第5話
「お2人ともおかえりなさいクエストの方はどうでしたか?」
「なんとか無事に達成することができました」
(ユリンシスさんあの大型モンスターが現れたことについて言っておいた方がいいかもしれません)
(そうですね)
「そういえば薬草を見つけてギルドに戻ろうとしていた時に大型モンスターと遭遇して」
「それは大変でしたねですがあそこら辺に現れる大型モンスターは比較的そんなに強くないので大丈夫だと思います」
(あれは明らかにあそこらへんにいるモンスターじゃない!)
(Sランクかそれ以上のモンスターです)
「それがどう考えてもあそこら辺にいる大型モンスターじゃなく見た目的にはSランクかそれ以上のモンスターでした」
俺が伝えたいことを代わりに伝えてくれる。
「ちなみにそのモンスターはどんな見た目をしてましたか」
内ポケットから紙とペンを取り出し尋ねてくる。
「見た目的には3メートル以上あるんじゃないかというぐらいの大きさで、 狼のような見た目をしていて白と黒が混ざったような若干黒よりの毛並みを生やしたモンスターでした」
受付の人はユリンシスが言った特徴を復唱しながら何かを考えている。
「もしかしたらそれは
「銀獣?」
「SランクモンスターでSランクの冒険者たち4人がかりでも倒すのが難しいくらいです」
「そのモンスターをおそらく今も森の中をウロウロとさまよっているでしょうから早くどうにかしないと」
「そのモンスターなら私が倒しました」
「倒したって…Sランクモンスターですよ」
「はい倒した後にちゃんと近づいて確認しましたから間違いはありません」
「すいませんちょっと今ギルドの上の方に確認をしてきますね」
しばらくするとほっとした表情で受付の方に戻ってくる。
「すいませんお待たせしましたとりあえずあの森の中に他にSランクのモンスターがいないか調査をするとのことです」
「色々と尋ねてしまってすいませんそれではこれが今回の成功報酬になります」
言ってお金が入った巾着袋をカウンターに置く。
ありがとうございましたと言ってギルドを出る。
(確かにあのモンスター強そうな見た目をしてましたけどまさかSランクモンスターだとは思いませんでした)
(俺が勇者だった時あのモンスターと戦ったことはありませんでしたけど)
(まあでも俺が勇者として戦って命を落としてから100年も経ってるから新しいモンスターが生まれてても不思議はないのかもしれませんけど)
(そんなことより今日泊まる宿どこにします?)
俺が尋ねる。
(そうですねそんなにお金があるわけでもありませんし、なるべく安いところがいいんですけど)
いくつか宿が立ち並ぶ場所を歩いているとユリンシスが進めていた足を一度止める。
(ここなんていいんじゃないですかね安いですし)
(そうですねここにしましょうか)
「いらっしゃいませ」
「泊まりたいのですが空いてますか?」
「まだお客さん誰も来ていないので部屋選び放題ですよ」
「どの部屋がいいとかご希望はありますか?」
「それでは一番お金のかからない部屋で」
「かしこまりましたそれでしたらちょうど真ん中の左のお部屋になりますね」
支払い金額がちょうど今持ってるお金全額だったので2人でほっと一息つく。
「こちらがお部屋の鍵になります」
「ありがとうございます」
少し狭いが実質ユリンシスしか使わないので広さ的に問題はないだろう。
「特に歩いたわけじゃないですけどなんだか疲れましたね」
ため息をつきながら腰を下ろす。
(普段はあそこに生息しないはずのSランクモンスターに襲われそうになったんですから疲れて当然ですよ)
(むしろ俺はまさかあそこまでユリンシスさんに魔力があるとは思いませんでした)
「あそこまで自分の魔力を扱えたのは初めてです」
「アリユスさんが冷静になるように促してくれたからですよ」
「アリユスさん元は勇者様だったんですよね?」
思い出したような口調で尋ねてくる。
(はい)
「それなのになぜ今はバッタの見た目をしているんですか?」
(それは少し話すと長くなるんですけど 俺が魔王に倒されて目が覚めた時には魂だけの存在になってたんです)
自分でも言っていて理解できていないが実際そうなのだから他に説明のしようがない。
その言葉を聞いたユリンシスは首をかしげ言葉の意味を考えているようだったが理解できないらしい。
(俺も自分で説明しててよくわからないんですけど、とにかく幽霊の状態で目覚めたら誰からも見えない存在になってて)
「つまり本当に肉体を持たずに幽霊の状態でこの世界に蘇ったってことですか?」
(おそらくそういうことなんだと思います)
「でも幽霊の状態で蘇ったんだとしたら何で今バッタの姿をしているんですか?」
(俺にも詳しくは分からないんですけどユリンシスさんが、がらの悪い男2人組に絡まれてた時助けなきゃと思ったら偶然バッタが飛んできて)
(俺にも体があったら良かったのにって思ってたらいきなりそのバッタの体の中に入り込んでて)
(元々入ってたおそらくバッタの魂を追い出したらいつの間にか俺がこの姿になって)
「つまりもともとのバッタの体を乗っ取ったってことですよね」
「でもなんで魂だけの状態でこの世界に蘇ったりなんてしたんでしょうか?」
(それはおそらく俺が殺される前に魔王にかけられた呪いのせいだと思います)
「バッタの体に乗り移ることができたってことは他の体にも乗り移ることができるって事でしょうか?」
(いろんなことがありすぎて考えられていなかったですけどもしかしたらそういうこともできるのかもしれませんね)
一瞬何かためらったような表情を浮かべた後俺にこう言ってきた。
「お願いします私に修行をつけてください!」
(どうしたんですかいきなり!)
頭を下げられ困惑する。
「私は今日みたいな足手まといになるのはもうやなんです!」
「だから私に修行をつけてください!」
(そう言われてもそもそも俺は魔力を持っていないので魔法を一切使えませんし教えることなんてとても)
「それでもお願いします」
(まぁ俺が修行をつけて困ることはありませんし俺の修行にもなるのでいいんですけど)
「本当ですかありがとうございます!」
嬉しそうな笑顔を浮かべる。
(とにかく今の俺がやんなきゃいけないのは他の生き物にも乗り移れるかどうかっていう実験だな)
「それじゃあ私お風呂に入ってきますね」
(分かりました)
(さてこれからお金をどうやって貯めて生活していくかというのもそうだけど魔王が生き返ってるかどうかっていうのも調べなきゃいけないだろうな)
(とにかく今日の宿題でお金を全部使ったからまたクエストを受けてお金をどうにかしないと)
(この世界に蘇った時に考えたことではあるが何で魔王が俺にこんな呪いをかけたんだ?)
(さっきはただの実験ということで話を片付けてしまったが、魔王であるあいつにとって勇者である俺は邪魔な存在だったはずだ!)
それなのにどうして呪いとはいえ生き返らせるような真似をしたんだ。
それからしばらく理由を考えてみるが特にこれといった理由は思い浮かばない。
するとお風呂から上がってきたユリンシスが部屋に戻ってくる。
(お風呂どうでしたか?)
「とても気持ちよかったです」
濡れた白髪の髪をタオルで拭きながら答える。
それから少しして運ばれてきたご飯を食べ眠りに着いた。
(とにかく近いうちに魔王についての情報を調べておく必要がある!)
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