第25話

古びた建物の中から黒ずくめの男2人が出てきた。


俺たちはとっさに岩陰に隠れる。


「明日の計画を実行するための準備はもうできてるんだろうな?」


「それはもうぬかりなく今はもう最終段階に入ってる」


「何人かはここに残ってもらうことにはなるがきっとなんとかなる」


「待ち合わせ場所はあの街の中にある大きな噴水でいいんだよな?」


「ああ、全員がそこに集まったところで作戦会しだ」


「これで金を奪うことができれば全員で山分けしてもすごい額になるぞ」


「お前途中で全部自分のものにするんじゃねえぞ」


「そんなことをする必要ない今言っただろう全員で山分けしたとしてもかなりの取り分になる」


「それもそうだな」


「ははは!」


(アリユスさんこれって!)


(ええ、おそらくあの人たちはあの街にあるお金を盗むために計画を立てていると考えて間違いないでしょう)


(だったら早くどうにかしないと)


言ってプレミアが岩陰から飛び出そうとする。


(今飛び出して言っちゃダメです)


俺が止める。


(でも!)


(明日計画を実行するっていうことがわかってるんだったらわざわざここで戦わなくてもさっき話に出てた噴水の前で待ち伏せしていれば必ず現れます)


(あの男が言っていたことが本当だとすればそっちの方が確実です)


俺たちは気配と足音を殺しその場を去る


「さて今日はどこの宿に泊まります?」


ユリンシスが尋ねてくる。


(いつも通りやすい宿でいいです)


「私も同じで安いところでいいです」


「2人とも意外と謙虚なんですね」


「分かりましたそれじゃいつも通りの値段の宿を探していきましょうか」


それからしばらく歩いているといつも通りの安い値段の宿を見つけることができた。



「こことかどうでしょうかお姉様」


「値段も安いですしここにしましょうか」



「すいません2人で泊まりたいんですけど部屋って空いてますかね?」


「空いてますよどんな部屋にしましょうか?」


「それじゃあ2人部屋で一番安い金額の部屋で」


ユリンシスがそう伝える。


「それでしたらこの廊下をまっすぐ行ってもらって角を右に曲がった304号室という部屋になります」


「これがその部屋の鍵になります」



ユリンシスは鍵を受け取りありがとうございますと言って部屋に向かう。


(思ってたより部屋広いですね)


「今日は明日に備えてご飯食べたら寝ましょうか」


ユリンシスは言いながらベッドの上にダイブする。


「男の人たちの悪ふざけでああいうことを言っていたという可能性はないんでしょうか?」


(であって欲しいところではありますけどあの口ぶりから察するにそういうことはないと思います)


「まあそうですよね」


ため息をつきながら言葉を口にする。


その日は部屋に届けられた夜ご飯を食べた後眠りについた。


次の日。



「おはようございます…」


相変わらずの少し寝ぼけた口調でプレミアが挨拶をしてくる。


俺も同じように言葉を返し朝ご飯を食べもうあの男たちが待ち合わせ場所に集合していては困るので受付の人にお礼を言った後すぐに待ち合わせ場所に向かう。


「はぁはぁところでこの街の中にある噴水ってどこのことを言ってるんですかね」


プレミアが走って上がった息を整えながら尋ねてくる。


その言葉には何も答えず俺はあたりを見回す。


すると少し遠くの真ん中のところに大きな噴水があるのを見つけた。


(待っていればあの男の人たちがやってくるんですよね)


(ええをそらく)


プレミアの言葉に俺は短く返す。


俺たち3人は誰かを待っているような自然な感じでそこにしばらく立っていると予想通り、仲間をぞろぞろと引き連れた黒ずくめの男たちがやってきた。


「俺たちはこの村を乗っ取りに来た!」


一番先頭に立っている黒ずくめの男が鞘から剣を抜き剣先を上に向ける。


「そんなことはさせませんよ!」


ユリンシスが戦闘を歩きその男に近づく。


「何!」


「何なんだお前は!」


言って男は剣先をユリンシスに向ける。


「あなたたちの計画を止めるものです!」


「何言ってんだ女」


「お前らこいつらをとっととやっちまえ!」


男が総支持をすると仲間がゾロゾロと前に出てくる。


仲間が剣を振り下ろそうとした瞬間俺は前に出てその剣を受け止める。


(アリユスさん!)


(2人は少し後ろに下がっててください!)


(こんな人たち私の魔法で!)



(ユリンシスさんの攻撃魔法じゃ威力が強すぎてこの街にいる人たちも巻き込みかねません)


(だからって黙って見ているわけには!)


「なんだこの虫!」


その黒ずくめの男たちの攻撃を避けながら的確に1人1人倒していく。


しばらくすると街にいるじゃじゃ馬たちが集まってくる。

 

「ここにいると危険です離れてください!」 


ユリンシスが怖いもの見たさで集まってきている人たちに声をかける。


(後残り3人か)


「何なんだよこのバッタ化け物か!」


真ん中に足を震わせながら立っているリーダー的な男が怯えながら俺に向かって剣を振り下ろしてくる。


(遅い!)


すかさず後ろに回り込み男がこっちの方に顔を向けたと同時に顔面を殴る。


残りの2人もその光景に目を奪われている間に瞬殺!


周りでその光景を見ていた人たちは大拍手。


なんでバッタがこんなことをできるんだと驚きの声も上がっている。


(ユリンシスさんこの男がしばらくして目覚めたら俺の心の声が聞こえるようにして欲しいんです)


(分かりました)


俺が顔面を殴って倒した男はしばらくすると目を覚ます。


(目が覚めましたか)


「何なんだこの声は!」


ついさっきまでこの村のお金を強奪しようとしていた男とは思えないほど震えている。


(1つ俺の質問に答えてください、あなたたちは何でこの街のお金を盗もうとしたんですか?)


「そんなの知るか俺たちはただ上の人間にやれと言われてやっただけだ!」


「奪った街のお金は全てやるからいい手頃な女を連れて来いって言われたんだ」


(なんで女の人を?)


「だから俺たちはただ指示されてやってただけだ」


「ただ一つ言えることがあるとすれば奴隷として売ろうとしてるとかなんとか言ってた」


(奴隷として売ろうとしてる!)


「そうだそれ以外のことは俺たちは何も知らねえんだよ」


俺たちはお互いに目配せをする。


プレミアを奴隷として売ろうとしていた組織と何か関係があるかと思い尋ねてみる。


(その組織の本部はどこにある!)


「そんなことを答えるわけがないだろう!」


(答えろ!)



鋭く睨みつける。


「私たちは全部知っていますあなたたちがこの噴水の前で待ち合わせをしお金を奪おうとしていたことも」


「お金を奪うためにこの剣で騒動を起こそうとしていたことも全て」


「なので全て吐いてしまった方が楽になれると思いますよ」



ユリンシスが静かな怒りを含んだ口調で言う。


「分かったよ全て話すよ」


「組織の本部はここから少し離れた場所の人目につかない地下にある」


「それは本当ですか?」


「本当だよこんな状況で嘘ついたってどうにもならないだろう」 


「わかりましたとりあえずあなたたちの言葉を信じましょう」


「ってことは俺たちを開放してくれるのか」 

 

「ええ」


その男たちの身柄はこの街の騎士団に引き渡した。


「ご協力感謝いたします!」


騎士団の男の人に頭を下げられる。


「この集団は最近強盗や業務妨害暴力など様々な罪で逮捕状が出されていた集団だったので本当に助かりました」


騎士団の男の人たちは何人かの黒ずくめの男を歩かせながらその場を去っていく。

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