第4話

痛む胃を押さえつつ、また空き缶を拾い始めながら小町について思う。


大体小町の見た目と中身のギャップが違い過ぎるのが悪い!あれじゃあ世の中が言うギャップ萌えどころじゃない…。


小町は色白で、瞳は綺麗なグリーンの色をしており髪なんか色素が薄いのか明る過ぎないブラウンのストレートロングで腰以上ある。顔だって西洋人の造りではあるが中性的であり、まるで絵画から抜け出してきた美女の様な不思議な雰囲気を持っている。

し・か・し、それはあくまで外見のみで喋らなければの話。中身は未だかつて見た事が無い最低最悪なもの…。口もガラも悪いし態度もでかい。そして何より酒好きでタチの悪い酒乱ときたもんだ。

毎晩ビール片手にスポーツやらバライティー番組を観ては近所迷惑になる事なぞ考えず大声で叫ぶし変な笑い方をする。それなのに何もしていない純が必ず隣の奥さんに文句を言われるのだ。


とばっちりもいいところだろ。一番最悪なのは酔っ払うと絡んできては説教に始まり怒るだけ怒った後最後には泣き崩れるというパターンだ。あいつの羽根はハリボテじゃないのかと何度思ったことか…。

よく聞く不思議な力なんて無さそうだし、出来る事と言ったら唯一羽根をタトゥーにする事だけ。羽根があるなら飛べるのかと思いきや「出来ない」とあっさり否定して…。

じゃあ何の為の羽根なんだ!?何の事なら出来るんだ!?これを詐欺と言わず何と言う?とんだぺ天使だよ、まったくあいつは!!!!

毎回感情的になってしまう自分自身にも腹が立つ。だからいつもあいつのペースに乗せられるんだ。


自己嫌悪に陥りつつ空き缶を拾い上げながら徐々に純の心の中はブルーからブラックに染まっていくのであった。


斉藤純、大学3年生の21歳。とんでもない奴に部屋に居着かれてしまった少々哀れな青年。密かに思いつく限りの手段で追い出そうと挑戦するも只今34戦34敗の全敗更新中である。残念ながら彼の闘いはまだまだ終わりそうにない。だからこそ斉藤青年は切に願うのであった。


…誰か俺の静かで平穏な日々を返してくれ!

と…。


そして案の定、朝早くから純は隣の奥さんにネチネチと文句を言われたのだった。

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