第23話
重たそうな扉を開け中に入ってみると中にはとても大きく頑丈そうな鎧を身にまとった人型のモンスターがいた。
右手には細く長い剣を持っている。
俺たちの存在に気づいたようでゆっくりとこっちに視線を向ける。
(2人ともいつどこから攻撃が飛んでくるかわからないので気をつけてください!)
「分かってます!」
「分かってます!」
2人は俺の言葉に強く頷きそれぞれの杖を構える。
お互いにどう攻撃するか探りを入れる。
何とも言えない緊張を含んだ沈黙の空気が流れる。
次の瞬間同時に駆け俺とモンスターの剣がぶつかり合う。
お互いに攻撃をぶつけ合い一瞬火花が舞う。
このまま力比べをしていても埒が明かないと思った俺は一度距離を取る。
「大丈夫ですかアリユスさん!」
ユリンシスが心配そうな表情で駆け寄ってくる。
(ええ、大丈夫ですよ)
短く言葉を返し攻撃の隙を伺う。
(とりあえず真っ向勝負でどういう動きをするのか確かめていくしかないか)
「そんな無茶ですよいくらアリユスさんが強いからって言っても真っ向から勝負を祈んだらただじゃすみませんよ!」
ユリンシスの言葉は無視して1歩前に出る。
頭につけた鎧越しに俺のことを鋭く睨みつけてくる。
ピリピリとした睨み合いの中俺は距離を詰めていく。
わずか数秒の間を開け俺に向かって剣を振り下ろしてくる。
剣の攻撃は自分に当たる直前で避けた。
(よし今なら!)
一瞬の判断でモンスターの後ろに回り込み拳を振り下ろそうとしたがすぐに反応されてしまい、後ろに顔を向けられ剣で拳をガードされる。
(やっぱりダンジョンの最後の敵って言うだけあって途中で戦ってきたモンスターみたいに簡単に鎧は壊れないか)
攻撃を避けながらどうしたものかと考えていると。
「アリユスさん私たちもいるって事を忘れないでください」
(ユリンシスさんプレミアちゃん)
「お姉様の魔法であのモンスターになんとか攻撃を与えられませんか?」
(いやいくらユリンシスさんが高火力の魔法を打てたとしてもあのモンスターにはおそらく通用しません)
(すかさずガードをされて威力が半減して大したダメージを与えられないと思います)
(とりあえず様子を見つつそれぞれに分かれて攻撃を仕掛けてみましょう)
「はい!」
「はい!」
それから距離を取りつつそれぞれの攻撃を叩き込むがいくらかダメージを与えられているようだが決定だになるようなダメージを叩き込めていない。
「ダメージを与えられてるような感覚はないですね」
プレミアが不安を含んだ口調で言う。
「何か弱点のようなものがあれば対策の立てようがあるんですけど」
ユリンシスが困惑の感情を含んで言う。
俺はモンスターとの距離を取りつつ弱点のようなものがないか探す。
モンスターの首のあたりに何やら小さい赤い石のようなものを見つけた。
(あそこがもしかして弱点なのか!)
(ユリンシスさん魔法でしばらくの間モンスターの気を引きつけてくださいその間に俺はあそこに攻撃を叩き込みます)
「いくつか回復薬を持って行ってください」
(回復薬は2人で使ってください)
「でも…」
(とにかく2人でモンスターの木を引き付けてください)
距離を詰めると俺を警戒しているのかすぐに目を向けてくる。
右手に持っている剣を俺に向かって振り下ろしてくる。
俺が剣を避けた瞬間左の方からユリンシスが攻撃を打ち込む。
(ユリンシスさんの方に視線が集中してる今なら!)
俺はちょうど首の位置が少し下がったところで殴りつけてみたが全く壊れる気配がない。
すると次の瞬間!
「うあああーーー!」
とても大きな叫び声をあげる。
(何なんだこの声は一体!)
