第5話

3、


今日はどのバイトも休みの為、夕飯は少し手の込んだ豚汁にしようと決めた。

ごぼうを笹がきしながら純はフッとある事に気が付いた。


そういえば小町がこの部屋に無理矢理居座り始めてからもう3ヶ月かぁ…。早いもんだ。小町ねぇ…、あいつが居着いたあの日から俺の平穏だった日々が苦労の絶えない日々に変わったんだよな…。



バシッ!ドンッ!!


「痛ってぇ…、あれっ!?ここ俺の部屋だ。何 で? どうして?えーっと確か居酒屋を出てか ら…ヤバ い、記憶が無いぞ!あれほど藤田に止 めろって言 ってんのにどんどんコップに注ぐか ら…。それに しても俺、どうやって帰って来た んだろう?それとも誰かが送ってくれたのかな

 ?」

周りをキョロキョロしながら

「ゔ〜頭痛てぇ、だから藤田達と酒飲むのは嫌なん

 だよ。いつも無茶飲みさせられるから…。もう誘

 われても絶対に一緒に飲まん!!…んっ?つーか

 何で俺、ベットから落ちてんだ⁉︎」

二日酔いで痛む頭を押さえながらブツブツ独り言を言う純の耳に聞き覚えの無い女性の声がベットから聞こえてきた。

「うるさい…」


ベットの上に女の人が寝てるっ!!!!


その声で動かない脳が一気に動き出し、霞んでいた頭の中が一瞬でクリアになった途端パニックになった。


どうして俺の部屋に女の人が!?しかも何故ベットに寝てるんだ!?昨日の夜に一体何が起きた!?どうしよう、お、お、思い出せない…


悶々と頭の中で昨日の夜について思い出そうとしている中、問題の女性がう〜んと寝返りをうった。純は勇気を出して、おそるおそるベットを覗き込むとそこには見知らぬ女性が気持ち良さそうに眠っている。純のこれまでの人生では絶対にあり得なかったこの状況に、純は固まった。微動だにしない純を余所に眠っていた女性がうっすらと目を開ける。

「う〜ん、フニャ…あっ、純おはよぉ〜」

「お、おはようございます…」

固まったまま動けなかった純は、女性に挨拶されて咄嗟に正座し思わず返事をしてしまった。正座をしたまま純はまた昨日の経緯を必死に思い返そうとする。


日頃コンビニと家庭教師のバイトを掛け持ちしている純は、忙しさの為いつも友達の誘いを断っていた。それに酒が飲めそうな風貌のくせに実はアルコール類がからっきしダメなのだ。しかし昨日はたまたま家庭教師のバイトが急にキャンセルになり時間が出来てしまった。それを聞きつけた友人達がここぞとばかりに飲み会という名の合コンに誘ってきた。普段断ってばかりで申し訳ないと思っていたし、断ってばかりの自分をこうやって愛想を尽かす事なくいつも声を掛けてくれありがたいと感じていた純はOKした。でも案の定ビール2杯飲んだだけなのに、すっかり酔っ払ってしまった。それなのに友人の藤田が次々とコップに遠慮なく注いでくるので最後には1人では立てない程にグダグダに酔っ払い、両肩を友人達に支えられながら辛うじて一軒目の居酒屋を出たのは何となく覚えている。しかしそれ以上の記憶が思い出せずにいた。


俺はあの時の4人の中で誰かをお持ち帰りしまったのか!?イヤイヤそんな事は絶対無い!ろくに話もしてないし、彼女達より藤田が注ぐビールを飲むのに必死だったからな。酔っ払って記憶が無いんだから…えーっと、じゃあ今俺のベットで寝てる女の人は誰なんだろう!?




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