第2話:彩葉(いろは)

俺には「 杜守もりす」と言う弟がいると言ったが、

弟は某大学の研究所に所属していてそこで極秘裏にあるモノを研究開発している。


その研究所というのは、実はバイオロイドの研究開発。

バイオロイドって言うのは、早い話クローン人間のことで人為的にコントロール

されて生まれた人間がバイオロイドと言うことになる。


で、近年になって長年の研究による試行錯誤に上ついにバイオロイドが

「杜守」の所属する研究所で完成した。

世界で唯一、これは画期的な発明だった。


この開発のトップにいる人が、◯◯工業大学名誉教授の宮原 武博士。

クローン技術においては第一人者・・・権威といってもいい。


そして生まれたバイオロイドのネーミングは 「彩葉いろは」と名付けられた。

そう、生まれたのは女性のバイオロイド。


でも、実は「彩葉いろは」アルピノとして生まれてきた。

髪は白く・・・目は灰色・・・そう色素が欠乏して生まれたのだ。

紫外線に弱い皮膚を持っているため日中は日差しを避けなければならない。


彩葉いろは」細胞を提供した女の子は、高校生くらいだったのか?・・・

だからか「彩葉いろは」はまだ幼い面影を残していた。


身長は155センチ、アルピノである以外はとくにバイタルにも問題はなかった。

なぜ「彩葉いろは」が男性ではなく女性だったのかについては理由があったんだがそれはまたの次の機会にしよう。


生まれた「彩葉いろは」を見て杜守は、自分が研究に携わったこともあってつく感慨深いものがあったようだ。


実際にはクローン研究は国から認可は降りておらず、だから極秘裏に開発せざるを

得なかった。

違法ではあるが時にはルールを破ってでも研究しなければ科学は進歩しない。


新しい生命を生み出すことは神への冒涜だと言う意見もある。

人に関わるもの、不確かなものはあながち否定される傾向にあるようだ。

生まれたクローンを人と見なすのかどうか、と言う問題も難しいところでは

ある。


それに世の中には、そういう研究に開発費を援助してくれる企業もいたりする。

援助を申し出たのはクライム・グローバルと言うITなど世界的規模の企業だった。

ブラックな企業だと分かっていても資金が提供されないと、たちまち研究は

頓挫してしまう。


彩葉いろは」はクローンでありながら体の中にナノマシンを数体持っていて体のどこかに異常が発生してもすぐにナノマシンが患部を修復するようになっていた。


現在は感情面、知識面については未だ未知数・・・教育が必要という段階まで

きていた。

つまり社会勉強が不可欠と言うことだった。


彩葉いろは」はアルピノということ以外、普通の女の子だ。

彼女の年齢は提供された女の子の情報から17歳くらいではではないかと推定される。

そのことも「彩葉いろは」が、なぜ女だったかと言う理由に関係があること

だった。


そして、研究ブースの中で、大切に管理、育成されていた「彩葉いろは」に

杜すは弟は恋をした。

毎日のように研究所に足を運んで「彩葉いろは」を眺めているうちに情が湧いて

しまったようだ。


まだ個人的に会話は許されなかったが、それでも杜守は「彩葉いろは」を見てるだけで幸せだったようだ。


いつかは「彩葉いろは」と話してみたい。

彼女はまるで天使のように微笑む・・・杜守の妄想は果てしなく続くばかり・・・。

しかし、これ以上「彩葉いろは」とはお互い直接の接近、触れることも会話する

ことも杜守のようないち個人には許されないことだった。


そして「彩葉いろは」はここで何不自由なく研究者全員に身も守られながら

育って行くはずだった。


つづく。

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