第6話 不惑の不良たち






「あそこの三階だ…」


カマちゃんが指差すその部屋は、窓から明かりが漏れていた。

誰かいるのは間違いない。

ジェニーが車を降りるを見て、俺とカマちゃんも車を出た。

ジェニーは車に寄りかかってタバコに火をつけた。

俺もその横でタバコを咥えた。

そのタバコにジェニーは火をつけてくれた。

同じ様にカマちゃんにも…。。


「いよいよだな…」


「ああ」


「俺たちのやってる事って中途半端じゃないよな…」


「ああ…」


「俺よ…高校卒業する時に考えた事あるんだよな…。なんか不良やりてえって思っていながら、どうも不完全燃焼でよ…。中途半端な青春時代だったな…って」


カマちゃんは俯いて呟く様にそう言った。


それは俺も考えていた事だった。

学生時代に不良として何をしたのか…。

そんなモノは何一つ残って無かった。

喧嘩はイヤという程した。

けど意味のある喧嘩なんて、一度たりとも無かった気がした。


「俺も同じだよ…。あれからずっと俺の中で燻ってるモンがあってな…。まあ、それを今日、燃やしてしまおうって訳じゃないけどよ。何かスッキリしなかったんだよな…。その何かが今日わかるなら、それだけでも俺は価値があると思ってる」


ジェニーは俺たちを見て微笑んだ。


「そうだよな…。不良で何かを残すなんて、あり得ないのかもしれない。だけどな、俺はお前らと、こうやって今ここに居る事自体に意味を感じている。ずっとモヤモヤしてた、あの時残して来たモノを三人で取りに行こうや…」


