第6話:僕も彩葉も絶対干からびる。
弟が厄介ごとを抱えてる間も俺と永遠「グッドナイト」は夜な夜な、
闇の世界を徘徊していた。
俺は馴染みのジャンクショップのオーナーからの依頼で、タンカーの中で
行われている薬の取り引き現場で悪いやつ相手に大立ち回りをしていた。
グッドナイトは極秘データを盗みに某ブラック企業に忍び込んでいた。
永遠は自分が作ったコスチュームが気に入ってるか、黒い猫のレザースーツを
着ていた。
頭に猫耳、顔を隠す為のマスク、レザーの黒のスーツ、しかもミニスカート
って・・・。
恥ずかしくないのかって思うけど、それが永遠の彼女のポリシー。
かっこよくなくちゃ夜を駆ける猫じゃないって思ってるんだ。
まあ、でもいいんじゃないか?個性やインパクトは大事だしな。
暗闇で笑う黒猫・・・かっこいいぜグッドナイト。
で、弟からの愚痴の電話が俺にかかってくる。
甘かった、理想と現実のギャップにやられたってさ。
「そんなに嫌ならやめりゃいいじゃん」
「ああ〜でもさ、それでも彩葉は前向きなことも言ってはくれてるんだ」
「ここで生活するんですから、私、少しづつ学習しますってさ」
「じゃ〜いいじゃねえか、なに文句あんだよ」
「彩葉はここを出たら研究所に戻されるのが嫌だから言ってるんだよ」
「どっちにしたってよ、一度引き受けた仕事はちゃんと最後まで責任もって
こなせよ
「そうだね、がんばるよ」
てなことを言ってたら、なんか状況が少しづつ変わってきたみたいだな。
弟は彩葉が自分の相手をしてくれないと大学休学中の身には退屈この上ない
わけで彼女は朝食を食べるとソファに座ってテレビを見始める。
アニメを見てバカみたいに笑ってるんだそうだ。
弟の前で笑ってるってことは弟に心を許しつつあるのかもな。
そういう時の彼女は無防備で無邪気に見えるらしい。
彩葉と生活しはじめて博士からの連絡は一切ないそうだ。
次の日、どこからか段ボール箱が送られて来て、中身は全部、彩葉の衣類。
弟の服はない・・・おまえの分は自分で買えってことらしい。
いくらかの食材も一緒に送られて来てるらしいから外に出なくてもマンション
で過ごせるだけの材料は揃うようだ。
でも、一年間も外に出ないなんて彩葉の社会勉強にはならないよなって弟は
思ったらしい・・・たしかに意味ないな。
弟は今の状況をなんとかしたくて考えた。
「なにが社会勉強だよ・・・これじゃ隔離じゃないかよ」
「頭がおかしくなって、僕も彩葉も絶対干からびるぞ」
弟と彩葉が下手に動いて彼女の居所が漏れることを博士は恐れてるんだろう。
そのために弟たちを監視しているんだ。
弟は俺としか連絡を取ってない。
一日中家にいるのも、退屈で逆に疲れる・・・テレビを見たりゲームをしたり
でもそう言うのだっていつかは飽きる。
彩葉を連れて街にでるくらいはいいんじゃないか?。
そんなことを考えてると、ある日弟の携帯に誰かから電話がかかってきた。
「僕の携帯にって・・・誰だ?」
「ちょっと〜杜守〜《もりす》、今からそっちへ言っていい?」
「え?え・・・
「うん、退屈だからさ・・・杜守の彼女の顔でも拝みに行こうかと思って」
「彼女って・・・それに僕と彩葉が住んでる場所知らないでしょ?」
「知ってるよ・・・私を誰だと思ってるの?」
「兄ちゃんの恋人・・・他になにか?」
「そうね・・・あと30分くらいしたら行くから・・・」
永遠の言った通りそれから30分くらいして弟のマンションのドアが開いた。
チャイムなんかは鳴らさない。
セキュリティーやドアの鍵なんか永遠には意味がないことだった。
「あ、杜守・・・いた・・・なにここ?私たちのマンションよりリッチじゃない」
「姉さん、誰にもつけられてない?」
「そんなドジ踏まない?」
「それより、こんなところで隔離管理されたら腐ちゃうよね」
「しかたないだろ・・・彩葉のことは誰にも知られちゃいけないんだから」
「それにしたって、こんなこといつまで続けるつもり?」
「どんなに厳重に彩葉ちゃんのこと隠したっていずれはバレるよ」
「・・・って・・・うっそ〜」
「この子、彩葉ちゃん?・・・まじで?めっちゃ可愛い子じゃん」
永遠は、ソファに寝そべってこちを見てる彩葉を見つけてそう言った。
「彩葉だよ・・・彩葉・・・こっち僕の姉ちゃん」
彩葉は初めて見る女に、ちょこんと頭を下げた。
「いいね・・・杜守にぴったり・・・あんたらお似合いのカップルだわ」
「お、お似合いのカップルって・・・なに言ってんの?」
「そんなこと彩葉には迷惑だよ」
「そんなことないけど・・・」
「ほら、彩葉ちゃんだってそう言ってるよ、杜守」
「まじで?」
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます