第11話
(怪我とかはしていませんかアリユスさん)
(私はどこも怪我をしていないので大丈夫です)
(そちらの方は大丈夫ですか?)
「あのどこかに怪我とかはしていませんか?」
アリユスが尋ねるが頷くことも首を横に振って否定することもしない。
何も答えようとしないその女の子に悩まされていると、さっき俺が倒したはずの男が頭を押さえながらゆっくりと起き上がってくる。
「全くいってえな」
俺は再び2人を守るように前に出る。
(ユリンシスさん今からこの男に俺が言った言葉を代わりに行ってください)
(分かりました)
(また攻撃されてきたら困るので俺の後ろに立ったままでいてください)
「どうしてこんな女の子に銀の首輪をつけているんですか!」
「そんなの決まってるだろうそいつが奴隷だからだよ」
言って鼻で笑い飛ばす。
「だいたいそいつが悪いんだそいつを使ってショーをやろうと思ったらいきなり拒んで俺のショーを台無しにしやがって」
悪いことなどしていないというような言い方に俺は我慢ができず足を振り上げる。
するとさっきの戦いで俺の強さを思い知ったのか反射的にその男はガードの体制をとる。
(お前がどういうショーをしようと思っていたのかは分からないが、あそこにいる女の子に仕事をさせようなんて何を考えてるんだお前は!)
俺が言っていることはこの男に伝わっていないということがわかっていながらも、と言わずにはいられない。
今のは言葉にして言わなくていいとユリンシスの方に顔を向けて伝えようと思ったが分かっていると言わんばかりにうなずきを返してくる。
それから続きの言葉を喋ってもらう。
「この方はどこから一体奴隷として売られてきたんですか?」
本人の前で言っていいことなのかどうなのかためらった口調で言う。
「そんなの俺が知ってるわけないだろ客のプライバシーは守らないといけないだから伝えられる情報は必要最低限だ」
「それに俺はただの下請けだ実際にそいつを奴隷として売るかどうかの話し合いに立ち会ったわけじゃない」
「本当なんですか?」
ユリンシスがそういったと同時に俺が攻撃の構えを取ると男が情けない声を上げる。
「本当だよこんなところで嘘ついてどうするんだ」
「分かりました、ひとまずあなたの言葉を信じましょう、ただもう二度とこんなことはしないでください」
それから俺たちはその場を去った。
この女の子をあの男から助け出せたのはいいが問題なのはこれからどうしていくかということだ。
両親がいる家に帰してあげるというのが一番いい方法なのかもしれないが元々どこに住んでいたのかが全くわからない。
(見た目から考えるとユリンシスさんと同じ年齢に見えるけど)
髪は少しオレンジがかっていて台形は少し小柄で失礼かもしれないが全体的に押さない見た目をしている。
「自分の生まれ故郷がどこなのかとか分かったりしますか?」
尋ねると強く横に首を振る…
どうしようかと考えた結果このままここにいるわけにはいかないのでひとまずギルドの方に3人で戻ることにした。
「おかえりなさい遅かったですね…」
「その方は?」
「えーとですね話すと長くなるんですが荷物を届けた後に色々とありまして」
それから一通りのことを受け付けの女の人に話した。
「荷物を届けに行った先でそんなことに巻き込まれてたんですね」
「それで今悩んでいるのがこの方をどうしようかと」
「そうですよねこのままにしておくわけにはいきませんし」
受付の人はそう言いながら何とも言えない困った表情を浮かべ頭を悩ませている。
「とりあえず荷物を届けに行ってくれてありがとうございました」
「そのこと宿泊できる分くらいのお金は多めに詰めておきましたから」
耳打ちするように言ってお金が入った巾着袋を手渡してくる。
「ありがとうございますそれで1つお願いがあるんですけど」
「お願いですか?」
「今回この方を売り物にしていた男の人がどっかの組織と関連付いているかどうかを探って欲しいんです!」
「そう言われてもそういった組織はおそらくたくさんありますからね絞り込むのは一苦労です」
「だったら何かそういう組織独特の動きとかありませんか?」
「独特の動きですか?」
「私は下っ端なので上からの情報が全く降りて来ないから何とも言えないんですけど私のイメージだとそういった組織の人たちは奴隷を使った商売以外はあんまりしないイメージです」
「それじゃあその闇の人たちが関わっていそうなギルドの仕事ってありますか」
ユリンシスが尋ねると苦いものを噛みしめるような表情を浮かべ顔を背ける。
「あるにはあるんですけどそういった依頼はギルド側としても危険なのであんまり受けていないと言うのと…」
「ユリンシスさんの今のランクではとても受けさせることはできません」
「今受けてもらっているクエストの難易度とは比較にならないぐらい危険ですし命の保証ができません」
「そういった危険なクエストを受けられるようになるにはどのランクまで上げればいいですか?」
「そうですねだいたいAランクです」
「もちろんランクが上に上がっていくにつれ上に上がるための難易度も上がってきますからそんな簡単には行きません」
「分かりました」
「とりあえずどうするかは明日までに考えてきます」
俺たちはギルドを出て今日3人で泊まるための宿を探すことにした
(もしどうにかして闇のやつらを突き止めるにしてもあの受付の人が言っていた通り今のランクのままじゃとても無理でしょうね)
(とにかくランクを上げないと話にならないということがわかったのでまずはそれをどうにかしなきゃいけないですよね)
ユリンシスが後ろをついてきている女の子に心配そうな顔を向ける。
「ずっと聞くのを忘れていたんですけどあなたの名前は何て言うんですか?」
優しい口調で尋ねるが女の子はうつむいたままで何も答えようとしない。
(私何か聞き方を間違えたんでしょうか?)
(いいえおそらくそういうわけじゃないと思うんですけど)
「今日はこの宿に泊まろうと思うんですけどどうですかね?」
負けじと声をかけてみるが帰ってきた反応はさっきと一緒で無言のままだ…
「2人で1つの部屋に泊まりたいんですけど部屋空いてますか?」
「はいそれでは私についてきてください」
言われた通りその女の人の後ろについていく。
たどり着いた部屋の中を見てみると思っていたよりは広い。
「ごゆっくりお過ごしください」
「案内ありがとうございます」
「もしよかったらどうしてあの男の人にあんなことをされていたのか教えてくれますか?」
尋ねてみるが今までと同じように何も言葉は返ってこない。
「すいませんいきなりこんなこと聞かれて嫌でしたよね」
「私にあなたの好きなもの嫌いなもの何でもいいので教えてくれませんか?」
「自分勝手だなと思われてしまうかもしれないんですけど私はあなたのことをできるだけ知りたいんです」
「あなたの過去がどういうものだったのか知りたくないと言ったら嘘になりますけど無理して話してもらうつもりはありません」
「だからゆっくりとでもいいので私に心を開いてくれたら嬉しいです」
「それじゃあまずは嫌いなものは何ですか」
それからもいくつか質問を投げかけては見たものの何も答えようとしない。
「分かりました何も答えたくないのであれば気が向いた時に答えてくれればそれでいいです」
アリユスは安心させるように笑顔でそう言った。
「あの受付の女の人が言っていた冒険者のランクを上げるためには多分いくつかのクエストをこなさなければいけないんですよね」
「一体どのぐらいこなせばいいんでしょうか?」
話題を変えるように行ったその時!
「私は…」
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