第4話:弟「杜守」から聞かされた話。

俺は弟の大学の研究所で生まれたクローン「彩葉いろは」の面倒を見るって話を弟の「杜守もりす」から聞かされた。


彩葉を連れて帰ることになった弟は車で送ってもらいながらこれから

兄と永遠さんのいるマンションで彩葉と四人で暮らすもんだと思っていた

らしい。

ところが車で連れて行かれた場所は一戸建ての鉄筋コンクリート造りの立派な

建物だったそうだ。


そのマンションは彩葉とふたり日々の生活が送れるように家具一式揃っていた。

もろもろの段取り手続きは博士の部下らしき人たちが全部手配してくれたらしい。


ただここで、弟は彩葉と暮らすだけ・・・。


もちろん各部屋にカメラが設置してあって24時間監視付き。

ま、当然といえば当然だろう。

きっと部屋中に盗聴マイクもしかけられてるんだろう。


ってことはエッチなことは一切できないってことだな。

俺じゃあるまいし、真面目な弟はそんなことするつもりは毛頭ないだろうけど。


常識で考えると彩葉には莫大な資金が投資されてる訳で、何か問題があると

すぐに回収できるようにしてあるんだろう。


弟は彩葉とふたりきりってことに少し戸惑っていたみたいだ。


ところでだが・・・彩葉がなぜ女性として生まれたのか・・・。

そのことも弟が教えてくれた。


研究所の宮原 武博士には、女の子がひとりいたらしい。

今の彩葉と同じ歳の頃、病気で亡くなったんだそうだ。


おそらく彩葉の細胞は博士の亡くなった娘さんのものらしいと言うことだ。

娘さんが亡くなって以来、博士はバイオロイド研究に没頭するようになった。


研究に研究を重ねて、もう一度娘さんを蘇らせたい一心で クローン第一号が

生まれる予定だったようだがだが最初っから成功するわけもなく失敗を重ねる

うちにとうとう研究資金が底をついた・・・。


が、博士の研究に興味を持った、ある企業が研究費を援助してくれることに

なったんだそうだ。

捨てる会みあれば拾う神あり・・・それがクライム・グローバル。


解せないのは極秘研究だったにも関わらず博士がバイオロイドの研究を

していることをどこから嗅ぎつけたのか・・・クライム・グローバルは知っていた。

研究所の誰かからの情報漏れの可能性はあった。


研究資金提供の条件として研究後のデータおよび被検体はクライム・グローバル社

にすべて提供するという話で博士は承諾したらしい。


企業は博士の研究を独占したかったのだろう。

博士は自分の研究が誰に利用されるかなんて、最初はどうでもよかった。

研究費さえあれば、自分の希望、願望は遂げられると思っていた。

そして長年の研究の成果が実って彩葉が生まれた。


だから厳密に言えば、彩葉は研究所のモノではないのだ。


もしかしたら博士は企業から彩葉を守る為、弟に彩葉を預けたのかもしれない。

クローンを隔離するために・・・。


弟もそう思っていたらしい。


彩葉のことは誰にも知れては、いけないことなのかもしれない。

だが、そんなことしてもこんな重大なこと隠し続けられるはずがない。

今はいい、彩葉をクローンだと知っている人物はかぎられている。


疑えばきりがないが研究所の中に金の為に情報を売るやつがいたとしたら、

彩葉の存在はすぐにバレてしまうだろう。

だから彩葉は普通の女の子でなければならない。

クローンなど、この世に存在してはならないのだ。


それが世間に知れたら、彩葉も教授もそして弟も危険が及ぶ恐れがある。


その反面、彩葉と暮らすと言うことは・・・彩香にぞっこんだった弟に

とっては夢のような話だった。

そして監視されながらではあるが彩葉と僕「杜守」の生活が始まった。


そして刑事の俺と永遠とわ「プッシーキャット」は弟と彩葉のこの事件に

否応無しに関わっていくことになる。


つづく。


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