俺はジェニーの上腕を軽く拳で殴った。

そしてカマちゃんにも同じ様にした。


「さあ、そろそろ行くか…」


ジェニーはタバコを地面に捨てて靴の先で踏んだ。

俺もカマちゃんもタバコを捨てた。


三人はゆっくりと、その団地の階段を上がって行った。






ジェニーがインターホンを押した。


「誰だ…」


中から声がする。


「あの、今度、上の階に引っ越してくる者です」


ジェニーは声色を変えて言った。


「あ…別に挨拶なんて良いよ。ここは事務所だから、普段居ないから」


「いえ…そういう訳には…。つまらないモノですが、どうぞ皆様で…」


「ちっ…わかったよ」


ロックの外れる音がした。

その瞬間、ジェニーは勢いよくドアを引っ張った。

それと同時に階段の踊り場に置いてあった消火器をカマちゃんは部屋の中にぶちまけた。


「何だ、お前ら」


ヤクザは必死に玄関で暴れる。

消火器をぶちまけ終わったカマちゃんは、その消火器をそのヤクザに投げつけた。


「遥。遥」


ジェニーはその部屋に踏み込んだ。


外は古びた団地だが、中は金をかけてリフォームしてあった。

赤いベルベットが敷き詰めてあり、高級なソファが置いてあった。


ジェニーはそのソファを見て固まった。


そのソファに裸同然の遥がいた。

しかしそれで固まったのではない。

その遥の横には西田が座っていたのだった。


「西田…」


「何だ、お前…。岸田社長んとこの整備士じゃねえか…」


「あーあ…何やってくれてるんだよ…」


玄関を開けたヤクザは真っ白になった自分の粉を払っていた。


俺も西田と目が合った。


「あれ…お前、確か昼間の…」


西田はゆっくりと立ち上がった。


「貴様ら、何を企んでるんだ…」


「遥を返せ…」


西田はゆっくりと部屋を歩き、部屋の隅にあった日本刀を手にした。


「馬鹿を言うな…この女は俺が大枚叩いて買い取った女だ。これから稼いでもらわんといかんのだ…」


西田は日本刀をゆっくりと鞘から抜いた。

天井は低い。

日本刀を振り回すスペースは無かった。


「劉。この女を見とけ。俺はコイツらを始末する」


西田は剣先を俺たちの方へ向けた。

劉と言われた玄関を開けた男は遥の傍に立った。


「事務所にノコノコやって来るとはな…。お前らも大した度胸だぜ。それだけは褒めてやる。だが…それをあの世で後悔しろ…」


西田はジェニーに斬りかかった。

間一髪でジェニーは柱の陰に隠れる。


「ジェニー。代われ。コイツは俺が相手する。お前は遥さんを…」


ジェニーの耳元でカマちゃんは囁くように言った。

ジェニーは頷いて、少し下がった。


「来い…俺が相手だ…」


カマちゃんは岸田の倉庫から持ってきた大きなスパナを構えた。


「来いよ、カマ切り野郎…。俺が相手だ。見えてるか…」


西田はギョロっとした目を見開いた。

天井に当たらない様に日本刀を振り下ろした。

カマちゃんはその日本刀をかわす。

西田の日本刀は細い柱に食い込んだ。

すかさずその日本刀の上に大きなスパナをカマちゃんは振り下ろした。

日本刀は根元から折れて刃は床に突き刺さった。


「何だ、マナクラかよ…」


カマちゃんは折れた日本刀を見て言った。


西田も慌てふためく。

その西田にカマちゃんは飛び蹴りした。

そのタイミングと一緒に劉と呼ばれた男にジェニーは蹴りを放った。

そして遥の腕を掴み一気に玄関を走り出た。


俺たちは階段を飛び降りる様に駆け下りた。


西田と劉はその後を追って出て来た。

下まで降りて、ジェニーは遥を車に押し込む様に乗せた。


「何だ、お前ら…その女とどういう関係なんだ。そんなシャブ中のヤリマン女、なんでそこまでして欲しいんだ。あ…」


「お前に関係ないよ」


ジェニーは車のドアを閉めた。


