第15話
「さてプレミアちゃんの能力テストが終わったところで私たちにできそうなクエストってありますか?」
ユリンシスが受付の人に尋ねる。
「お2人がこなせそうなクエストの内容で行くとこのクエストがおすすめですね」
そう言って1枚のクエスト内容が書かれた紙を手渡してくる。
森の奥にいる凶暴なモンスターを討伐してくださいと書かれている。
その内容が書かれた紙の右下には討伐して欲しいモンスターの写真が載せられている。
「かなり強そうな見た目をしてますけどこのモンスターって強さはどのくらいなんでしょうか?」
「かなり強そうな見た目をしていますが?」
ユリンシスが尋ねる。
確かにそのクエスト内容が書かれた紙の写真に写っているモンスターは額の部分に十字傷があり強そうな見た目をしている。
「正直言ってそのモンスターは見た目ほど強くはありません」
「Sランク魔法使い2人と規格外の力を持ったバッタさんがいれば余裕でしょうね」
「ちょっと待ってくださいなんでこのバッタさんが規格外の力を持ってるってことを知ってるんですか!」
「たまたま街の中で買い物をしていたら人だかりができていて何だろうと気になって様子を見てみたらそのバッタさんが柄の悪い男の剣を余裕で避けていた様子が見えたので」
「そのバッタさんはおそらく勇者の生まれ変わりか何かですよきっと」
言われた瞬間俺は雷に打たれたような驚きを覚えた。
(どうして何か行動を起こした方がいいか!)
(だめだ下手に行動を起こしたりなんてしたら自分が普通のバッタではないということを自分からばらしてることになりかねない)
「なんてそんなことあるわけないですよね」
受付の人が冗談交じりの口調で言う。
俺はその言葉を聞いてほっと心の中で一息つく。
(心臓に悪い!)
「このクエストを受けたいんですけどいいですか?」
ユリンシスが尋ねる。
「かしこまりましたそれではこちらがそのモンスターがよく出没する場所の地図です」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ」
ギルドの中にあるアイテムショップにより必要になりそうな回復薬の買い出しやその他の必要になりそうなものを一通り買った後ギルドを出た。
「この地図に書かれている通りの場所にモンスターが出没しているんだとしたら結構近くの森にいるんですね」
プレミアがもらった地図を覗き込みながら意外そうな口調で言う。
「そうですねギルドの近くにある森は比較的初心者の方がクエストで行くことが多いと聞いたのでそんなにモンスター自体は強くないと思うんですけど油断しないで行きましょう」
「プレミアちゃんがどんな魔法が使えるのか見るの楽しみです」
「そんなに大した魔法が使えるわけじゃないので役に立てるかどうかは分かりませんが頑張ります」
初めてクエストの仕事をやるということもあり声も体も少し震えている。
「大丈夫ですよもし本当に危ないと思ったら私が守ります」
「プレミアちゃん1人じゃ無理そうなら私も協力しますし」
「ありがとうございますでもなるべく1人で戦えるように頑張ってみます」
「まあとりあえず気を張りすぎないように頑張ってください」
地図を時々確認しながら目的の場所まで歩いていると森にたどり着いた。
(地図にはここが目的地だって書いてるんですよね)
「はい間違っていなければここに印がついているので目的地だとは思うんですけど」
(ここにクエストに書かれていたモンスターがいるんだとしたらだいぶ見つけるのが大変そうですね)
かなり先まで木が生えているその道を警戒しながら進んでいく。
「もうかなり歩いてる気がするんですけど全くこの森から抜け出せる気がしませんね」
(まぁとりあえずどこかに出るまで歩き続けるしかないんじゃないですかね)
そんな言葉を漏らしながら歩いているとどこか別のところに出たのかと思いきや右と左で別れている道があるだけだった。
「ここからまた歩かなきゃいけないんですか」
ユリンシスが言葉を口にした瞬間!
(危ない避けて!)
モンスターが勢いよく襲いかかってくる。
俺がユリンシスの背中を押して突き飛ばし攻撃を回避する。
「アリユスさん!」
鋭い爪で攻撃を食らわされるギリギリでその爪の間を塗って攻撃を避けた。
(ふう危なかったもう少し反応が遅れてたら攻撃をもろに食らうところだった)
安堵のため息を漏らす。
(どうにかしてこの場所を利用できないか!)
「でもこんなに狭い森の中で暴れられたらいずれ逃げ場がなくなるんじゃ」
ユリンシスの声を聞き考える。
(そうだ!)
(2人で俺にモンスターの意識を集中させてください!)
「私とプレミアちゃんが2人で誘導したらアリユスさん1人で戦うことになりますよ」
(まあ見ててください)
モンスターの攻撃が当たるか当たんないかのギリギリの距離で飛び回る。
何度かそれを繰り返していると狙い通り怒りが溜まってきたのか鋭い爪で捉えようとしてくる。
完全に仕留めようと襲いかかってきたその瞬間!
細い森の中へと入る。
すると俺の方に向かって振り上げた鋭い爪は俺の横に生えている大きな木に直撃する。
それを何度か繰り返す。
(これで邪魔な木がなくなって動きやすくなったな)
「もしかしてモンスターに今木を切り倒させるためにわざと!」
ユリンシスが言って驚きの声をあげる。
(ここまでうまくいくとは思ってませんでしたけどね)
俺たちが今まで歩ってきた道に生えていた木は綺麗さっぱり切り倒されている。
モンスターは鋭い目つきで俺を睨みつけ他の2人など全く気に留めていない。
(お前を倒すのは俺じゃない)
(プレミアちゃん!)
「はい!」
言った瞬間瞬時に杖を構えモンスターが立っている地面の真下から木が生え体を串刺しにされる。
(想像以上にえげつない魔法ですね)
「ギルドの方で能力テストをやった時何か魔法があったらいいと思って即興で今この魔法を使ってみたんですけどダメでしたかね」
(ダメってことはないんですけどとにかくすごい魔法ですね)
(でもこれだと素材の剥ぎ取りをするのに1回上からどうにかして降ろしてこなきゃいけなくなりますね)
「それなら大丈夫です」
プレミアが行って手に持っている杖を軽く地面に振動させると、今までモンスターの体を貫いていた木がなくなりモンスターが地面に落ちてくる。
「プレミアちゃんて今まで魔法を使ったことは!」
ユリンシスが驚きを含んだ口調で尋ねる。
「記憶している限りは数えるほどしかないです」
「それなのにここまで魔法を自由に扱えるんですか!」
(俺は魔法のことは一切わかんないんでどのぐらいすごいのかわかんないんですけどそんなにすごいんですか?)
「私は小さい頃から魔法の修行をずっとしてたのでそれなりに魔法が使えるんですけど数えるほどしか魔法を使ったことがないのにこのレベルっていうのは正直規格外です」
その目はこれから才能が伸びていくと自分はいつか追い抜かされてしまうんじゃないかというような不安を宿している気がした。
(これでプレミアちゃんがどういう魔法が使えるのか一部分ではあると思うんですけどわかったので戦いやすくなりましたね)
「そうですね、これでプレミアちゃんとの連携攻撃が練習すればできるかもしれません」
(そのためにはユリンシスさんにも魔法使いとしての腕を上げてもらわないといけませんね)
(とりあえずこのモンスターの素材をはぎ取って早くギルドの方に戻りましょうか)
「それもそうですね」
それにしてもついさっき能力テストをやったばかりなのにここまで魔法を応用するとは俺でもびっくりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます