたちは全員騎士団に引き渡すとして」
「そんな簡単に捕まってたまるかよ」
(そうですかこの状態から逃げられると思ってるんだったらどうぞ逃げてください)
(ユリンシスさんの魔法であなたの体が後方もなく消え去ると思いますけど)
俺が少し芝居がかった口調で言うと顔を青くし体を震わせる。
俺たちは全員の身柄を騎士団に引き渡しギルドの方へ戻る。
「今回の件でわかったのは私たちが今き止めようとしている組織が思っていたよりも大きな組織かもしれないってことぐらいですかね」
「アリユスさんお姉様もうこれ以上私のために突き止めようとしなくて大丈夫です」
「それは違います!」
「え?」
(ええ、別にプレミアちゃんのためだけに組織を突き止めようとしてるわけじゃありませんよ)
(少なからず他にも困ってる人がいます)
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