「まあいい。女はお前らを殺ってから取り戻すわ…」


西田がそう言うと車のヘッドライトが一気に点いた。

俺たちは目が眩み、周囲が見えなかった。


そしてその車からぞろぞろと若い男たちが降りて来た。


「ヤクザ相手にゴロ弾いてどうすんだよ」


西田はイヤらしく笑った。


俺たちは周囲に集まる若い男の数を見た。


「ざっと二十人だな…」


カマちゃんが言う。

俺たちは背中を合わせて三人で周囲を警戒した。


ジェニーは大きく息を吐いた。


「仕方ない…やるか…」


その声はすべてをふっ切った様だった。


「そうだな。それしか助かる道はなさそうだし…」


俺は肩の力が抜けた。


「まあ、やってやれない訳じゃないだろ…」


カマちゃんも笑っていた。


「喧嘩と違ってルールはねえぞ。アイツら本気で殺しに来るからな…」


「わかってるよ…ジェニーこそ、最後の詰めの甘さ、気を付けろよ」


「シラケンも、頭割られて泣くんじゃないぞ」


カマちゃんはスパナを構えた。


「じゃ、行くぞ」


ジェニーのその声を合図に、俺たちは一斉にヤクザの集団に向かって行った。


ジェニーはあの頃の様に、得物をかわして素手で片っ端からヤクザを倒して行った。

カマちゃんは手に持ったスパナでヤクザの足元を狙っていた。

あのスパナが足にクリーンヒットすると骨も折れかねない。

俺はヤクザが持っていた木刀を取り上げ、ひたすらヤクザの拳を狙った。

何も変わらない俺たちは、その瞬間を多分楽しんでいただろう。

俺はジェニーとカマちゃんを見た。

二人の顔も楽しそうに笑っていた。


散々ヤクザの集団を倒したが、やはりそこはただの喧嘩とは違っていた。

約半数はまだ得物を構えて俺たちを狙っていた。


俺たちは体力の限界だった。

肩で息を吐いて、再び背中合わせに立ち警戒していた。


「おいおい…息…切れすぎじゃ…ねえ…のか…」


俺はジェニーに言った。


「バカ…言うな…お前…程じゃ…ねえよ…」


「やっぱ…ヤクザ二十人は…不良…二十人とは…違うか…」


カマちゃんは手に持ったスパナを遠くに放り投げた。


「重いんだよ…こんなもん…」


西田は上着を脱ぐと、鍛えられた身体を晒した。


「俺が仕留めてやる」


西田は笑いながらヤクザの集団を掻き分けて前に出て来た。


「そりゃいいや…西田さんは空手の達人だからな…。お前らホントに死んじまうぞ…」


劉はそう言って笑った。


「空手…。達人…」


ジェニーは呟いた。


「なんか昔、そんなヤツいたな」


「ああ…何だっけ…。たしか名倉だったかな」


俺は西田を睨んだ。


「達人って言うヤツほど大した事ねえんだよな…。名倉、ジェニーの一撃でお陀仏だったもんな…」


「そうか…アイツな…。だったらコイツも楽勝かもな…」


ジェニーはそう言った。


どれ程に西田が強いのかわからなかった。


「今のお前なら、ゴジラにも勝てるんじゃないか…」


俺は無責任な言葉でジェニーを励ますと、ジェニーは上着を脱いだ。


「アイツは俺に任せろ…」


そう言うと前に出た。


「アイツ、西田さんとやり合うみたいだぜ」


ヤクザの集団は笑っていた。


「貴様…つくづく馬鹿だな…。あんまりヤクザ舐めるなよ…」


西田は目をギョロつかせながら言った。


「うるせえよ。そっちこそカタギ舐めんじゃねえよ」


ジェニーはつま先をジリジリと西田の方へ進めた。


「お前…ジェニーが空手って言葉に敏感なの…なんでか知ってるか」


カマちゃんは小声で俺に言った。


「知らない…」


「なんか小さい頃に空手習いたいって親に言ったら、月謝が高いからダメだって言われて、諦めたそうなんだよ。仲良かったダチは空手習ってて、絶対ソイツに負けたくなかったんだと…」


