第10話『レベル上げ始めます-2』
「ほらヴァリアン。細かい事を気にしてないでさっさと立ちなさい! そして私たちにレベル上げの方法を教えなさい」
「了解しました!」
セーラとの言い合いを強引に打ち切ったイリィナ様。
なんだかよく分からんがイリィナ様も元気になったみたいだ。
「それではまず最初に。イリィナ様、これをどうぞ」
俺は配下のみなさんの為に用意していた金のロザリオをまずイリィナ様へと手渡す。
「これは?」
「持っていれば即死ダメージを受けても必ずギリギリ生き残れる金のロザリオです。これさえあれば比較的安全に魔物と命がけの戦いが出来ます。魔族の人にも有効なんでご安心を」
魔族も金のロザリオを持っていれば即死級ダメージを受けてもかろうじて生き残れる。
この事はモブラを使って何度も実験済みだ。
「あぁ、あなたが決闘でモブラに無理やり装備させてたやつね……。私の分だけ? 他の子の分はないのかしら?」
「あぁ、いや。あるにはあるんですけどね。でもそのロザリオ、パーティー内で複数人が身に着けてると効果がなくなっちゃうんですよ」
ちなみにアイテム袋に入れてる場合は身に着けていないという判定になる。
俺の持つ残りの金のロザリオは全てアイテム袋にもう入れてあるので、このパーティー内で機能するのは今イリィナ様に渡した金のロザリオのみだ。
「それとこれはエリクサーとポーションです。とりあえずは各自エリクサーを五つずつとポーションを20個ずつ持っておいてください」
「分かったわ。って……こんなにポーション持ちきれないわよ!! それにエリクサー!? それってどんな病気や傷でも治る万能の薬じゃないの!?」
「さすがイリィナ様。よくご存じで」
イリィナ様が言うようにエリクサーはHPとMPを問答無用でMAXまで回復してくれるアイテムだ。
これさえ飲めば瀕死の状態からでも全快できる。
無論、魔族に効くことはモブラで以下略。
「それもこんなに大量に気軽にばらまいて……。一体どこで手に入れたのよ」
「このエリクサーですか? そりゃ入手法は色々ありますけど……とりあえず今渡したのは合成して作ったやつですね」
「作った!? エリクサーを!?」
「エリクサーには俺もかなり世話になりましたからね。エリクサーを上限まで持って、そのうえでエリクサーを作るために必要な素材も上限まで持つように心がけてます」
この世界では合成のやり方さえ学べば努力次第で大抵の物は作り出せる。
もっとも、レシピ通りに作らなければ合成は失敗して素材も消え失せるというリスクもあるけど。
だが、俺はこの世界をゲームとして何度もプレイした男。
エリクサーを含め、有用なレシピは全て頭に入っているのだ。
「全員回復アイテムと金のロザリオは持ちましたね? それじゃあとりあえず念には念を入れて最初は全員でダンジョンに潜りましょうか。後で二人ずつに分かれてもらいます」
準備を終えたイリィナ様達にダンジョン内へと入ってもらう。
俺とセーラはもうレベル上げをするつもりがないので、最後尾でアドバイスをするだけ。
無論、アドバイスと言っても最初の方にちょこっとレベル上げのコツを教えるだけだ。
『ウォォォォォォォォォ』
そうしてダンジョンに入るとさっそく首なし騎士が現れた。
「雑魚ね。こんなもの私が一撃で――」
さっそく強力な魔術を叩きこもうとしているイリィナ様。
「待ってくださいイリィナ様。イリィナ様はとりあえず金のロザリオをモブラに渡した後、俺やセーラと同じく後方に控えていてください」
そんなイリィナ様に俺は待ったをかけ、金のロザリオをモブラに渡して欲しいと伝える。
俺はイリィナ様が「わ、分かったわ」と言いながら金のロザリオをモブラに投げ渡したことをきちんと確認して。
「――という訳でモブラ。最初はお前だ。とりあえず普通に戦ってみろ。他は待機だ」
「――承知ぃぃぃ!! 魔王様の為にぃぃぃぃぃっ!」
俺がGOサインを出すとまっすぐ敵へと突っ込んでいくモブラ。
モブラは素手で戦うモンクみたいなタイプらしく、ほぼ丸腰のまま暗黒騎士へと向かっていく。
そうして暗黒騎士との戦闘が始まる瞬間。
「よし。じゃあ次に残った三人はモブラに攻撃を叩きこんでください。魔術でも石をぶん投げるのでもなんでもいいです」
俺はそんな指示を出した。
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