第24話
「どのクエストがいいんですかねお姉様」
「そうですね下手に難易度の高いクエストを受けるわけにはいきませんし」
3人でクエストボードに貼られているクエスト内容を見ながらどうしようか考えていると俺は視線を感じ顔を向ける。
受付の人が俺たちを手招きしている。
(俺たちのことを呼んでるみたいですけど)
真剣にクエストを見て頭を悩ませている2人に声をかける。
「何なんでしょうか?」
「とりあえず呼んでるみたいですし行ってみましょうか」
ユリンシスがカウンターの方に向かう。
「何か私たちに用事ですか?」
「お2人に頼みたい依頼があるんですけど」
ギルドにいる他の冒険者には聞かれたくないのか声を潜め耳打ちするように言ってくる。
「とある人に届けて欲しい荷物があって」
「別にそれは構いませんけど何でそんなに声を潜めているんですか?」
ユリンシスが尋ねるとあからさまに視線をそらす。
「えーとそのそれはその…」
これ以上聞こうとしても意味はないと判断したのかユリンシスは分かりましたその依頼を受けましょうとだけ言った。
これ以上追求してこないことに驚いているようではあったが、ありがとうございますと言って地図を渡してくる。
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
(なんかちょっと違和感があるな)
「違和感って何ですか?」
横にいるプレミアが訪ねてくる。
(前にも似たような感じで荷物を届けてほしいって受付の人からお願いされたことがあったんですけど、前はあんな感じじゃなかったなと思って)
「あんな感じっていうのは?」
(何かを隠したような感じでお願いしてくることはなかったんですけど)
「確かに少し挙動不審というかめが泳いでましたもんね」
「考えられる可能性があるとすれば私たちに対して何か隠し事をしているかそれともその荷物に何か関係することなのか」
(おそらく俺たちの命に関わるような危険物は入ってないと思うんですけどね)
「とりあえずこの地図に書かれている印のところまで行ってみましょう」
「お姉様ところで今歩いているところはどこなんでしょうか?」
手に持っている地図を開き確認する。
「ギルドから出発してちょうど目的地までの真ん中のあたりです」
「とりあえず早く行ってその荷物を届けましょう」
時々地図を確認しながら目的地へ向かう。
「ここがその地図に書かれてる目的地ってことでいいんですよねお姉様?」
再び確認する口調で尋ねる。
「ええここが目的地です」
「でもそうなるとこの村にいる誰にその荷物を渡せばいいんでしょうか?」
(その地図のどこかに誰に渡すとか書いてないんですか?)
地図が書かれている表の部分を確認した後裏を確認する。
「書いてありました」
(なんて?)
私たちが今入ってきた場所から見て3番目の家の人がこの荷物を待っているそうです。
「私たちのところから見て3番目ってことはあの青い家でしょうか?」
プレミアはその家を指さしながら俺たちに確認の言葉を投げかけてくる。
「とにかく尋ねてみましょうか」
ユリンシスが家の扉をノックする。
「はーいどちら様でしょうか?」
中から1人の男の人が出てくる。
「私たちギルドの人に言われてこれを届けに来たのですが?」
「ありがとうございます、いつも届けてくれる人がお休みになっちゃったみたいで日にちを変更してもらおうかと思ったんですけどよかったです」
(もしかしたら前に荷物を届けた人とじ人が荷物を届けててまた何らかの理由で届けられなくなったのか)
「あの無事に荷物も届け終わりましたし少しこの街を見て回りませんか?」
プレミアがどこか不安を含んだような口調で言う。
「いいですね最近は冒険者のランクを上げるために立て続けにクエストをこなしてましたからたまにはこういうのも」
特に何の目的もなくブラブラと街の中を歩いていると、街の中の細道に黒い服を着た2人の男が入っていくのが見えた。
「アリユスさんどうかしたんですか?」
(今あそこに入って行った 男の人たちから一瞬だけ何か嫌な気配を感じたんですけどきっと俺の思い過ごしですね)
(あそこの道がどういう場所に繋がっているのかはわからないが、男2人があそこを通っただけで疑うのはいくらなんでも思い込みが激しすぎるか)
冗談ぽい口調で言いながらユリンシスの言葉に答える。
「別に何ともないんだったらいいんですけど」
それからしばらく足を進めていくとユリンシスが色々な食材が並べられているお店で立ち止る。
「色々な食材が売ってますね!」
嬉しそうに並べられている食材を見る。
(ユリンシスさんって料理とかするんですか?)
(冒険者の仕事をするまでは自分で色々と作ってました)
(冒険者の仕事をするようになってからは宿に泊まることが多くなったので一切しなくなりましたけど)
(確かに宿に泊まってると宿のご飯が自動的に出てきますからね)
「お姉様に作ってもらったご飯いつか食べてみたいです」
(俺も食べてみたいですって言いたいところなんですけど今の俺の体で食べれるのって昆虫食ぐらいなんですよね)
(それじゃあ人間じゃなくても食べられるご飯を作れるかどうか考えておきますね)
(お願いします)
そんな話をしていると隣で並べられている食材を見ながらおばあちゃんがため息をつく。
「どうかされたんですか?」
ユリンシスが優しい口調で尋ねる。
「ええ、特にどうってわけじゃないんだけど最近ここの辺り物騒だから大丈夫かなって思って」
「最近物騒っていうのは?」
疑問に思ったプレミアが訪ねる。
「私もはっきりと何をしてる集団なのかわかんないんだけど最近黒い服を着た集団が悪質なことをやっているって言う噂が広まってて」
(黒い服を着た集団…)
その言葉を聞いてさっき黒い服を着た男2人が細い道に入って行った光景がフラッシュバックする。
(どうかしたんですかアリユスさん?)
(その集団が具体的にどんなことをしていたのか少し気になって)
「その黒い服を着ていた人たちは他にはどんなことをしていたんでしょうか?」
「私が聞いた話だとお店の人にいちゃもんつけてお金を何としてでも払わなかったり」
ただのチンピラかと安堵しているとおばあちゃんがつぶやくようにこう言葉を漏らした。
「後は単なる噂話だとは思うんだけど村に住んでる子供たちが日に日に行方不明になってるっていう噂が今広まってて」
俺はその言葉を聞いてなんだか胸騒ぎがした。
もしかしたらその姿を消している子供達が奴隷として売り飛ばされるんじゃないかという考えが頭の中をぐるぐると回る。
(もし子供を奴隷として売り飛ばすためじゃなかったとしても許せない!)
俺は急いでさっき通りかかった細道に向かう。
後ろから2人が追いかけてくる。
「ちょっと待ってくださいアリユスさん!」
ユリンシスの言葉には何も答えずまっすぐ飛び続ける。
「一体何がどうしたって言うんですか?」
(俺のこの嫌な予感が当たってるとしたら放っておくとかなりやばいことになる!)
「何なんですかその嫌な予感って」
(プレミアちゃんのことを奴隷として売り飛ばそうとしていたやつと何か関係があるかもしれません!)
「私を奴隷として売ろうとしていた人と関係があるかもしれないってどういうことですか!」
とは言ってもただの俺の考えすぎかもしれないと思うと、なかなかどう説明していいのかわからない。
飛び続けているともうほとんど廃墟と化しているボロボロの建物が見えてきた。
「何なんですかここは?」
プレミアが訪ねてくる。
(静かに!)
俺たちは気配を殺し様子を見る。
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