そんな経緯がある事は初耳だった。


西田とジェニーは睨み合ったまま動かなかった。


「俺の空手は人を殺せる空手だぜ…」


西田はニヤリと笑った。


「当たらなきゃ死にはしねえだろ」


ジェニーも構えた。


「撃って来いよ…」


次の瞬間、西田はジェニーに上段蹴りを放った。

その瞬間、ジェニーは後ろに引いた。


「当たらないね…。足短いんじゃないのか…」


ジェニーは首を鳴らした。


「そんな事言えるのも後少しだ。次は決める。お前の顎の骨、へし折ってやる」


西田は構えを直した。


「まず当ててみろ…御託はそこからだ」


ジェニーの目付きはあの頃と同じだった。






その日、俺はジェニーとカマちゃんに連れられて病院へ来た。

流石に頭を金属バッドで殴られた事もあり、精密検査が必要となった。

幸い頭の中には異常はなかったが、七針縫う事になった。


包帯を頭に巻いて処置室を出て来た俺に、


「すまんな…守ってやれなくてよ…」


と、ジェニーは頭を下げた。


「俺も…悪い…」


カマちゃんも同じ様に…。


「いや…俺に隙があったからだよ」


俺はそう言って二人に微笑んだ。


「これで頭悪くなったら二人の事、一生恨んでやるからな」


「少しくらい頭悪くなった方が良いかもな」


「そうだよ。学年トップクラスの不良なんて聞いた事ねえし」


「うるせえよ…」


俺は二人に挟まれて歩いた。

いつもそうだった。

俺の両側にはジェニーとカマちゃんがいた。

俺たちを狙っているヤツは、三人の中で俺が一番弱い事を知っていた。

だから一番初めに狙われるのはいつも俺だった。


俺は元々喧嘩には向いてない性格なのだろう。

余り人を傷付けるのが好きじゃない。

そんな話をジェニーにした事があった。

するとジェニーは、


「だったらさ、最小限の攻撃で、自分を守る事を極めたらいいんじゃないか」


そう言った。


俺はその言葉に考えさせられた。

最小限の攻撃で自分を守る。

それが拳を潰す事だった。


喧嘩ではどうしても拳が使えないと戦えない。

じゃあその拳を使えなくしてしまえば、もう攻撃は出来ないだろう。

それと、得物を振り回すヤツらがいても支点となる拳はそう大きくは動かないのだ。


俺はそう考えて、拳を狙って警棒を叩きつける練習をした。

初めは蛍光灯の紐に五円玉をぶら下げて、それを確実に叩く練習。

その次はバッティングセンターで飛んでくる球をバッドで真下に叩きつける練習。

そんな練習を重ねて、三人の中で誰よりも拳を狙うのが上手くなった。


「それ極めたら、無駄な力使う必要無いよな…シラケンらしい攻撃だよな」


ジェニーはそう言って笑っていた。






西田はジェニーを睨んだまま動かなかった。

大抵の人間はヤクザ特有のこの睨みで縮み上がってしまうだろう。

しかしジェニーは、今まで数えきれない程の喧嘩を繰り返して来ているのだ。

西田如きの睨みでは通用しない。


「ほら…来いよ。びびってんのか…」


西田はジェニーを挑発した。


ジェニーは西田の懐に入れずにいた。

隙がないのだ。

流石は空手の達人を名乗るだけの事はある。


ジェニーはそう考えて笑った。


「アンタ、強えんだろうな…それはわかったよ。だが…それは空手ってスポーツの世界の話だ。実践はそうはいかないだろう。空手馬鹿さんよ…」


西田はジェニーのその言葉を合図に踏み込んだ。

西田の拳はジェニーを捕えた。

鈍い音が周囲に響き、ジェニーの汗と血が飛び散った。


ジェニーは素早く間合いを置く。


「ジェニー…」


俺は思わず声をかけた。

ジェニーは口の中が切れて歯を真っ赤にしていた。


「西田のパンチ…半端じゃないかもな…」


そんな事はわかっている。

西田はヤクザだ。

腕も立つのだろう。


ジェニーは地面に唾を吐く様に血を吐いていた。


「どうした。泣いて謝るか。許さねえけどな」


西田が言うと後ろに控えるヤクザたちは笑った。


「いや…この程度か…一発で気絶する程の力あるかと思ったが…やっぱ耄碌したくねえな…」


ジェニーはガードを外し、西田の前に立った。


「来いよ。今度は俺が本当の力ってのを見せてやるよ」


西田はジェニーの前で、怒りで顔を真っ赤にした。

ノーガードのジェニーに西田は勢いよく拳を突き出した。

ジェニーはその拳を狙うかの様に自分の拳を叩きつけた。

西田の拳は横にはじかれた。

そのままジェニーは西田の顔面に肘を叩きつける。

西田はそのまま倒れ、その上にジェニーは追いかぶさるようにして一緒に倒れて行った。

地面に頭を強打し、その上に顔面に肘を落とされた西田は完全に気を失っていた。


「ジェニー…」


俺は拳を狙ったジェニーに自分の影を見た。


血が混じる泡を吹いて西田は倒れていた。


「貴様ら…。あんまり舐めてると…」


西田の後ろに居た劉はそう言うと上着のポケットに隠した拳銃を取り出した。

ジェニーは立ち上がりゆっくりと劉を見た。


「撃ってみろ…。撃ってみろよ…チンピラ」


ジェニーの目は既に普通では無かった。

西田を倒した事で完全に常軌を逸していた。

このままでは逆上した劉は、本当にジェニーを撃つかもしれない…。


「ジェニー…」


俺はジェニーを庇おうと歩き出した。


その時だった。


「そこまでだ…」


劉はその声の方を見た。


「何だ、お前…」


「俺は興林会の岩瀬だ」


その男はヘッドライトの中に浮かび上がっていた。


「岩瀬…。興林会…」


劉はそう呟いて我に返った。


次の瞬間、劉はその場に土下座した。


「どチンピラでも興林会の岩瀬の名前は知っているようだな…」


岩瀬は数人の男を引き連れて、歩いて来た。


「岩瀬さん…」


ジェニーは頭を下げた。


岩瀬は倒れている西田を見た。


「お前がやったのか…」


ジェニーも西田を見下ろし、小さく頷いた。


「ヤクザもんの処分はヤクザに任せろ…」


「はい…」


ジェニーはそう言って頭を下げた。


「お前が劉か…」


土下座している劉に岩瀬は声をかけた。


「は…はい」


岩瀬はその劉の顔面を蹴り上げた。


劉は後ろにひっくり返りそうになるが、再び土下座して頭を下げた。


「こんなところに隠れていたとはな…新生会なんて名乗りおって…相当好き勝手やってくれてるらしいじゃないか…」


「いえ…そんな…」


劉の前には拳銃が置いてあった。

岩瀬はその拳銃を手にした。


「ガキのおもちゃじゃねえんだぞ…。こんなモンまで持ってるとはな…興林会も舐められたモンだ…」


岩瀬はその拳銃の銃口を劉の口の中にねじ込んだ。


劉は涙を流して顔を引き攣らせていた。


「試しに弾いてみるか…」


劉は小さく震えながら首を横に振った。


俺たちはその光景をただ黙って見ていた。

ヤクザの世界にもルールはある。

そのルールの中でどう生きるか。

それが極道の生きる道なのだろう。


岩瀬は劉の額を踵で蹴った。

劉は後ろにひっくり返り、頭を強打して気を失った。


「ちっ…骨の無いどチンピラだな…」


岩瀬は拳銃を傍に居た男に渡した。


そして今度は俺たちの方へ歩いて来た。

西田とは違い大物の貫録もあった。


「西田には手を焼いていたんだ。尻尾を出すまで泳がせておこうと思ったんだが、なかなか尻尾を出さないヤツでな。いつの間にか、こんな組織まで作ってやがった…。礼を言うよ」


