第4話
(アリユスさん私回復薬も必要なもの何も持ってなくてちょっとそこのショップで買い物をしてもよろしいでしょうか?)
(いいですよ )
(実はさっきまで回復薬や必要最低限のものは持っていたんですけどあの人たちに取られちゃって)
(みぐるみを全部剥がされたってことか)
(ていうことは今お金の方は!)
(お金の方は大丈夫ですそれだけは守ったので)
アイテムショップに売られている必要なものを一通り買った後目的地までの地図をもらいギルドを出る。
(俺が知らない景色ばっかりが広がってますね)
実感はないが俺が命を落としてから100年の時間が経っているらしいので当たり前だ。
「聞いた話だとここには私のような冒険者になったばかりの人たちが来るみたいですよ」
(薬草のクエストをやるために?)
「私たちと同じクエストをやるために来ているのかは分かりませんけど、聞いたところによるとこの辺り一帯のモンスターは比較的弱いらしいので初心者の冒険者にはうってつけの場所なんじゃないですかね」
(俺が初めてクエストをやるってなった時は毒を吐く大型モンスターのクエストをやってましたね)
「アリユスさんって最初から勇者として戦っていたわけじゃないんですか?」
(いや全くそういうわけじゃなかったです)
(勇者としての才があるって言われるまではただの運動神経が少しいい村人でしたから)
(俺に勇者としての才があるって分かってからは訓練をしたり色々な仕事に連れて行かれました)
「私はてっきり勇者と言われる人たちはみな生まれた時から何らかしらの飛び抜けた能力を持っていて勇者としての扱いを受けるんだとばかり思っていました」
(まあ勇者っていうのはこの世に害をもたらす何かが生まれない限り同じように生まれないものですからね)
(まあだからこの世界に俺が再び蘇ったってことなんでしょうけど)
(ただ少し不思議なんですよね?)
「不思議というのは?」
続きの言葉を促してくる。
(通常の場合だと前の勇者が死んだ場合他の誰かが勇者になって魔王を倒すっていう役目を追うはずなんですけど)
「ということは勇者様の血縁の誰かが必ず次の勇者になるって言うわけじゃないんですね」
少し驚きを含んだ言葉を口にする。
(勇者と血縁かどうかは全く関係ありません)
(実際俺の父さんは勇者の末裔でもなんでもないただの村人でしたから)
「受付の人からもらった地図によるとここが目的の場所みたいです」
(もっと全体的に開けてる森を想像してたんですけど、木がいっぱい生えてて進みにくそうですね)
「頑張って探すしかなさそうです」
(確かその紙に書かれている薬草は3つでしたっけ?)
バッタの体を活かし少し上から見渡す。
「そうですえーとまず1つ目は赤いキノコのような見た目をした薬草で所々に白い斑点があるみたいです」
(色々な葉っぱが重なって他の部分がよく見えないな)
下に下がりながらゆっくりともう一度あたりを見回してみる。
赤いキノコを見つけたものの白い斑点がなく別のキノコだ。
それから2人でくまなくいろんな場所を探しているとだいぶ奥の方にその紙に書かれた条件に当てはまる薬草が生えていた。
「多分これですよねこの紙に書かれてる薬草の一つ」
(そうだと思います)
この薬草を見つけるまでに見た目がほぼ一緒だが微妙に書かれている情報と違う薬草をいくつか見てきているのでどうしても言葉が曖昧になってしまう。
じっくりと観察した後これを持って帰ろうと言ってあらかじめ持ってきておいた小さなカゴの中に入れる。
「次の2つ目の薬草はここから少し歩いた川の近くにあるみたいですね」
その情報通りに川の近くに行ってみると、さっきの薬草よりは条件が絞られていたからかすぐに見つけることができた。
「えーとあとは太陽がよく当たる場所にある少しジメジメした土の中を掘れば薬草があるみたいです」
(最後のやつはなかなか探すのが大変そうなやつですね)
俺が思っていた通りかなりその薬草を探すのに手間取ったもののちゃんと探すことができた。
(今更ですけどこの薬草何に使うんですかね?)
「詳しくは書かれていませんでしたけど、あのクエスト内容が書かれた紙には薬を作るのに使用するためって書いてありましたね」
この100年後の世界によみがえる前に俺は薬草採取のクエストをやったことがないのかと言われるとそういうわけではないのだがやった数が少ないため記憶がおぼろげだ。
(最近はどうやらいろんな薬が出てきているみたいだし使われる場所も増えたんでしょうね)
当たり前だが100年前より明らかに薬の数やアイテムが増えている。
そんな会話をしながら歩いていると少し遠くの方から唸り声のようなものが聞こえてくる。
ゆっくりとその唸り声が聞こえる方に顔を向けてみると、ここには生息していないはずのモンスターがいて俺を睨みつけながらゆっくりと近づいてくる。
狼のような見た目をしていてとてつもなく大きい。
黒にちかい銀色の毛並み鋭い爪がより一層怖さを増している。
(このモンスターは明らかに上位難易度の大型モンスターです!)
(でもなんでこんなところに!)
「私は一体どうしたら!」
声を震わせながらゆっくりと後ずさろうとする。
「えっとあああ!」
パニック状態になり叫び声を上げる。
(下手に動かないでそこで止まっていてください!)
(考えなしに動いてしまっては相手に敵だと思わせるだけだ!)
モンスターが一歩近づくとユリンシスが悲鳴を上げながら魔法の杖を構え魔法を放とうとする。
だがその魔法はコントロールがうまくいかず爆発してしまう。
自分が攻撃されると思ったモンスターは大きな叫び声をあげユリンシスに突進してこようとする。
(危ない!)
俺はユリンシスの体を突き飛ばし突進の攻撃を避けさせる。
「アリユスさん!」
(俺は大丈夫です)
と言ってユリンシスの肩の上に乗る。
「それにしてもあのモンスターとどうやって戦えばいいんでしょうか!」
(あのモンスターと真っ向勝負をするのはやめた方がいい今の俺たちじゃ実力差がありすぎる!)
(ここは無理して戦うんじゃなくギルドに戻って受付の人に報告をしましょう)
(俺1人なら戦えるかもしれないがまだこの体の扱いに慣れていない、ユリンシスさんを気にしながら戦えるとも思えない)
次の瞬間睨み付鋭い爪が俺たちを捕らえ素早い動きで攻撃をしてくる。
なんとか服の一部分は破けたものの直撃を避けることはできた。
「ギルドの方に戻るにしてもこのスピードじゃいくら逃げようとしても追いつかれて終わりのような気がするんですが」
(確かにこのまま逃げてるだけじゃ消耗戦になってただ長引くだけだ)
(分かりましたですがあのモンスターに攻撃できるのはおそらく1回だけです)
(絶対に攻撃を外さない覚悟はありますか?)
「あります!」
「というかここでありませんと答えても私たちが生き延びる道はおそらくこれ以外にありませんから!」
考えた作戦を伝える。
モンスターが動きにくい細道へと移動する。
ちょうど細道に入ったところでモンスターが俺たちを睨みつけながら襲いかかるタイミングを見計らう。
(杖を構えて落ち着いて魔力の調整をしてください)
言うと一度小さく深呼吸をし魔法の杖を構える。
(放って!)
放たれた攻撃をかわしきることができずもろに食らった。
モンスターが完全に動かなくなったことを確認すると俺は肩にずっしりと乗っかっていた緊張感がだんだんとなくなっていくのを感じる。
(なんとかなったみたいですね)
「そうですね」
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