第22話
「どうかしたんですか?」
横にいるプレミアが俺の口調から何かを察してくれたのか少しばかり緊張を含んだ口調で訪ねてくる。
(モンスターが近づいてきてる!)
俺が言うと後ろにいる2人が同時に杖を構える。
何体かの足音のようなものが聞こえてくる。
目の前に現れたモンスターは人型で前に戦ったモンスターと同じように鎧を身にまとっているが体格はだいぶ細身の方だ。
(どんな攻撃をしてくるか分かりません2人とも十分警戒してください!)
(はいわかってます!)
プレミアがはっきりとした口調で返事を返し様子を伺う。
目の前にいるモンスターはこうして会話をしている間にもどんどん増えていき最終的にはかなりの数で俺たちを囲んでいる。
「どうやら私たちを逃がしてくれるつもりはないみたいですね!」
ユリンシスが後ろにいるモンスターの方に顔を向け杖を向ける。
次の瞬間モンスターが一斉に襲いかかってくる。
俺はモンスターが振り下ろしてきた剣を余裕の表情で受け止める。
(前に戦った鎧を身にまとったモンスターよりもスピードはあるけど攻撃力はそこまでないな)
一定の距離を保ちつつさらにモンスターの攻撃を分析する。
(スピードの方も慌てず対処すれば特に問題はなさそうだ)
俺が動きを止めたその瞬間にすかさず剣を振り下ろしてくるがその件を両手で挟むようにして受け止める。
剣にありったけの力を込め無理やり曲げる。
「このモンスター強さ的にはそうでもないですけど数が多くて少々厄介ですね」
(ユリンシスさんの炎の魔法かなんかで一気に倒したりはできないですか?)
「さっきからずっとそれをやろうとはしているんですが攻撃を警戒されているのかなかなか魔法を打たせてもらえなくて」
(どうにか俺が魔法を使える状況に持っていけばこの周りにいるモンスターたちを魔法で一掃できるって事ですか?)
「さすがに数が多いので一発で全て倒すというのは無理ですがかなりの数を倒せると思います」
(そういうことなら!)
(プレミアちゃん俺と一緒にユリンシスさんが攻撃するまでの時間を稼ぎましょう)
「分かりました!」
「つまりお姉様が攻撃の準備をしている間守れればいいってことですよね」
確認するように行ってくる。
(そういうことです)
俺とプレミアがユリンシスの前に立つ。
次にモンスターが手に持っている武器を振り下ろそうとした瞬間。
プレミアが得意な木属性の魔法で地面から木を生やしそれをうまく利用し枝でシールドを作る。
(プレミアちゃん魔法でそんなこともできるんですか!)
「今とっさの判断でやっちゃって成功するかどうかわかんなかったんですけど
「勝手にやっちゃってすいませんでした!」
(むしろおかげで助かりましたよ)
(プレミアちゃんが防御魔法が使えるって事も分かりましたしこれから色々戦い方の幅が広がりますね)
「攻撃の準備が終わったので防御魔法を解除してください!」
「はい分かりました!」
防御魔法を解除した瞬間ユリンシスが構えた杖から炎で作られた光線が飛び出す。
攻撃を放った瞬間目の前にいるモンスターは一瞬で消し炭になりあまりの攻撃力で地面がえぐられている。
「これで半分以上のモンスターを倒すことができましたねお姉様!」
プレミアは尊敬の目をユリンシスに向ける。
(でも後ほんのちょっと残ってるみたいですね)
言って俺は後ろの方に顔を向ける。
(さっさと片付けちゃいましょうか)
「ええ」
「はい」
実際後ほんの少しだけ残っていたモンスターは数分かからず全て倒すことができた。
「はぁはぁ…これで…なんとか片付け終わりましたね」
(ありがとうございますユリンシスさんプレミアちゃんも)
「アリユスさんもありがとうございますモンスターを1箇所に誘導してくれて」
「おかげで私とプレミアちゃんで楽に倒すことができました」
(さてそれじゃあいつも通りモンスターの素材の剥ぎ取りが終わったら進みましょうか)
俺たちはモンスターの素材の剥ぎ取りを終えた後再びダンジョンの中を慎重に進む。
(2人ともかなり疲れていると思うんでどこかモンスターがいない場所で一度休みませんか?)
「いいえ私は疲れていないのでこのまま進んでしまって大丈夫です」
「私もお姉様と一緒で疲れていないので大丈夫です」
(2人ともさっきの戦いでだいぶ疲れていると思いますし、どこかモンスターがいないところを探して休みましょう)
(ここから先も戦いは続くと思います、そのためにも体力を温存しといた方がいいです)
そう言って俺はモンスターが現れない安全な場所を探し半強制的に2人を休ませる。
(ここならモンスターも現れなさそうですし少しの間だけでも休めるんじゃないですかね)
「それもそうですね」
ユリンシスは腰をおろし自分の魔法の杖を横に置く。
プレミアも同じように座る。
「そういえばお姉様ってどうしてアリユスさんの声を聞くことができるんですか?」
思い出したような口調で尋ねる。
「それとも勇者としての不思議な力が働いているとか?」
「私が小さい頃住んでいた村の人たちは能力の差はありましたが基本的には全員人間でないものの心の声を聞くことができました」
(能力に差があったっていうのは?)
「虫の心の声は聞くことができないけど猫の声は聞こえるみたいなそんな感じです」
(なるほど生き物の種類によっては聞こえないこともあるって事ですか)
「ええ」
短く言葉を返す。
「お姉様はどれぐらいの種類の生き物の声を聞くことができるんですか?」
「私はモンスターの心の声以外は聞くことができます」
「お姉様が住んでいた村ではそういう人たちがいっぱいいたんですか?」
「いいえ自慢じゃありませんが私みたいにほぼ全ての動物の声を聞ける人間はその村の中で私いがいいません」
「そうだったんですか」
「お姉様がもともと住んでいたその村はどこにあるんですか?」
「…」
尋ねると言葉を詰まらせ俯く。
「私が小さな時に住んでいたその村はとある盗賊に焼き滅ぼされました」
「その時まだ小さかった私は特に何ができるわけもなくただ倒れているお父さんとお母さんを見ながら泣き叫ぶことしかできませんでした」
「そうだったんですかすいません変なことを聞いて」
「ええいいんですもうだいぶ昔の話ですから」
「それからいろんな場所を転々として色々なパーティーに入ったりしたんですけどまだその時魔力のコントロールがうまくいってなかったんですぐに追放されたりして」
「アリユスさんと出会った時も同じ理由でパーティーに追放されましたけど」
(話してくれてありがとうございます)
一瞬なんだか複雑な表情を浮かべたような気がしたがどこか嬉しさを含んだ表情にも見えた。
「さてだいぶ休みましたしそろそろダンジョン探索を再開しましょうか」
言ってユリンシスは立ち上がり横に置いておいた杖を手に取る。
(そうですね)
それからも何度かモンスターと戦うことになったが3人で難なくモンスターを倒すことができた。
(もうかなり歩いてると思うんですけどまだ先が続いてるんですかね)
そんな言葉を漏らしながら足を進めていると何やら目の前に大きな扉が見えてきた。
「何なんでしょうかあの扉は?」
(行って確認してみましょうか)
「こうして見ている限りはただの扉にしか見えませんけど」
プレミアがあっけに取られたような表情で大きな扉を見上げながら言葉を漏らす。
「あけますよ!」
ユリンシスが真剣な口調で言って慎重にその扉を開ける。
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