第11話『レベル上げ始めます-3』
一人で暗黒騎士と戦うモブラ。
そんな彼の背中に攻撃を叩きこめ。
俺はそう指示を出した。
すると。
「「「え?」」」
イリィナ様を含んだ三人がなぜか凄い勢いで振り返ってきた。
アレ? 何かおかしなことを言っただろうか?
あぁ、そっか。
大切な事を言い忘れていた。
「すみません。注意点がいくつかありました。最初はなるべく加減して攻撃してあげてください。理想はモブラのHPを10くらい残すような……。死ぬ五歩くらい手前まで追い込むのがベストですね。それと、連続攻撃は禁止で。金のロザリオ持ってても死にかねないので」
そう補足して言い直す。
しかし。
「「「………………え?」」」
再び困惑したような声を上げるイリィナ様達。
おかしいな。
もう伝えるべき事項はないはずだけど……。
「ヴァリアン様。先になぜそうするのかを説明するべきだと思います」
「――ああ、なるほど。そういえばそれを言ってなかったな」
うっかり失念していた。
改めてその点の説明をしよう。
「では基本的な事から説明させてもらいます。まず、レベルというのは極限状態の方が上がりやすいんですよ」
この世界の生命体は他の生命体を瀕死にするか殺すかするとその分だけ経験値を得られる。
それは間違いないのだが、その得られる量と言うのはどれだけ苦労するかによっても変わるのだ。
例えば。
強いけれど既に瀕死の魔物を倒したところで、そこまで経験値は得られない。
逆に、血反吐を吐きながら強い魔物を倒せば多くの経験値を得られるのだ。
「それにこれはモブラが強くなる為だけのものじゃありません。皆さんもモブラを攻撃して瀕死に追い込むことによって微量の経験値が得られるんです。もちろん、本当にモブラが死にそうになってたらトドメを刺すんじゃなくて助けてあげてくださいね?」
モブラは魔物と戦いながら後方を警戒しなきゃいけないから戦闘センスを養えるし、普通に魔物と戦うより絶対に苦労するからより経験値が得られる。
他のみんなもモブラを瀕死に追い込むことによって経験値を得られるし、モブラが本当に危険な状態になったらサポートできる。少なくともモブラがポーションなりエリクサーを飲む時間くらいは稼げるだろう。
これぞまさにWIN-WINの関係。
これを各自ローテーションで回していくのが俺の考えたレベル上げ方法だ。
そう俺は説明したのだが。
「「「…………………………」」」
なぜか絶句したまま、一向にモブラに対して攻撃を加えない三人。
なんで?
これは……もしかしたらアレかな。
手本でも見せた方がいいのだろうか?
「それじゃあまず俺が手本を見せますね」
俺は軽く剣を構えた。
俺は色んな武器が使えるし、なんならモブラとの戦いのときのように拳のみでも戦えるけど一番しっくりくるのが剣だ。
「とりあえず……ちょびっとエアロブレイド!!」
エアロブレイドは剣士職が繰り出せる基本的な遠距離技だ。
威力も低いし牽制にもってこいの技。
とはいえ、俺とモブラの間にはかなりのレベル差があるだろうし、かなり手加減をしながら技をくりだした。
すると。
「うおわぁぁぁぁぁぁぁっ――」
「あ、しまった。やりすぎた」
手加減したエアロブレイドでもやりすぎだったらしい。
暗黒騎士と戦闘中だったモブラは俺の横やりによって血反吐を吐きながらその場で倒れてしまった。
「ウ……ォォ?」
モブラと戦っていた暗黒騎士もいきなりモブラが倒れた事で思いっきり首をかしげている。
どうでもいいけど、その首をかしげる仕草はちょっとだけ可愛く思えるね。
「オォ。オォォォォォォォォォ」
やがてモブラを除く俺たちの存在に気づいたのか。
倒れるモブラを無視して暗黒騎士がこちらに向かってきた。
これは――チャンス!!
「立てぇいモブラァ! 今なら
俺は倒れるモブラを
「え!? まだモブラに戦わせるつもりなの!? そもそも、アレは生きているの!?」
血をまき散らしながら倒れているモブラを指さしながら驚くイリィナ様。
しかし……少し前までイリィナ様に反抗的だったモブラごときの心配までするとは。
さすがイリィナ様。慈悲深い。
でも、ここは心を鬼にしないといけないところだ。
「イリィナ様。先ほども言いましたけどギリギリの状態で魔物を倒さないと効率が悪いんです。それに、モブラなら大丈夫。なにせ金のロザリオを装備してますからね。あんな状態でもギリ生きてるはずです」
確かに見た感じ、モブラは死んでるようにも見える。
だからこそ暗黒騎士もモブラを無視したんだろうしね。
けど、死んでるはずはない。それが金のロザリオの効果である!!
「さぁ立て。立つんだモブラァッ! 魔王様の
俺は倒れるモブラに声をかけ続ける。
するとモブラの目がカッと開き。
「魔王様の
モブラは立ち上がり。
そうして隙だらけだった暗黒騎士の背中を後ろからその鋭い爪で切り裂いた。
「えぇぇぇぇぇぇ!? 立ち上がるの!? 今ので!? なんで!?」
「そりゃあイリィナ様の為になると言われたらたとえアンデッドになってでも立ち上がるでしょう。常識として」
「そんな常識聞いたことすらないわよ!?」
モブラに切り裂かれた暗黒騎士が黒い粒子となって消え去る。
これで暗黒騎士とのバトルは終了だ。
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