第13話:はじめまして杜守・・・私グッドナイト・キャット。

彩葉いろはが去って、つぎの日の昼ごろ博士から弟に連絡があった。


「あ、皆藤かいとう君か・・・」

彩葉いろはがまだ研究上に戻って来てないんだよ・・・」


「どうやら君とは別の場所にいるようなんだが・・・」


「どういうことですか?、夕べ黒塗りの車が彩葉を迎えにきましたよ」


「たしかに迎えにはやったが・・・その車も戻ってきてるかどうか分からん」

「考えられるとすれば、もしかしたら彩葉はクライム・グローバルに

連れ去られたかもしれん」


「どうしてそんなことが分かるんですか?」


「彩葉の体内のナノマシンじゃが、悪い箇所を修復するだけじゃなく

GPSとしても使えるんだよ」


「で、彩葉のいる位置がグローバル社の本社の位置と一致している」


「誘拐?」

「クライム・グローバルが彩葉を?・・・」


「そういうことだろうな」


「まあ、当然と言えば、当然かもしれん」

「わしの研究に資金提供してくれた企業だだからな、ありうるな」

「実は研究の成功の暁には、イロハのデータと一緒にイロハも提供すると言う

条件で契約を結んでしまったからな・・・」


「今から考えると、なんてバカなことをしたと反省してるが、 やつらの

資金援助がなかったら彩葉は生まれてなかったのも事実だからな」


「証拠はないが契約通り彩葉は連れて行かれたのかもしれん」


「間違いありませんよ、彩葉を取り返さなくちゃ」

「海外にでも連れていかれたら、取り戻せなくなります」


「そうだな・・・」

「彩葉に関する資料もデータもそのうちやつらに渡すことになるだろう」

「だが、やつらには素直に渡すつもりはないがな・・・」


「彩葉さえ取り戻せば、バイオロイドがこの世に存在した証拠は残らん」

「誰も彩葉がバイオロイドだとは思わんからな」


「何かいい考えはないんですか?」


「そうだな・・・契約は契約だからな」

「彩葉を返せと言っても大人しくは返さんだろう」

「悪くすれば、身代金を要求されるかもしれん」


「誰か力になってくれる人はいないんですか?」


「なんせ彩葉極秘裏の開発だったからな・・・」

「警察やメディアに詳細を開示すると世間に彩葉の存在を否応なしにさらす

ことになる・・・」

「企業を相手に裁判を起こしても契約書があるかぎりこちらに勝ち目はない」


「分かりました・・・この件、僕たちも極秘に行動しましょう」


「もしクライム・グローバルから何か言ってきたら博士はやつらにデータを

渡すふりをして彩葉は返すよう説得してください」

「もしデータを渡すことになってもすべて渡さず大事なデータだけ抜いて

おいてください」

「第二の彩葉が生まれて悪用されることだけは防がないと・・・」


「分かった・・・できるだけ交渉を引き伸ばしてみる」


「その間に、僕のほうで力になってくれる人を当たってみます」

「僕に心当たりがありますから・・・」


「分かった、彩葉のことは君にまかそう」

「彩葉の追跡用データを君のスマホに送っておく」


「分かりました、何があっても彩葉は必ず取り戻して無事帰ってきます」


そう言って弟は電話を切った。

そして、すぐに杜守もりすから、弟から俺に連絡が入った・・・彩葉救出のために。


「そうか・・・分かった、そうなるような予感はしてた・・・俺も永遠とわ

そのつもりでいたからな・・・心配はいらねえ、彩葉ちゃんは必ず俺たちで

取り返すぞ」


「彩葉の居所はグローバル社だとGPSが示してるんだ」


「そうか・・・どっちみち行って見みりゃ分かるさ」

「ビルの近くまで行けば、おまえの彼女のいる場所もはっきり分かるだろ」


「あのビルは表向きは外資系の会社・・・ さほどセキュリティーが厳しい

会社じゃないから、その程度なら破れるだろう」

「見張りとセキュリティー会社の警備員が何人いるかだな・・・」


「昼間動くのは、何かとめんどうだから、当然暗くなってから行動を起こす」

「それまでにおまえは一旦、マンションに戻って来い」


そしてその日の12時過ぎ、俺と永遠とわ杜守もりす三人は彩葉救出に出かけた。

車は黒いやつをレンタルしておいた。


杜守もりす乗れ・・・」


弟は助手席に乗ると、すぐ後部座席に座ってるだろう永遠に声をかけようとした。


「・・・・え?猫?・・・永遠ねえさん?・・・」

「なにその格好?・・・まるで黒猫じゃん」


「はじめまして杜守もりす・・・私、ムーンナイト・・・」


「ムーン?・・・ナイト?・・・」

「え?あのムーンナイト?・・・超有名じゃん・・・まさか?ムーンナイトが

永遠ねえさんだったの?」


「そうよ・・・さあ彩葉ちゃんを救い出しに行きましょ」


「姉さんが泥棒なんて、ずっと知らなかった・・・」


つづく。


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