第3話水と温泉の都アルカンレティア前編
「はぁそうだ!久しぶりにアルカンレティアに行かないか」俺はそうつぶやいた。
「アルカンレティア!アルカンレティアといえば私女神アクアじゃないの!早く行きましょう!」
「カズマ、アルカンレティアとは、何ですか?」
俺のつぶやきにめぐみんが首をかしげて聞いて来た。「アルカンレティアはアクシズ教の総本山だな。俺も昔、よく連れて行かれたんだよ」
「アルカンレティアですか……。確かに良いかもしれませんね」
めぐみんも同意し、俺達はアルカンレティアへと向かう事になった。
─冒険者ギルド─ 冒険者ギルドに着いた俺は、相変わらずの賑わいっぷりにため息を吐いた。
俺達がギルドに入ると、早速何人かの冒険者達が近寄って来た。「おいカズマ!聞いたぜ!魔王軍の幹部をまた一人倒したそうじゃないか!」
そんな男に俺は曖昧に頷き返すと男は嬉しそうに話しかけてきた。「おいおいどうした?やっぱり相手は幹部クラスとなると、そう易々とは倒せないもんなのか?」「いや、幹部ならもう何度も倒してるんだけど……。なあお前ら、アルカンレティアに行った事あるか?あそこのプリーストに話を聞いてみると良いぞ」
俺の言葉に男は不思議そうに。
「なんでだ?あそこのプリーストって言ったら……ああ!成る程な!ありがとよ!」
そう言って男は去って行った。「カズマ、あなたは、一体どうしたのですか?いつもなら魔王軍の幹部がなんだーって騒ぐのに、今日はやっていないじゃないですか」
俺が無言でいるとめぐみんが心配そうに聞いて来た。「いや、その……なんだ」
「なんですか、歯切れが悪いじゃないですか。言ってください!、なんですか?ひょっとして昔のパーティーメンバーの子と喧嘩でもしたんですか?ほらあの子って魔王軍の幹部に殺されたんでしょう?」
「ちげえよ!あの子は俺がこの手でちゃんと天に送ったわ!そうじゃなくてさあ……」
そんな俺の言葉をめぐみんが遮る。「まあ良いじゃないですか。あなたが言いたくないのなら聞きはしません。でも、言いたい事があったら我慢せずに言ってくださいね?」
そう言ってめぐみんは微笑んだ。「……お、おう」
そんな俺達のやり取りを、アクアが興味深そうに見ていた……。
─アルカンレティア行きの馬車の中─
「あの街にいるプリーストがですね、どうやら魔王軍やアンデッドにやたら詳しいそうです。何でも昔のパーティーメンバーの一人がそうだったとか……」
そんなめぐみんの言葉に俺は思わずビクッとしてしまった。なぜならそのプリーストは昔、俺にアンデッドの浄化の仕方を教えてくれた人だったからだ。「めぐみんがやたら静かだと思ったらそんな事調べてたのかよ!……まあ良いけど」
「カズマは昔、その人にアンデッドの事を教えてもらったんですか?その人に随分懐いていたみたいですね」
俺はアクアから目を逸らすとそっと呟いた。「……優しかったからな。俺が一番初めに習った魔法だってあの人に教わったんだ……」
そんな俺の呟きを聞いてアクアがジト目で見てくる。
「……ねえカズマさん?その子の事、好きだったんでしょ?」
そんなアクアの言葉を聞いためぐみんがジト目で見つめてくる。「カズマは、そのプリーストの事が好きだったのでしょう?」
その言葉に俺は一瞬硬直するがすぐに……。「そそそそそんなんじゃねえよ!好きとかそういうんじゃなくて尊敬してたんだ!優しくて美人で!」
俺の言葉にアクアが首を傾げると。「そんなのどこにでもいるじゃない。そもそも好きな相手に教えてもらってる最中に胸とかお尻ばっかり見てたのね」
そんな事を言うアクアをめぐみんが静かに窘めた。「アクア、余計な事言わないでください。今カズマは、その子に恋をしてると認めた様なものですよ?」
二人はそんなおかしな事を言いながら馬車の外を見る。
「ねえ二人ともどうしたの?外を見ているフリをして俺をチラチラ見るのはやめてもらえます?」
そんな俺の言葉にも二人は聞く耳を持たない様で無視する。くそ、なんなんだよ一体!「……カズマは随分その子の事が気になるんですね」
突然めぐみんがボソッと呟いた。「べっ別に気になってなんかねぇよ」「そうですか?なら良いんですけど。そのプリーストの事が気になるのなら、もう吹っ切れているんでしょうし、私達と一緒にいてもいいんですよ?」
そう言ってめぐみんはニッコリと笑うと再び窓の外を見た。
「……別に吹っ切れてねーよ」
そんな俺の呟きにアクアが頷くと。「まあね、カズマは簡単に女の子を好きになるから大丈夫でしょ!」
そんなアクアの言葉に俺は思わず反論した。「おい、人を女たらしみたいに言うんじゃねえよ!」「でも実際そうじゃないの。私なんかより、その子の方が気になるんでしょ?」
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