「いえ…」


俺たちは岩瀬に頭を下げた。


「お前たちはコイツらの事は一切知らん。今日、此処には来なかった。それで良いな…」


俺たちは無言のまま頷いた。


岩瀬は微笑んで、俺たちに背中を向けた。


「しかしカタギさんにも気合いの入ったヤツらは居るんだな…」


そう呟いて歩き出した。


岩瀬は黒いベンツに乗り込んだ。

西田とその構成員は後からやって来たトラックの荷台に荷物の様に放り込まれ連れて行かれた。


俺たちはその光景を、ただ黙ってじっと見ていただけだった。







「ホンモノは迫力あるな…」


カマちゃんはそう言ってタバコを咥えた。

そして俺とジェニーの前にタバコを差し出した。


俺たちもカマちゃんのタバコを一本ずつ取り、火をつけた。


三人で美味そうに煙を吐いた。


「遥さんも戻ったし…これで終わったな…」


カマちゃんは車の後部座席を覗いた。


「いや…まだ残っている」


俺は助手席に乗り込んだ。







「ねえ…薬ちょうだい…お願い。何でも言う事聞くから…お願い…」


車の後部座席で遥はジェニーに迫っていた。

もう既にジェニーの事も誰だかわからない様子だった。


「お前うるせえよ…。薬、薬って…」


ジェニーが遥の鳩尾に一発喰らわせると、遥は気を失った。


カマちゃんはハンドルを握ったまま、その光景をミラーで見ていた。


「おいおい。無茶するなよ。お前がやると死ぬかもしれんぞ」


「うるさいよ。コイツの薬抜きしねえとな…」


俺はそんなやり取りを聞きながら岸田の息子にメールを入れた。


「今からそっちへ行く。商品を持って出れるか」


「何処へ行けば良いですか」


「近くのスーパーの駐車場で待ってる」


「了解しました」


これで岸田の息子は何の疑いも無く、シャブを持ってやって来るだろう。


「カマちゃん、その先に二十四時間営業のスーパーあったろ…あそこの駐車場に行ってくれ…」


俺はカマちゃんに言った。


「了解」


カマちゃんは二本の指をこめかみに出して返事をした。

俺たちが昔から使ってた挨拶だった。

俺はそれを見て微笑んだ。






俺たちは駐車場で岸田の息子を待った。

岸田の息子は俺たちがいるなんて事は思っていない。

城見が待っていると思ってやって来る。

もしかすると、岸田も一緒にやって来るかもしれない。


ジェニーは自分の上着を遥に着せた。

俺たちが目のやり場に困る様な格好だった。


「で…岸田の息子どうするんだよ…」


カマちゃんはスーパーに入って来る車を、ハンドルを握ったまま確認していた。


「城見と同じ様に拉致るしかないな…」


俺はタバコに火をつけた。

今日、何本目のタバコか既にわからなかった。


「それよりも息子がシャブを持って来るかどうかだな。息子は城見を信用している。しかしオヤジはどうなのか…」


「なるほど…。岸田自身が城見を信用してないかもしれないって事か」


ジェニーは後部座席からそう言った。


「あの岸田は、ああ見えてかなり小心者だからな。その可能性も多いにあるぞ…」


「おい…あれか…」


カマちゃんが指さした。

駐車場に白いベンツが入って来た。


「アレだな…」


ジェニーは身を乗り出して見ていた。


「間違いない…」


「カマちゃん。頼んだよ…。あの車ごと倉庫へ移動だ」


カマちゃんはまた、こめかみに指を二本当てて、


「了解」


そう言うと車を出て行った。


俺は運転席に移った。


岸田の息子の乗った白いベンツを俺は見た。


跳ねる様にそのベンツへ近寄るカマちゃん。


運転席から岸田の息子が降りて来た。


一人か…シャブは…。


俺は息を飲んだ。


カマちゃんは背後から岸田の息子の首を腕で絞めて落とした。

岸田の息子は気を失ってその場に崩れた。

俺はそれを見て、車を白いベンツの近くに移動した。


俺とジェニーも車から降りて、岸田の息子をベンツのトランクに放り込んだ。


「腕は落ちてないな…」


カマちゃんは自慢げな表情で言う。


「流石だな」


ジェニーはカマちゃんの肩を叩いた。


俺たちは笑った。

いとも簡単に岸田の息子を拉致する事に成功した。


「じゃあ戻ろうか。後はオヤジだけだ」


俺はジェニーの車に乗り込んだ。

それを見てカマちゃんもベンツの運転席に乗った。






ロープで手足を拘束され、岸田の息子は床に転がっていた。


「てめえら、こんな事してタダで済むと思ってんのか」


目を覚ました岸田の息子は俺たちを睨んでいた。


「こっちには新生会が付いてるんだぞ」


「新生会か…怖いな。どうしよう…」


カマちゃんは岸田の息子の前にしゃがみ込んだ。


「何とか許してもらえるように言ってくれないかな…」


「てめえ、俺をおちょくってんのか」


威勢だけは良かった。

流石は少年院まで行った事はある。

俺は岸田の息子を見て面白がった。


「なあ、ジェニー。俺たちも若い頃はあんな風だったかもしれんな」


俺はジェニーに言った。


ジェニーも同じ様に笑っていた。


「そうだな…。大人が見たらあんな風に馬鹿に映ったかもしれんな」


