第3話 新山高校バスケットボール部
「はじめまして、彩峰明斗です。タイミングが遅くなりましたがよろしくお願いします」
体育館に俺の声が響いた。
「諸事情で入部が遅れてしまったが、才能ある1年生だ」
顧問の先生がフォローを入れてくれた。
すると一人の部員が俺を見て言った。
「明斗君…だったよね。確か中学時代に君の噂は聞いたことあるよ」
噂……?何だそれ聞いたことないぞ?
「中学生の県選抜推薦を辞退したって」
「確かにしましたけど…」
県外遠征とか、諸々にかかるお金を出してくれそうになかったから辞退したという話である。
なんとも悲しい話だよな…。
「まぁ、それはともかく新人歓迎の一環として1on1しようよ」
バスケ部のキャプテンでありエースの
「いいですけど、あまり期待はしないでくださいよ?」
そうして、新人対エースの勝負が始まった。
俺が先攻。ここで一発かましてやりたいところだ。
まずはボールをミートしながら、ピボットを踏む。ディフェンスとのズレを作るためなのと相手が詰めてきているためスティールされないためだ。
そして強いドリブルを1回つきロールターン。
ここで自分の前にはディフェンスはいない。
だからそのままドライブを仕掛けるが…
「ただでは抜かせんっ!!」
相手が半ば無理矢理コースに入ってきたが、俺は冷静にストップからのミドルジャンパーをゴールに沈めた。
それを見ていた部員たちが次々と口を開ける。
「う…上手い…」
「キレが良すぎる」
「あのストップえげつない…」
「な、なんでこんなウチみたいな弱小校にいるんだよ…強豪校にいるべき逸材だ…」
確かに、ここは弱小校であるが、別にバスケのために入ったわけじゃないからなーと俺は思ったが口にはしなかった。
次はディフェンスだ。
相手はフロントチェンジで左右にボールをつきながら前に出て時折レッグスルーでズレを作ってくる。
俺は小刻みにステップを踏み、フェイクに引っ掛かっても、体勢を戻せるように対処する。
そして、相手はインサイドアウトで大きくサイドステップをしそのままスリーポイントシュートを打つ体勢になった。
(くそ…チェックが間に合わない…)
急いで飛ぶが大きく出来てしまったズレに対応しきれずそのままゴールに沈められてしまった。
「何このレベルの高い戦いは…!?」
「一生忘れられん」
「動画撮った」
「「「「送ってくれ!!」」」」
何をしてるんだ?この人たちは?
「いやー負けました」
と言って先輩と握手を交わした。
「いや、技術ではお前が上だ、まさに試合に勝って勝負に負けた、だよ」
「そんな、完全にディフェンスでは負けていました、まるで対応できていなかった…」
「いや、そんなことはないよ、あのムーブはここにいる全員にやったことがあるけれど、皆チェックに飛ぶこともできないまま、俺にスリーを打たれている」
樋野先輩の言葉に部員たちが
「ぐはぁ」
と次々とダメージを受けた。
俺はその様子を見て
賑やかな人たちだなと、思った。
この環境でならバスケをしやすいだろう。
これからが楽しみだ。
❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇ ❇
その頃、密かにバスケ部の様子を見ていた人がいた。
「ふふっ、やっぱり明斗君のプレーは最高にかっこいい♡帰ったらこの動画見返そう♡」
バレにくくかつ最高のアングルで撮れる場所を知っていて良かったと改めて思う紗希であった。
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