誕生日
私の誕生日の2日前。仕事は休みで給料日だった。仕事のフリして家を出て、都内のショッピングモールを見に行った。
今やメル友になっていた彼には、今日は休みで誕生日が近いので買い物に行こうと思います。あと2日でゾロ目の33才になります、と伝えてあった。
お気に入りの洋服屋さんに行き、華やかな感じの洋服を一式購入して着替えた。グリーンのカットソーとピンクが基調の花柄のハーフパンツだ。夏っぽいではないか。気分が上がる。
黒〜い重い空気が澱んでいるような自宅。今の私は自宅にいる私とは別人だ。本来は綺麗な洋服が大好きだ。でも家では安くて地味な服を着ている。そうしないとうるさいから。
夕方、メールが来た。
お休みはいかがお過ごしですか。僕は今日はヒマで内勤をしています、と。
今ショッピングモールにいます。自分にプレゼントで買った綺麗な服に着替えてご機嫌です、と返事をした。
間もなく返事が来て、そこなら窓から見えています。18時には終わるのでよかったらそこで誕生日ディナーいかがですか?今日はクリーニングに出そうとしていたスーツなのでヨレっとしていますが、ときた。
まだメールのやりとりをはじめたばかりだ。っていうか、私はメールだけで十分なんだけど。断ることもできたが、実はお腹が空いていた。そして家に帰りたくない。
ここで食事をするだけならいいか。嫌なら何か理由を見つけて早めに帰らせてもらおう。
はい。お待ちしています。
私はグリーンのカットソーにピンクの花柄のハーフパンツです。スーツのお伴にはちょっとトロピカルかもしれませんが、すぐに見つけていただけるでしょう。
広場のベンチにいます、と返事をした。
約束の時間に、少しくたびれたグレーのスーツを着た、人の良さそうな笑顔が優しそうな男性が目の前に現れた。
怪しいものじゃないから安心して。あとで名刺渡すから、と言われた。
私より10センチくらい背が高くすらっとした印象の彼は好感度が高く、安心できそうな気がした。
ショッピングセンター内にあるちょっとリッチな中華料理やさんでご馳走になった。
エビチリと鶏のカシューナッツ炒め、青菜炒めを食べたと記憶している。
名刺をいただいたら、誰でも知っている大手企業の営業マンだった。話し方もハキハキしているし声のトーンも耳に心地良く、お話していて楽しかった。
お互いの仕事のこと、趣味のことなどを話した。私はずっと笑っていた。
彼は私より8歳年上だった。お兄さんみたいだ、と思った。
お互いをどう呼ぶか、についても話した。私は『あやちゃん』、彼は下の名前をそのまま『貴俊さん』と呼ぶことにしようと。
帰りも途中まで同じ電車に乗ったが、乗り換え駅で別れてそれぞれの家庭に帰っていった。
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