俺とカマちゃんはベンツの中にあった封筒からシャブを取り出して袋を数えていた。

一グラム入りのシャブがちょうど五百。

きっちり五百グラムある。

末端価格で千五百万といったところだ。


「このシャブ…どうするんだ」


ジェニーはテーブルの上のシャブを封筒に戻した。


「持ってるだけでヤバいだろう…」


「ああ、これは警察行きだな…」


俺はそう言って笑った。


いよいよ最後の仕事だ。

岸田自身を炙り出す。


俺は壁に下がっていた、数年前のカレンダーを剥がし、テーブルの上に裏を向けて広げた。


「今回の物語のラストはこうだ…」


俺はカレンダーの裏にボールペンで文字を書いて行った。

事実は小説より奇なりとは良く言ったモンだ。

俺は何時になく進むペンに驚いた。


俺はエロ小説以外も書けるじゃないか…。


ジェニーとカマちゃんが見ている前で俺はどんどん書いて行った。

それが俺には快感だった。

スラスラ出て来るストーリー、クライマックスに相応しいセリフ。

その通りに俺たちが演じ切れればこの勝負は俺たちの勝ちだ。

俺は最後のシナリオを書き終えた。


「流石は作家先生…」


カマちゃんは軽く拍手した。


「いや…大したモンだよ」


ジェニーも俺を見ながら言った。


「このエンディングは最初から考えていたのか」


「途中からな…」


俺はボールペンをテーブルの上に投げ出した。






俺は岸田の息子の携帯電話を握っていた。


「かけるぞ…」


ジェニーとカマちゃんはそれに頷いた。


ソファには縛られ、猿ぐつわを噛まされた岸田の息子と城見がいた。


俺は岸田に電話をかけた。

コール音が鳴り出すとジェニーとカマちゃんに目配せした。


「調子に乗ってんじゃねえぞ、こら」


ジェニーは大声を上げて城見と岸田の息子の座るソファを蹴り上げた。

激しい音と、城見と岸田の息子の情けない声が響く。

同じ様にカマちゃんも、


「てめえら新生会、舐めてるのか」


などと意味も無く声を上げた。

俺はそれを見て笑った。


「何だ。こんな時間に…」


不機嫌そうな声で岸田が出た。


「岸田か…」


俺は思い切り声を作って言った。


「何だ…一平じゃないのか…」


岸田は寝ていた様だった。


「新生会の黒木だ」


「はい。何ですか」


岸田もその言葉で目を覚ましたらしい。


「この携帯はうちの息子のモノですね…」


「てめえら死にたいのか」


ジェニーの威勢のいい声とモノが壊れる音が響く。


「何だ…一体どうしたんだ…」


岸田は少し慌てていた。


「アンタの息子と城見とかいう男。二人でシャブ持って逃げようとしたんだよ…」


俺は精一杯ドズの効いた声を出す。

人はテンパると聞いた声もわからなくなるのだろう。


「何だって…」


岸田の声は震えていた。


「息子は…息子は何処に…」


俺は大きく息を吐いた。


「こんなバカ息子でも心配か…。今、少しお仕置きをしてるところだ。殺しはしない。アンタ次第でな…」


「多分、そこの城見に唆されたんだろう。そんな事を思い付く程うちの一平は頭が良くない…」


実も蓋も無い話だ。

確かにこの岸田の息子にはそんな絵は描けないだろう。

そして城見にもシャブを持って逃げる程の勇気はない。


「そんな事知るか…。現にお前の息子と城見はシャブを持って逃げようとした。この落とし前、どう付けてくれるんだ。岸田さんよ…」


これは立派な犯罪だった。

しかし岸田には弱みもある。

警察に届ける事など出来ないだろう。


「どうすればいいんだ。西田さんは何と言ってるんだ」


岸田の声は少し大きくなり、慌てているのが良くわかった。


「西田はこの二人を殺せと言っている。出来れば俺はそうしたくない」


我ながら大した演技力だと思った。

小説家がダメなら役者にでもなろうか…そんな事を考えた。

その間も俺の後ろでは俺同様に演技するジェニーとカマちゃんがいた。

二人は額に汗を浮かべて名演技を続けていた。


「わかった…わかったから、息子を傷付けないでくれ…」


岸田の声は震えていた。


「金なら出す。頼む…息子を、息子を助けてやってくれ…」


「金の問題じゃないんだ…まだわからねえのか…。俺たちの世界ではな、ちゃんと筋を通してくれないと示しが付かないんだよ。それくらいはわかるだろう…。岸田さんよ」


「わ、わ、わかった…。いくらだ。いくら準備すればいい」


俺は金額までは考えてなかった…。

テーブルの上のシャブが目に付いた。


「そうだな…。じゃあ、このシャブと同額ではどうだ。一千五百万。これで解放してやる」


「一千五百万…そんな…」


「馬鹿息子がゲロしてくれたぜ。オヤジはそのくらいの額なら持ってるってな…」


俺は少し鼻で笑って見せた。


「なんならこの二人、コンクリート漬けにして沈めても良いんだぜ…」


「わかった。一千五百万だな…」


岸田は息を吐き出す様にそう言った。


「何処に持って行けばいい…」


人の命二人分と引き換えだ。

一千五百万なら安いモノだろう。