「弱点に攻撃されたことに怒っているんでしょうか?」
「脳に響く!」
「大丈夫ですかお姉様!」
モンスターがいきなり地面に片手をつくと地面が白い光を放つ。
その光が放たれている場所から今目の前にいるモンスターを3頭身くらいにしたような小さなモンスターが大量に現れる。
「何なんですかこの軍団は!」
プレミアは驚きと困惑が混じった言葉を漏らす。
すると小さな見た目をしたモンスターの軍団が一斉に俺たちに攻撃をしようとしてくる。
ユリンシスは高火力の魔法で周りにいるたくさんの小さいモンスターを次から次へと灰にしていく。
(あのモンスターの強さはある程度は引き継いでいるのか地味に強いな)
と思いながらも周りにいる敵を的確に倒していく。
「はぁはぁ!」
(ユリンシスさん大丈夫ですか!)
「ええ大丈夫です少しふらついてしまっただけですから」
耐性を立て直す。
かなりの威力の魔法を続けて打っていたからな体力が奪われていくのも無理はない。
最初の時よりかなり小さいモンスターの数が減ったとはいえまだ少し数はある。
モンスターが振り下ろした剣をユリンシスは避けることができず攻撃を食らってしまう!
(ユリンシスさん!)
「お姉様!」
俺たち2人はすぐに駆ける。
(回復役を!)
「いいえ私の魔法で回復させた方が早いです!」
言って胸の辺りに手をかざす。
「ヒール」
かざしている手から暖かい光が放たれさっき剣で切られた部分の傷が治っていく。
「あのモンスターを早く倒さないと消耗戦になっちゃう!」
プレミアが珍しく真剣な表情で言う。
(あの大きい方のモンスターは俺に任せてくれませんか?)
「でも!」
(その代わりまだ周りに残っている小さい方のモンスターをユリンシスさんと2人で倒してください)
「分かりました」
言葉に答えるように立ち上がる。
「一緒に戦いましょうプレミアちゃん!」
「はいお姉様!」
(さて型をつけようか!)
俺は真ん中で構えているモンスターを鋭く睨みつける。
お互いに再び距離を詰め俺に剣を振り下ろしてくる。
(こんな剣わざわざ避けるまでもない)
剣を破壊すると同時にモンスターにアッパーカットを食らわせる。
身にまとっていた鎧の一部分を破壊する。
容赦なく次から次へと攻撃を畳みかける。
(これで終わりだ!)
最後の一撃を叩き込むと身にまとっていた全ての鎧が破壊され膝から崩れ落ちるように倒れる。
それから俺たちは素材の剥ぎ取りをしギルドの方に戻る。
「おかえりなさいお2人とも無事に戻ってきたようで良かったです」
「やっぱりCランクのクエストと比べるとそう簡単にはいきませんでしたけどなんとか倒せて良かったです」
ユリンシスが安堵のため息を漏らしダンジョン探索で手に入れたモンスターの素材を見せる。
「肺確認いたしましたそれではこれが報酬になります」
行ってカウンターの上に置く。
「念のため中身を確認していただいてよろしいでしょうか」
言われた通り中身を確認してみるとクエストに報酬金額は書かれていたが改めて袋に入った金貨を目の前にすると無事にクエストをクリアできてよかったという達成感と高揚感が込み上げてくる。
俺たちはその報酬を受け取った後すぐギルドを出た。
「これで少しはお金に余裕が出てきましたね」
「でもプレミアちゃんあまり大丈夫だと思って使っていると痛い目を見ますよ」
「それもそうですね」
(でも今まで頑張ってきた自分に何かご褒美を買うぐらいだったらいいんじゃないですか)
「自分にご褒美ですか私はお姉さまにこの杖を買ってもらったのでしばらくは何もいらないです」
(まあ無理して買うものじゃないですし、何か欲しいものとかができた時に買えばいいんじゃないですか)
「アリユスさんは何か欲しいものとかあるんですか?」
ユリンシスが何気ない口調で尋ねてくる。
(俺は特にないですね)
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