第7話
「泥酔してる純を引っ叩いて、住んでるアパートを
聞き出した後タクシーでやっとこさ急いで洗面所
に連れて行ったり、水飲ましたりして本っ当に大
変だったよ。挙げ句の果て当の本人さんは気持ち
良ーく寝息立てて夢の国へと行かれておりました
とさ。人の苦労も知らんと呑気に寝ちゃってさぁ
。まぁ、だからあたしと純との間には何も無いっ
て事。安心しな!」
耳まで真っ赤にして俯いたままその言葉を聞いた純は心底安堵した。
良かったぁ〜!!しっかし何という失態を晒してんだ俺って奴は…。見知らぬ女の人に介抱させる迷惑をかけるなんて!これからしばらく、誘われても飲みに行くのは控えよう…。んっ!?待てよ、今まで恥ずかしくてスルーしてたけど…介抱してもらったんだよなぁ俺?なのに何故この人がベットに寝てるんだ!?それにどうして俺の名前、知ってんだろ?
「あのぅ、昨日の事は大体分かりました。わざわざ
部屋まで連れて来てもらった上介抱までして頂い
てありがとうございます。でも何であなたまでベ
ットに寝ているのでしょうか?それに俺の名前
…」
「あぁ、眠かったから。床にそのまま寝るのも嫌だ
ったから純の隣で寝たの。純の名前はね、何か身
分の分かるモンないかなぁ〜って側にあったバッ
グの中漁ってたら丁度、大学の学生証を見つけた
からそれ見た。純って結構良い大学行ってんだね
ぇ。それよりさ、アンタこれから酒飲み過ぎない
方が良いよ。世の中あたしみたいな親切な人、あ
んまいないと思うから。」
「はい、そうします。でも昨日はたまたま友達に無
理矢理飲まされただけで…ってもう大丈夫ですか
ら帰って頂いても良いですよ。」
相変わらず俯いたまま昨日の反省とお礼を言って、帰ってもらおうと思った純の言葉を無視して女性はベットから起き出し、欠伸しながら冷蔵庫の元へ向かった。そして冷蔵庫を開け、中身を物色しながらこう言った。
「えっ、何言ってんの?あたし帰んないよ。しばら
くここに住むわ。ねぇ麦茶ないの?…なんだ野菜
ジュースしかないじゃんか、ここ。」
女性の予想外の返事に、素直に帰るだろうと思っていた純はやっと顔を上げ女性の顔を初めて見て驚いた。
「何言ってんのはこっちのセ…えぇ、ががががが、
外人!?」
「アッハハハ!今頃気付いてやんの〜。反応遅っ!
でもね純君、外人とは何だね!?残念ながら世界
中どこを探しても外国という国はありませぇ〜ん
!!」
野菜ジュースをラッパ飲みしながらカッカッカッと大声で笑う。しかし目の前で大口開けて笑っている女性の顔はどう見ても日本人顔ではないし、アジア系の顔立ちではない。むしろ西洋人の顔立ちだ。また何より稀にも見ない美女であった。しばらくの間見惚れていた純だったが、先程の女性の言葉を思い出し抗議した。
「あの、介抱してもらった事は感謝しますけど、昨
日たまたま出会っただけでいきなりここに住むと
言われましても俺、困るんですが…。あっ、タク
シー代だったら払いますんで…」
「タクシー代なら純のお金で払ったから良いよ」
「あぁ、そうですか。良かった…ってそういう事じ
ゃなくて!あなたがここに住むって話ですよ!!
俺、困るんですけど。」
「いーじゃん。ちょっと狭いけど2人で住むには充
分なんだし、それにあたしはここも純の事も気に
入ったしね。決ーめた!今日からあたし、ここに
住もぉ〜っと!!」
「はぁ!?一方的に決められても…。一体何の権利
があってここに住むなんて言うんですか!?第一
親御さん達心配してますよ?だから早く自分の家
に帰った方が良いと思うんですが」
「権利も何もあたしはここに住む!でも、確かにあ
たしが居ないってバレる頃だと思うから今頃あた
ふたして大騒ぎになってるかもしれんなぁ」
「だったら余計に帰った方が良くないですか?」
「嫌だ。だってあたし、ここに住むって決めちゃっ
たもんよ。決めたからには家には帰んない。」
「決めちゃったもんって一体いつ決めたんですか
!?」
「今さっき」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます