第13話
「お2人にお話があるんですけど」
部屋に運ばれてきた朝ごはんを食べているとユリンシスがいきなり真剣な表情で俺たちの方を見る。
「受付の人に闇の情報を探るためにはもっとランクをあげないとダメだって言われたじゃないですか」
(確かにそんなことを言われましたね)
「ここで私は重要なことに気づいたんです」
「たとえ私の冒険者ランクがAランクになったとしても私は裏の組織のことについて何も知らない」
(まあ裏の社会の情報なんてトップの人にしか共有されない極秘情報ですからね)
「そこでプレミアちゃんにも私たちと同じ冒険者になってもらいます」
いきなりの言葉に俺は驚きの声をあげる。
(ちょっと待ってくださいよいきなり冒険者だなんってそんな)
(本人も困った表情を浮かべちゃってるじゃないですか!)
「分かりました私も冒険者になります」
なってくれるんですか。
プレミアの口からそんな言葉が出てくるなんて全く予想もしていなかった。
「それじゃあこの朝ごはんを食べてしばらくしたらギルドに向かって冒険者登録をしに行きましょう」
(ちょっと待ってくださいこんなトントン拍子で話が進んでいいものなんですか?)
「いいんじゃないですかねどっちにしろ私たちだけじゃ裏の社会のことについて知らなすぎますし何があるか分かりませんから」
「裏の社会のことについて案内してもらう場合は私達と同じようにAランクの冒険者を目指してもらわないといけないわけですし」
(そうかもしれませんけど)
(冒険者になるということは少なからず 危険が伴うんですよ )
「それは…」
俺の言葉に答えたのはプレミアだった。
「大丈夫ですプレミアちゃんは私が命に変えても守りますから!」
俺はそのものすごい熱を含んだ言葉に圧倒されるしかなかった。
(なんでなのかはよく分かりませんけどアリユスさん昨日からプレミアちゃんの話をすると反応しますよね)
俺は考えが読まれていることが分かっていながらそんな言葉を口にする。
(まだあんなに押さない女の子なんですよ私が守ってあげなくてどうするって言うんですか!)
(年齢的にはそう変わらないと思うんですけど)
(だからこそ私が1つ上のお姉ちゃんとしていろいろ教えてあげるんじゃないですか!)
やり取りを重ねていくごとにユリンシスのプレミアに対する熱量が増していく。
(まあとりあえず話を戻しますけどプレミアちゃん自身が冒険者になることを嫌がっていないなら俺は止めるつもりはありません)
「はい嫌じゃないですただ…」
「ただ?」
短く疑問の言葉を返したのはユリンシスだ。
「今まで何もやって来なかった私がお姉様のいいえお2人の足手まといにならないか心配で」
(心配しなくて大丈夫ですよ俺はともかくユリンシスさんは冒険者になったばかりだから一緒に成長していけると思います)
(いやちょっと待て…)
(今ユリンシスさんのことをお姉ちゃんって言わなかったか!)
「私が好きなように呼んでいいですよって言ったらお姉ちゃんって呼んでくれて」
とても嬉しそうな表情で教えてくれる。
(だから昨日お風呂から上がってきた時あんなに上機嫌だったのか)
自分がお姉ちゃんと言っただけでこんなに話を広げられるとは思っていなかったのか少し恥ずかしそうに目をそらす。
なぜかユリンシスはプレミアの隣に座りご飯をあげている。
(ユリンシスさんからしてみると妹が可愛すぎるという感覚なのかただ可愛いものを愛でているような感覚なのかわからないけどプレミアちゃんが特に困ってなさそうだからいいか)
それから朝ご飯を食べ支度をしお礼を言った後宿を出る。
「あの今からどこに向かうんですか?」
ユリンシスの隣で歩いているプレミアが不安と疑問が混じった表情を浮かべ尋ねてくる。
「今ギルドに向かっています」
「ギルド?」
「まあすごく簡単に説明すると冒険者登録というものをそこでするとそこにあるクエストボードに貼られている紙の中から自分のランクにあったクエストを受けることができるんです」
「クエストをクリアすると成功報酬でお金がもらえます」
「分かりましたか?」
優しい口調で確認する。
「理解できました教えていただいてありがとうございます」
「大変よくできました!」
ユリンシスが少し乱暴にプレミアの頭を撫でる。
「まあとりあえず詳しい話はまたギルドについてから話しますね」
「よろしくお願いします」
話しながら歩いているといつも俺たちが通っているギルドにたどり着いた。
「ここが私たちが仕事をもらう場所として使わせてもらっているギルドです」
プレミアが中に入ると物珍しいものを見るような目で辺りを見回す。
「ギルドに入会させてあげたいんですけどできますか?」
「入会希望の方ですねこちらへどうぞ」
ユリンシスがこのギルドに入会した時と同じようにカウンターに1枚の紙とペンが置かれる。
「その紙に自分の名前と自分が得意としている武器必要な項目を埋めていってください」
分かりました短く言葉を返しペンを握る。
その手は緊張し震えている。
名前を記入する欄にプレミアと自分の名前を書く。
次に自分の得意な武器はと書かれている欄で手を止める。
「ここの部分は何と書けばいいんでしょうか?」
言いながら助けを求めるようにユリンシスの方に目を向ける。
「ここの部分は自分が得意な魔法とか剣とかそういう戦いに使えるものを書くんです」
「プレミアちゃん魔法は使えますか?」
「少しだけなら、ですが魔法の杖を持ってません」
「とりあえず魔法って書いておきましょうか」
「魔法の杖は私が買ってあげます、お金がそんなにあるわけじゃないので高いのは無理ですけど」
「そんなそこまでしていただくわけにはいきません」
「魔法の杖は私が自分で何とかします」
(ここは素直に甘えておいた方がいいと思いますよ)
(今プレミアちゃんがお金を持っているようには見えませんし、それに何より買ってあげると言った本人が買いたくてしょうがない顔をしてますし)
「それじゃあ…甘えていいですか?」
申し訳なさを含んだ口調で言う。
「喜んで!」
嬉しさが隠しきれていない。
「あの申し訳ないんですけど紙の記入は杖を買いに行ってからでいいですか」
「分かりましたそれでは一度この書類はこちらで預からせていただきます」
俺たちは一度ギルドを出て杖が売っているショップに向かった。
「ここら辺に杖が売っている場所なんてあるんですか?」
「意外とここの近くにたくさんありますよ」
「魔法の杖ってだいたいいくらぐらいするんですか?」
「物によって値段は全然変わってくるので何とも言えませんね」
「私が見たすごい金額の杖で言うと金貨100枚のやつがありましたね」
(金貨100枚って大きい家が一つ建てられるじゃないですか!)
あまりの金額の大きさに俺は驚きの声を上げてしまう。
「プレミアちゃんはこういう魔法の杖が欲しいとかはないんですか?」
「私は安いもので構いません」
「そう言われると選ぶ時に困っちゃうな…」
プレミアが少し慌てたようにこう付け加える。
「しいて条件を上げるとするなら持ちやすい杖ですかね」
(そういえば気になってたんですけど魔法の杖がなくても魔法が使える人いるじゃないですか、そういう人ってそもそも魔法の杖を使わないんですか?)
「いいえそういうわけではなくて魔法の杖というのはもともと自分の魔法をサポートしてもらうためのものなんです」
「魔法の杖を使う時の方が魔法の威力が上がるからっていう理由で使ってる人もいます」
「着きましたここが私が今持ってる杖を買ったお店です」
ユリンシスが手を伸ばしそのお店の扉を開ける。
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