第三話 蝕む嘘
放課後、僕は教室に呼び出された。
教室は少し赤く、恋人が告白してくれた日を思い出した。もう少しで太陽が水平線に消える時間だった。
「改まってどうしたの?」
僕は聞いた。
「あのね、別れてほしい」
クラスメイトはいつも急だ。
「いいよ」
恋人が別れたいと思ったなら別れるしかないと思った。
「なんで理由を聞かないの?やっぱり私のこと好きじゃないんだ」
泣きながら言っていた。正直、僕は好きかどうか分からない。けれど、好きじゃなくてもいいからと言ったのはクラスメイトだ。なんで泣いているのだろうか。
「君はいつもそう。君の意見は言わずに私のわがままはすぐに受け入れてくれる。君に意見なんてないの。いつもどこかにふらっと消えそうな気がして私はもう耐えられない。どこかに消えちゃいそうで。私耐えられない」
まくしたてるように言う。
「あと君はまだ彼女のことが好きだよ。一年生の頃からずっと。気づいてないでしょ。廊下ですれ違う時とか、体育祭の時とか、部活の時とか自然に目で追ってる」
そう言い、教室を出て行った。僕は、彼女が好きなのだろうか。自分でもわからない。けれど、ずっと僕のことを見てくれたクラスメイトの言うことだ。きっと僕は未だに彼女のことが好きなんだろう。なんだかその事が呪いのように感じた。
教室はいつの間にか暗くなっていた。肌寒くなってきた季節、僕は教室に一人だった。
次の日、女子達が僕の方を見てひそひそと話すようになった。居心地が悪かったが付き合う前に戻ったと思えば気にならない。昼休み、クラスメイトの仲が良い女子からいきなり言われた。
「謝りなさいよ」
別れたことか。
「僕が悪かったよ」
とりあえず返事した。
「何、その態度。浮気したくせに許せない」
クラスメイトの方を見ると、俯いていた。意図的に嘘をついたのか、嘘をつかされたかは分からない。けれど、僕は許さざる負えなかった。僕も嘘をついたことがあるから。
僕は吐き気がし、トイレに逃げ込んだ。
この日以降、僕は体調を崩した。
朝、いつものように起き、トイレに行った。用を済ました際、違和感があった。違和感を確認するべく便器を見たら血に染まっていた。
逃げ回っている僕に罰が下ったのだろうか。僕は病気になってしまった。
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