俺はジェニーとカマちゃんにオーケーサインを出した。

そのサインを見て二人の声は更に大きくなった。


「こら。まだくたばるんじゃないぞ。起きろ、こら」


そう言うとカマちゃんは城見の足元を蹴り上げた。

しかし、二人には一発も当てて無かった。


「一時間後に国道沿いの家電屋の駐車場だ。わかるな」


「わかった…。一時間後だな…」


「遅れたらお前の息子から殺す…。いいな」


俺は電話を切った。


俺とジェニーとカマちゃんの三人は声を殺して笑った。


岸田が警察に通報する事はまず無い。

ジェニーの様に興林会へ助けを求める事も無いだろう。

シャブを売っていたという引け目がある。

岸田は一人で来るしかないのだ。


俺はテーブルに置いたタバコを取り、火をつけた。






高校の時に一度、暴走族に入ってたヤツと喧嘩になった事があった。

ハンバーガーショップで俺たちはいつもの様にしゃべってると、一人の男が入って来た。


「岡根ってのはお前か」


その男は入って来るなりいきなりジェニーの事を呼んだ。


「だったらどうした」


ジェニーはその場に立ち上がった。


「お前、調子に乗ってるらしいな…」


「お前、どうでも良いけど歯磨けよ…。口、臭せえんだよ」


ジェニーいきなりその男を殴った。

血の気の多いジェニーは、一旦怒ると止める事は不可能に近かった。

男は床に倒れテーブルの脚で頭を打った。

周囲の客は叫び声を上げて店を出て行く。


その男はゆっくりと立ち上がり、またフラフラとジェニーに近付いて来た。


「やるじゃないか…」


今度はその男がジェニーを殴り付ける。

しかしジェニーはその拳を手で止めた。


「お客さん…お店の中じゃ迷惑になるんで、外に出ましょうか…」


ジェニーは飲みかけのコーラのカップを持ってゆっくりと店を出て行った。

その日は生憎の雨だった。

バーガーショップの駐車場にジェニーとその男は立っていた。

俺とカマちゃんはビニール傘を差してその二人を遠巻きに見ていた。


「雨の中、良くやるね…」


カマちゃんは半ば呆れていた。


売られた喧嘩は買う。


これはジェニーがしっかり守って来た事だった。

無闇に喧嘩は売らない。

しかし売られた喧嘩は全部買う。


「お前と一緒に居たら命がいくつあっても足らん」


俺は本気でそう言った事があった。

するとジェニーは、


「お前の命は俺が死んでも守ってやる。不良やりてえなんて馬鹿な俺の夢に付き合ってくれたんだからな…」


そう言っていた。


暴走族の男は馬場と言い、この辺りでは有名な男だった。


「この雨の中、ホントにやるのか…あの二人…。風邪ひいちまうぞ…」


カマちゃんはそう言ってシェイクのストローを、音を立てて吸っていた。


「ジェニーがやるって言ったらやるからな」


俺も呆れて傘を差したまま、その場にしゃがみ込んだ。


「アイツの目指してた不良ってこんな感じだったのかな…」


「さあな…。第一あの頃、不良って何かさえわかって無かったんじゃないのか…」


カマちゃんは空になったカップを地面に置いた。


小学生の時、三人で不良をやってみようと決めた日、不良って何なのかさえわかっていなかった。

それでも三人でやると決めた以上はやる。

俺はそう信じていた。

中学で俺たちは不良を気取り出した。

しかしその頃も不良が何をすればいいのかわからなかった。

たまたま喧嘩が強かったジェニー。

妙にすばしっこく動くカマちゃん。

その二人に支えられ俺も不良ってモノをやっていた。

毎日が楽しかった。

俺自身の喧嘩は勝ち負けじゃ無く、二人と一緒に暴れる事だった。

いつも大暴れするジェニーとカマちゃん。

俺は単なる、そのサポート役でしかなかった。


ただ、こうやってたまにジェニーが受けるタイマン勝負。

これは俺もカマちゃんも静観するしかなく、しかし、ただの一度も俺たちの目の前でジェニーが負けた事はない。


その日も勝負は一瞬でついた。


ジェニーに殴りかかる暴走族の馬場をジェニーはかわし、カウンターを一発。

それで決着はついた。


「終わったな…」


俺は立ち上がった。

カマちゃんもジェニーの傘を持って歩き出した。


「ジェニー。お疲れさん」


「疲れてねえよ」


ジェニーは笑っていた。

俺たちは馬場に背を向けて歩き出した。

その時、


「岡根…死ねや…」


馬場はナイフを出してジェニーに突っ込んで来た。

俺は咄嗟に傘の先で馬場の手を突いた。


傘の先は馬場の腕に突き刺さった。

馬場のナイフはジェニーの制服を切っただけだった。


「うわぁ…」


傘が腕に刺さり馬場は驚いていた。

そこにすかさずカマちゃんは飛び蹴りを決めた。

その蹴りは馬場の顔面にヒットして、馬場はひっくり返り、そのまま雨の中、意識を失った。


三人はわかっていた。

俺たちの誰にも負けない強さは三人の連携プレイにあったのだ。

誰が欠けてもこの強さは出せない。

それがわかっていたのだ。






俺はそんな事を考えながら、車の窓から流れる景色を見ていた。

遥と入れ替えて城見と岸田の息子、一平をジェニーの車に乗せた。

