第20話
ユリンシスとプレミアが立ち上がった時にはもう俺たち3人はモンスターに囲まれていた。
「このモンスター強いんですかね?」
プレミアは杖を構えモンスターと睨み合いをしながら疑問を投げかけてくる。
(俺には全く分かりませんが見た目だけで言えばだいぶ強い見た目をしていますけど)
イノシシのような顔に鋭い目つき、お互いにいつ自分の攻撃を叩き込むか睨み合が続く。
プレミアが1歩前に踏み出した瞬間まるで待っていたかのように仲間のモンスターが全員俺たちの方へと突っ込んでくる。
俺はその瞬間とっさに上に飛び見下ろすような形で状況を確認する。
(2人は大丈夫なのか?)
そんな心配をする必要など一切なかったようで2人は自分の魔法を駆使し圧倒的な力で倒していっている。
(これじゃ俺の助けなんていらないかな)
そんなことを口にしながらも念のためあたりを見回す。
ちょうどプレミアが後ろを見てる今攻撃をしようと睨み付けている。
モンスターがプレミアの背中に向かって突っ込もうとした瞬間俺は間に入り止める。
角を片方の手で無理やり引っ張り口を開けさせる。
俺はその口の中にすかさず自分の腕を入れる。
(てっきり口の中に急所かなんかがあると思っていたがそうではなかったか)
前が見えないモンスターは俺のことを振り落とそうとするが俺は何とかしがみつく。
とうとう腹を立てたモンスターは俺に視界が遮られた状態でなりふり構わず猪突猛進し壁にものすごい勢いでぶつかる。
壁にものすごい勢いで突っ込んだモンスターはあまりの衝撃で気絶しひっくり返っている。
(口の中に急所があるかと思って突っ込んでみたけどそんなことはなかったか)
左右を見てみるともう2人はモンスターを倒したらしい。
(このモンスターの素材を剥ぎ取り終わったらまた前に進んでみましょうか)
それから俺たちは再び前に進む。
「一体いつになったらこの場所探索終わるんですかね」
ユリンシスが疲れ切った言葉を漏らす。
(かなり歩いてきたとは思うのでそろそろ終わりが見えてきてもおかしくないとは思うんですけど)
そんなことを言いながら歩いていると目の前に何かがあるのが見えた。
3人で近づき確認してみるとそこには極座がありその玉座の椅子の上には何かの真っ黒な角が置かれていた。
(何なんでしょうねこの角?)
「私にもよくわかんないんですけどその角が何か良くないものを放っているということだけは分かります」
(とりあえずギルドの方に戻ってこの角がどういうものなのか鑑定してもらいましょうか)
「そうしましょうか」
それから俺たちは反対の方に足を向け洋館の出口の方に向かって歩く。
こうして出口の方に向かっているとこの場所が本当に広かったんだなと改めて実感する。
「長かったですけどようやく出てこれましたね」
ユリンシスがほっと一息つきながらそう言ってくる。
(でもここからさらにまたギルドの方に向かって歩いてかなきゃいけないですよ)
俺は冗談を含んだ口調で言う。
そこから受付の人にもらった地図を確認しつつギルドの方に戻った。
「おかえりなさい探索のクエストの方はどうでしたか?」
「すごく大変でしたけど…なんとか…全て探索してきました」
ユリンシスが疲れ切った口調で息切れをしなんとかそう伝える。
「これがその証拠になるか分かりませんがその洋館の中で戦ったモンスターの素材です」
プレミアが言って全てのモンスターの素材を見せる。
「確かにそのようですね」
「それではこちらが報酬の金貨100枚になります」
報酬が入った巾着袋をカウンターに置く。
「念のため中身を確認していただけますか」
「分かりました」
短く返事を返したのはアリユスだ。
カウンターに乗せられた袋を慎重に開ける。
するとパッと見ではあるが報酬の金貨は確かに入っているようだ。
「ありがとうございます」
「あ!それとこれを」
回収してきた素材と一緒に中に入っている黒い何かの角をアリユスは取り出し受付の女の人に見せる。
「これは一体何ですか?」
カウンターにおきマジマジとその角を確認する。
「それが私たちもよくわからなくて」
「私とプレミアちゃんとこのバッタさんで洋館の中を探索してて最後の場所になぜか玉座があってその上にこの黒い角が乗っかってたんです」
「あの1つ気になったんですけど私たちが今回クエストで行ったあの場所って元々はどういう場所だったんですか?」
「もしかして元々は魔族が住んでいる場所だったり?」
プレミアが疑問を投げかける。
「それが不思議なんですけど過去のあの洋館についての記録が全く残っていないんですよ」
「誰かが意図的に歴史からあの場所の存在を消し去ったのかそれとも途中でただ記録が途絶えただけなのか?」
プレミアが珍しく真剣に何かを考えている。
「私もはっきりしたことは何もわからないので大したことは言えませんが過去に誰かがあそこを使っていたということは確かでしょうね」
「人間とは限らないかもしれませんが」
「その角を鑑定してもらってそれが一体何の角なのか調べて欲しいのですがよろしいでしょうか?」
ユリンシスが丁寧な口調でお願いをする。
「かしこまりました多少時間がかかるかもしれませんがご了承ください」
俺たちは分かりましたと返事を開始ギルドの中にある椅子に座りしばらく待つことにした。
「お待たせしました、今鑑定結果が出ました」
「どうでしたか?」
ユリンシスが座っていた椅子から立ち上がり訪ねる。
「かなり古いということとこの角が発している魔力量から考えておそらく魔族のものだと思います」
「それもかなりの魔力量です」
もしかしたら昔の魔王軍にいたやつの角なのか?
俺のその疑問を訪ねてくれた。
「そこまではっきりとは分かりませんでしたが魔力量から考えてその可能性も十分にあると思います」
「ありがとうございます色々調べていただいて」
「こちらこそ今まで誰も冒険者の方がやらなかったクエストをクリアしていただいてありがとうございます」
俺たちはもう一度お礼を言った後ギルドを出た。
(さてクエストをやり終えたところで宿を探して今日は休みましょうか)
「私の足は今にも棒になりそうですよ」
ユリンシスが疲れ切った様子で言う。
とりあえず俺たちは街の方に向かう。
(プレミアちゃんさっき話してた時あの洋館の存在が意図的に消されてるかもしれないみたいなことを言ってたじゃないですか)
(はい確がに言いましたけどそれかどうかしましたか?)
(もし何かあの場所にバレたくないようなものがあって意図的に歴史からその存在を消して隠していたんだとしたら今回のクエストがあること自体おかしくないですか?)
(確かにそう言われてみればそうですね)
(まあ、あの場所が俺たちが思っているほど重要なものを隠している場所じゃないっていう可能性もあるので何とも言えないんですけどね)
(アリユスさんが昔封印した魔王に繋がっていればいいんですけどね)
(まあそれは少し期待しすぎかもしれませんが何かきっかけになってくれれば一番いいんですけど)
「それにしてもあの黒い魔力を放っていた角は何だったんでしょうね」
プレミアが素朴な疑問を口にする。
「私はそれよりも何であのツノがあんなところに置いてあったのかが気になります」
(あの受付の女の人が言っていたことが本当なら魔族の角らしいですけど魔王軍の隊長クラスとは結構戦って来ましたからこの情報だけじゃ特定するのは難しいですね)
(まぁ今そんなことを考えても仕方ありませんしとりあえず今日はもう宿に泊まってゆっくりしましょう)
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