第3話 不思議なマンホール

 「マンホール?」俺は、RANが風呂に入っている間に、AISから色々話を聞いていた。話によるとAISは、元々この時代(現代)の人間だったらしい。幼稚園からの帰り道、RANに追いかけられ、偶然落ちたマンホールで10年前にタイムスリップしたという。そこで幼稚園児だった俺たちに出会ったってわけだ。「それで、そのマンホールに何か仕掛けがあるってわけか?」聞けばそのマンホールは、底が見えない程に深いのに、落ちても気を失っていただけで、怪我一つしていなかったらしい。「多分な。」その辺についてはAISもよく分かっていないらしく、こっち(現代)に戻ってきてからすぐにRANに見つけられたらしい。というわけで、俺とAISは早速、明日の朝からそのマンホールを調べに行くことにした。

 まだRANが寝ている時間に、俺たちは家を出た。どうやらAISは、RANに正体がバレることを避けたいらしい。例のマンホールの場所は、俺たちが通っていた幼稚園のすぐそばだった。その幼稚園はもう潰れてしまって、廃墟となっている。その幼稚園以外にも、周りには廃墟が沢山あり、もう誰も行き来していないようだった。その中のひとつ、幼稚園のすぐそばにある廃墟の駐車場に、蓋の空いたマンホールがあった。どうやらそれが、俺が長年突き止められなかった謎の真相らしい。確かに10年前、俺とRANは幼稚園の園庭からAISを見つけたのだ。マンホールから出て、すぐのところだったと考えれば筋が通る。「で、どう調べる?試しに落ちるか?そんなの危なすぎるし、、、。」そんな時、AISがある提案をした。「俺が中に行くよ。」「お前本気か?そんな危ないこと絶対させねーぞ。」止める俺に向かってAISは、「飛び降りるんじゃない。かなりボロいけど、梯がついているから、それにつかまって降りて行くよ。」他に方法がないと思った俺は、AISの提案にのることにした。

「どうだ、何か見つけたか?」少し間が空いて、返事が来た。「いや、まだ底が見えないんだ。」 え? 驚いた。そのマンホールは俺が思っていたよりも、ずっとずっと深かった。それから少しして、AISが梯子で降りる音が続いた。「うわあああ!」バタ! !?  いきなりAISの悲鳴と、何かが落ちる音が聞こえた。「おいAIS!どうしたんだ!大丈夫か?」何を聞いても返事がなかった。俺はすぐに警察を呼び、AISの捜索が始められたが一向に見つかることはなかった。警察も、マンホールに落ちたなら人が倒れているはずだと不審に思い、俺のイタズラということになってしまった。でも、俺にはなんとなくわかっている。きっとAISはまた過去に戻ることができたのだ。

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