雨の公園

 中華ディナーをご馳走になりながら楽しくたくさんお話した次の朝。

 とっても楽しかったです。そして笑顔が本当に素敵でした。今度は誕生日ケーキを食べましょう、と貴俊さんからメールが来た。


 なかなか積極的だなと思いつつ、昨日はありがとうございました。私も楽しかったです。ケーキ食べるくらいならいいですよと返事をした。

 嫌な気持ちはなかった。単純に素敵な人だなと思った。それが男性としてなのか、夫とは違って普通に働いている人としてなのか、そこはまだ判断ができなかった。

 ケーキを食べるだけで済むのか?という疑問はあった。しかし必要以上に警戒したり期待したりするつもりはなかった。


 それから数日後、貴俊さんは私の平日休みに合わせて半休を取ってくれた。

 あらかじめ行きたいケーキ屋さんは決めてあり、その駅前で待ち合わせをした。その前に、近くの公園を散歩しようということになった。

 不意に雨が降ってきてしまい、彼が持っていた折りたたみ傘に一緒に入れてもらった。

 小ぶりな傘には、大人2人は身を寄せ合わないと入れない。私は彼の右側にいたので、彼の右手と私の左手が触れた。私は左手の薬指に指輪をしていた。


『あやちゃん。指輪…』

『…外す?』


 結婚指輪にしてはゴツいものだった。夫のデザインだ。外した左手は妙に軽く、指が自由に動いた。

 軽くなった左手はするりと貴俊さんの右手に納まった。手の大きい人だ。運がいいんだろうな。


 雨が強まって来たのでケーキ屋さんに行った。看板商品でもあるレモンパイ。以前から気になっていた。

 お店で食べることもできたが、人気店だし雨が降ってきたこともあり、席は空いていなかった。


 持って行く?

 ケーキを買って、私たちは雨宿りに行った。

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