第7話
(どんなクエストを受けましょうかね)
(そうですね私はまだ冒険者になったばかりなのでなるべく難易度の低いやつがいいですけど)
(そうですよねでもあまり難易度が低いやつだと宿題が稼げなかったりするのでそこら辺もまた問題ですよね)
(そうなんですよね)
2人で考えながらクエストボードに貼られている紙を見ているとユリンシスが足を止める。
(これなんてどうでしょうか?)
ユリンシスが1枚のクエスト内容が書かれた紙を手に取る。
そのクエストの紙にはこう書かれていた。
村の脅威を排除してください基本的な内容はそれしか書かれていない。
後は村までの地図と報酬金貨20枚と書かれているだけ。
(でもこのクエスト不思議ですね)
疑問を俺にぶつけてくる。
(何がですか?)
(このクエスト他のクエストと比べるとだいぶ報酬が高い方なのにまだクエストボードに貼られてるので)
(こういう報酬の高いクエストってすぐに取られちゃうようなイメージがあったんですけどそういうわけじゃないんですね)
(いや普通だったらこういう報酬の高いやつは早い者勝ちになるんですけど多分そうならない一つの理由はクエスト内容の説明が不十分だから)
(報酬が高い分危険を伴うクエストだってことです)
(俺1人でこのクエストに行けるんだったら行きたいが、どっちにしろクエストを受ける場合はユリンシスさんについてきてもらわないと話ができない)
を悩ませていると。
(私このクエストを受けたいです)
真剣な目でそう訴えかけてくる。
(でも危険ですよ、クエスト内容がちゃんと書かれてないからもしかしたら俺たちが思ってるよりだいぶ危険なクエストかもしれないんですよ!)
(クエスト内容をぼかさなければいけないほど危険な状況かもしれないってことですよね!)
(それはそうかもしれませんけど)
そう言っている本人の目は真剣そのもので全く冗談を含んでいるようには見えない。
俺はその雰囲気に押し負け心の中で1つため息をつきこう言った。
(分かりました正し誰かしらからこのクエストの内容を聞いて本当に危ないと思ったらお断りしてください)
俺がそう言うとありがとうございますと言って明るい表情に変わる。
(それに私にはアリユスさんがついているんですからきっと大丈夫ですよね)
なぜだか嬉しそうな笑顔を俺に向ける。
そのクエストの紙を手に取りカウンターえと持っていく。
「すいませんこのクエストを受けたいんですが」
「内容を確認いたします」
「特に問題ありません」
「それではこちらが村までの地図になります」
その村までの地図をありがとうございますと言って受け取りギルドを出る。
「そういえばさっきアリユスさんクエスト内容がちゃんと書かれてないみたいなことを言ってましたけど普通のクエスト内容ってどういう書き方をされてるんですか?」
思い出したような口調で尋ねてくる。
(まあもちろんクエストの依頼をしてくる人によって変わってくるんですけど基本的には成功報酬がいくらあるのかとかモンスターがどこに出現して困ってるみたいな理由で書かれてることが多いです)
「なるほど今回のクエスト内容の部分はその内容がかけていたってことですか?」
(まあもちろん村が本当に危ない状態になっててそんな理由をしっかり書く余裕はなかったっていう可能性もなくはないんですけど)
「とにかくこの地図が書かれている場所に早く行きましょう!」
少し早歩きで目的地に向かうとそこには小さいながらも賑やかな村があった。
「すいませんこのクエストのことについてお聞きしたいんですけど」
村の中を歩く1人の男に声をかける。
「俺はそのことについて何も知らねえな」
「村長さんなら何か知ってるかもしれねえ」
「この村の村長さんは今どちらに?」
「あなた方がこの村のクエストを受けてくれた方ですね」
男の人に尋ねていると横から1人の女の人が声をかけてくる。
「あのあなたは?」
「私はこの村で事件が起こらないように管理する役目を任されています」
「と言っても私が個人的にやってる部分が多いんですけどね」
そう言って少し笑う。
「どうぞ私についてきてください村長のところまでお連れいたします」
話してくれた男の人に軽く頭を下げお礼を言った後言われた通り女の人の後ろについて行く。
「村長お話になっていたお2方お連れに参りました」
「色々と大変なのに手を煩わせてしまってすまないね」
少し深めの椅子に座っている70代ぐらいの白髪を生やした男が自分の長毛を触りながら言う。
「いいえお気になさらず」
「それでは私はこれで失礼いたします」
「また何か用事があった時は頼むことがあるかもしれないその時は頼むよ」
「かしこまりましたその時になったら遠慮なくお呼びください」
ここまで連れてきてくれた女の人のやけにうやうやしい態度に若干の疑問を抱いていると、村長はこう話し始める。
「あの子は小さい頃に色々あって食べ物がなくて死にそうだったところを私が助けたんだ」
「それから私はあの子を実の娘のように育てた」
「だがあの子は私に恩義を感じているのかやけにうやうやしい態度で接してくるから村のみんなには王様と騎士なんて言われてるよ」
「こんな親ばかな話をするよりクエスト内容の話に写んないとな」
自分のあごひげを軽く撫でながら少し冗談ぽく笑う。
少し間を開けると、とても優しい父親の表情から真剣そのものの表情へと変わる。
「今回こうしてクエストで依頼をさせていただいたのは他でもありませんいきなりこの村の近くにダンジョンができてしまったからです」
「ダンジョンですか!」
ユリンシスが驚きを含んだ言葉を漏らす。
「村の者たちに何人かダンジョンに入ってもらって探索をしてもらうことも考えたのですがもし何かあったらと思うとできなくて」
俺はユリンシスに気になったことを尋ねてもらうように頼む。
「村長さん1つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「何ですか?」
「今回のこのクエスト内容の部分どうして抽象的な書き方になってしまっているんでしょうか?」
「ダンジョンのクエストだったらダンジョンのクエストだと書いておいた方がいいと思うんですが?」
「それがSランクの冒険者に最初この依頼を頼もうとしていたのですが…」
「Sランクの冒険者の方に頼む最低ラインの金額があまりに高かったので初心者冒険者の方に頼もうかと」
「なるほどだからと言って詳しくクエスト内容を書いてしまうと冒険者の方にそもそもクエストを受けてもらえないと思ったんですね」
(なるほどこれで俺たちのランクの中ではずいぶんと高い報酬が設定されてた理由がわかったな)
「とりあえず今日はもう夜も遅いのでダンジョン探索は明日からお願いできますか?」
「分かりました」
「それではしばらくの間この部屋の中でお待ちください」
(とりあえずここの人たちは悪い人じゃなさそうですけど)
「私も特に悪い人たちという感じはしませんでした」
(でも油断は禁物ですよ油断した瞬間に何かを仕掛けてくる可能性もありますから!)
「でもいきなり何かを仕掛けてくるなんてことはさすがにないんじゃ」
(俺が勇者として色々なところを旅してた時の話なんですけど)
(もうすっかり夜になってあたりが暗くなっていたので近くにたまたまあった村の人に話して止めてもらったんです)
(そしたら俺が寝てる間に持っていた件とかを全て奪われてしまって)
話を聞いて少し不安そうな表情を浮かべる。
(めったにそんなことは起こらないと思うので大丈夫だとは思うんですけど)
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