第17話
「私たちにおすすめなクエストってありますか」
ユリンシスが昨日と同じようなことを受付の女の人に尋ねる。
「そうですね…」
受付の人は後ろを向き後ろの壁にいくつか貼られているクエストの張り紙を見る。
そこに貼られているクエストの紙をじっくりと見ながらどれがいいか考えてくれているようだった。
「このクエストとかはどうでしょうか?」
言って少し上の方に貼られているクエストの紙を取り俺たちに見せてくる。
「このクエストは?」
ユリンシスが尋ね説明の言葉を促す。
「そのクエストは正直言って難易度的には難しくないんですけど何よりこのクエストは少し面倒くさくて」
「めんどくさい?」
そのクエストの紙に書かれている内容を確認してみるとこう書かれていた。
クエスト内容古くから森の中にある洋館の中をくまなく探索してください。
「クエスト内容の部分に書いてると思うんですけど洋館の中をくまなく探してくださいっていうその洋館がとにかく広くてとても1人の冒険者じゃくまなく探せない広さをしてるんですよ」
(なるほど3人でいつも活動している俺たちだったらこのクエストをこなせると思ったのか)
(もしかしたら受付の女の人の後ろに貼られているクエストはなかなか他の冒険者が受けてくれない依頼なのかもしれない)
「このクエストの屋敷ってそんなに広いんですか?」
プレミアは短い言葉を口にする。
「それが今までこのクエストを受けた冒険者は何人かいるんですけど最後までこのクエストをやりきった冒険者がいなくて」
「私はこのクエストに書かれている洋館に言ったことがないので何とも言えませんが少なくとも言えることがあるとすれば並大抵の広さの場所じゃないということです」
また成功報酬の金額を見忘れるわけにはいかないと思い紙の下の方に書かれている報酬の欄を見る。
すると思わず驚いてしまう。
(金貨100枚!)
「あのこのクエスト報酬の金額おかしくないですか!」
ユリンシスが金額の大きさに声が震えている。
「それが今まで何人かの冒険者たちがこのクエストを受けて全ての人がこのクエストは絶対にクリアできないという噂が広まってしまって」
「上のランクの冒険者の方に頼もうかとも考えたんですがクエスト内容的に上のランクの方にやってもらう仕事でもないなと思いせめて金額だけでもあげようとこうなったんです」
(2人ともどうしますかこのクエストを受けますか)
(絶対の保証はないとは思うんですけど強いモンスターじゃないなら探索に集中できますし私はいいですよ)
(プレミアちゃんがこれでいいなら私もこのクエストで問題ありません)
「このクエストを受けたいんですけどいいですか?」
「ではこちらが今回のクエストの洋館までの地図になります」
俺たちはその地図を受け取りお礼を言った後ギルドを出て目的の場所へ向かう。
「中が広すぎて他の冒険者がやりたがらないってどういう場所なんですかね?」
プレミアが疑問をぶつけてくる。
(なんとなくですけど洋館の中が広すぎて探索するのがめんどくさいから他の冒険者たちがクエストを受けないっていう理由だけじゃないと思います)
「それはつまりどういうことですか?」
続けて疑問を返してくる。
(これは俺の勝手な推測ですけど何かもっと他の理由があるんじゃないかと)
「だとしたらなぜ私たちにそのことを伝えてくれなかったんでしょうか?」
次に疑問の言葉を返してきたのはユリンシス。
(俺たちに何か言えない理由があるのかそもそも自分自身も知らないか)
時々迷わないようにもらった地図を確認しながら歩いていると受付の人が言っていた通り森の奥の方にとても大きな洋館が立っている。
「ここですよね…受付の女の人が言ってた洋館って」
正直言って想像していたよりもかなり大きいその建物に俺たち3人は圧倒される。
「とりあえず中に入ってみましょうか」
ユリンシスがそう言って洋館の扉を開け中に入る。
すると中はとても薄暗くかろうじていくつかある窓から光が入ってくるだけ。
幽霊でも化けて出てくるんじゃないかと思うくらい薄気味悪いその雰囲気にプレミアは怯えユリンシスの後ろに隠れる。
「大丈夫ですよプレミアちゃん」
口調は心配半分嬉しさ半分といった感じだ。
(とりあえずこんな玄関のところで立ち止まってても仕方がないですし前に進んで行きましょうか)
「そうですね!」
ユリンシスが真剣な口調で言葉を返してくる。
プレミアはと言うと薄暗いのではっきりとは見えにくいがユリンシスの腰の部分にコアラのようにしがみついている。
大丈夫だよと言いながらなだめてはみるが緊張が解ける気配はない。
薄暗い中なので身長に足を進めているとモンスターが目の前に現れた。
そのモンスターは騎士のような見た目をしていて槍のような武器を持っている。
(2人とも杖構えてください!)
「はい!」
「はい!」
(俺は真ん中のやつを相手します!)
(2人は横にいる2体を相手してください!)
俺はモンスターに近づく。
鎧の兜で顔が隠れているせいで目がどこにあるのかわからないが、俺を睨みつけているような気配を感じる。
しばらくお互いに様子を伺い次の瞬間!
モンスターが手に持っている槍を俺に叩きつけるようにして振り下ろしてくる。
だがその攻撃を素早く避け槍の上に乗る。
(その槍なら簡単に叩き潰せると思っていたかもしれないがそんな簡単には行かないぞ)
再びそのやりを振り上げ攻撃をしてこようとした瞬間一気に距離を詰め顔面に攻撃を入れる。
俺の素早い動きについていけなかったのか、全く避けることもせずもろに俺の攻撃を食らう。
するとうめき声のようなものをあげ転げまわる。
モンスターが再び立ち上がったその瞬間 瞬時に距離を詰めすかさず胸の部分に一発攻撃を入れる。
モンスターが身にまとっていた鎧全てにひびが入りあっという間に壊れていく。
(終わった)
心の中でほっと胸をなで下ろす。
2人の方はどうなっているんだろうと横に顔を向けてみる。
ちょうどプレミアが槍を振り降ろされそうになっているところだった。
助けに入り槍を素手で受け止める。
(大丈夫ですかプレミアちゃん)
「アリユスさん何で?」
(こっちが片付け終わったので少し手伝いをしようかと思って)
(俺が相手を引き付けるのでプレミアちゃんはその隙に攻撃を叩き込んでください)
「分かりました!」
先ほどと同じようにモンスターとの距離を一気に詰める。
さっきのモンスターと同じようにその槍を俺に向かって振り下ろしてくる。
(その攻撃は見切った!)
攻撃をすかさず避け後ろに回り込む。
モンスターが俺の方に完全に体を向けたところでプレミアが魔法で鋭く大きい木の一部を作り出しその魔法で鎧ごと体を貫く。
膝から崩れ落ちるように倒れピクリとも動かなくなった。
(なんとか倒せましたね)
「アリユスさんのおかげですありがとうございます」
丁寧に頭を下げられると少し照れくさい。
(俺はただモンスターの意識を自分の方に向けさせただけで特に何もしていませんよ)
(とりあえずこのモンスターが身にまとってる鎧何かに使えそうですし回収しておきましょうか)
「はい!」
(そういえばプレミアさんて地面から木の根っこを生やす魔法をよく使いますけど、他には何か使える魔法とかあるんですか?)
「実際に使ったことはあまりありませんが回復系の魔法は少し使えます」
(それなら怪我した時も安心ですね)
(きっと回復薬だけではカバーできない部分も出てくるだろう)
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