俺はその車を運転し、ジェニーは後部座席で城見と一平に安いバーボンを瓶ごと飲ませていた。


遥には倉庫にあった作業着を着せ、ソファで寝かせた。

カマちゃんは俺たちの後ろを一平の白いベンツで付いて来ていた。


「おい。コイツら大丈夫かな…」


ジェニーは無理矢理バーボンを飲ませた城見と一平を見て言った。


「ああ…。それくらいじゃ死にはしないだろう」


俺は運転しながら再び窓を見た。


城見も一平も何か言っているが、既に泥酔状態で何を言っているのか聞き取る事も出来なかった。


これで岸田を捕まえれば全部終わる。

そうなるとまた三人は会う事も無くなるのか…。

そう考えると寂しかった。

城見と一平の手足はガムテープで巻いてあった。

そして声にならない声を漏らしていた。


車を家電量販店の駐車場に入れた。

そこは隣に二十四時間営業のレンタル店あり、駐車場にもそれなりに車は停まっていた。

俺はその駐車場の奥の方へ車を停めた。


打合せ通りにカマちゃんは少し離れたところに、一平の白いベンツを停めた。


安いバーボンで前後不覚の二人を車に残し、俺とジェニーは車を降りた。

カマちゃんも車を降りてこっちへ走って来た。

岸田との約束時間まではまだ二十分はあった。

カマちゃんはポケットから缶コーヒーを出し、俺たちに投げると、俺たちはそれを受け取って飲んだ。


「お前…仕事無くなるけど、良いのか…」


俺はジェニーに訊いた。


「どうせ辞めてくれって言われてたんだ。同じ事だ…」


ジェニーはタバコに火をつけた。


「シャブ売ってるヤツの下でなんか働けるかよ…」


「そうだよな…。まあ、お前なら何処でもやって行けるだろうしな…」


カマちゃんはそう言ってジェニーの胸を軽く殴った。


「でもよ…久々にお前らと暴れたけど、楽しかったぜ。俺は…」


ジェニーは暗い空に煙を吐いた。


「ああ…。俺もだ。ヤクザ相手はドキドキしたけどな…」


俺もタバコの煙を、上を向いて吐いた。


「俺もだ。から揚げ揚げてるだけの日々には飽き飽きしてたんだよ。今回は完全燃焼させてもらった気分だ」


カマちゃんもそう言って笑った。


「西田はどうなってしまうんだろうな…」


カマちゃんのその言葉には俺もジェニーも答えなかった。

ヤクザはヤクザのやり方が有る筈だ。

俺たちが知らない方が良い事もある。


じゃあカタギにはカタギのやり方がある。

俺たちは俺たちなりのケリの付け方をするしかない。


「じゃあ、向こうで待とうか…」


俺たちはベンツの方へ歩き出した。


ベンツの傍に辿り着いた頃、岸田のベンツがゆっくりとやって来た。


「来たな…」


俺はカマちゃんに目配せした。

カマちゃんも頷いて、岸田のベンツの方へ歩き出した。


「一体どういう事だ」


岸田は大声で怒鳴りながら車を降りて来た。


「岡根…説明してもらおうか」


そこに現れた岸田は、既に中古車屋の社長の顔ではなかった。

さっき連れて行かれた西田とさほど変わらない形相だった。


ジェニーはゆっくりと岸田の前にやって来た。


「じゃあ、アンタがやってた事も説明してもらおうじゃないか…。どう言う事なんだ」


岸田は、


「何で、お前みたいなヤツに、そんな事言わなきゃいけないんだ。馬鹿も休み休み言え…」


怒鳴る様にそう言った。


「何でアンタがシャブなんて売ってるんだよ。アンタ、車屋だろうが…」


ジェニーは岸田の腕を掴んで後ろに捩じ上げた。

そしてシャツの腕をめくった。

そこにも注射の跡がくっきりと残っていた。


「コイツもビンゴだ…」


ジェニーは大声でそう言った。

俺はその声に車の陰から出て行った。


「痛い、痛い…放せ」


岸田は地面に膝を突いた。

そして顔を上げて俺を見た。


「昼間はどうも…」


「お前は小説家…。おかしいと思ったんだよ」


岸田はジェニーに捩じ上げられた腕を気にしながら、ゆっくりと立ち上がった。


「良いか、俺達には新生会ってヤクザが付いてるんだ。電話一本でいつでも来てくれる。お前たち殺されるぞ」                                  


「新生会が付いている事なんて知ってるさ。電話したろ…」


俺は岸田に言った。


「新生会なんて元々存在しねえんだよ。シャブばら撒いて金儲けしてる様なヤクザ…。いまどき流行らねえよ」


俺たちは笑った。


「他にもヤクザの知り合いは居る。待ってろ…」


岸田はそう言うと携帯電話を取り出しで電話をかけた。


「あ、もしもし、こんな時間にすみません。岩瀬さん、実はちょっと困ったヤツらがおりまして…。は、いや…ちょっと待って下さい。いえいえ…私はそんな…。もしもし…岩瀬さん…」


岸田は慌てた。

興林会の岩瀬は、岸田の話を聞かなかったのだろう。


「興林会の岩瀬さんはなんて言ってましたか…。岸田社長…」


ジェニーは岸田の腹に拳を食い込ませると、岸田は地面に崩れた…。








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