押し殺したはずなのに……
「ユーリ様とイリーゼ様は愛し合っているんですよ? そんなわけないじゃないですか」
「「……は?」」
そんな訳の分からないマロウさんの答えに、俺とフェリシアンの声が重なった。
まぁ、待て。
一旦、そう、一旦落ち着こう。深呼吸だ。
俺の聞き間違い……ってことは無い、よな。フェリシアンも反応してるんだから、二人で同じ聞き間違いをしたとは考えずらい。
つまり、マロウさんは本当にそんな訳の分からないことを言ったってことだ。
……なんで? 一旦落ち着いて考えてみても、全く理解が追いつかないぞ?
「あ、あれ? ユーリ様、別に言ってもよろしかったんですよね? 私、この前ちゃんと確認しましたよね? どんどん言いふらしてくれ、とも言っていましたよね?」
「いや、それは俺とイリーゼの関係の話……」
「は、はい、ですから、ユーリ様とイリーゼ様の関係の話、ですよ?」
「……は?」
……もしかして、マロウさんは本気で勘違いしてるのか? だとしたら、一体なんでそんな勘違いをしたんだ?
そんな疑問を内心で思いつつも、イリーゼのためにも、いち早くマロウさんの誤解を解こうと俺は口を開こうとしたところで、イリーゼが口を挟んできた。
「お兄様、どうかしたんですか?」
どうかしたって、逆にイリーゼはどうもしないのかよ。こんな勘違いされて。
「イリーゼからもマロウさんに何か言ってやってくれ。このまま誤解されたままじゃ嫌だろ?」
「……誤解?」
だからなんでそこに疑問を覚えるんだよ。
「俺とイリーゼが愛し合ってるって話だよ」
「ぇ?」
俺がそう言うと、イリーゼのそんな細い声が聞こえてきた。
「お兄様は、私のことが好きじゃないん、ですか……?」
そしてそのまま、泣きそうな表情のまま、そう聞いてきた。
「ゆ、ユーリ様! こんな大勢の前ですし、恥ずかしい気持ちは分かりますが、そんな心にもないことを言ってはダメですよ!」
そんなイリーゼに続けるようにして、今度はマロウさんがそう言ってきた。
「は? いや……え? あ、は?」
「……お兄様、私のこと、嫌いになっちゃったんですか?」
「そ、そういう話じゃなくてな……と、というか、イリーゼは、否定、しないのか?」
「……何が、ですか」
「俺を愛してるとかいう話だよ」
「改めていうのは少し恥ずかしいですが、愛しているに決まっているじゃないですか。ずっと前から、私はお兄様のことが大好きです!」
否定されるに決まってる。
そう思っていたのに、返ってきたのはイリーゼからのそんな答えだった。
「お兄様は、違うんですか……?」
瞳に涙を貯めながら、上目遣いになるようにして、イリーゼはそう聞いてきた。
そんな聞きかたをされたら、この前押し殺したはずの感情が息を吹き返してくるじゃないか。
「好き、だよ。俺も、イリーゼが好きだよ」
そうして、俺は言ってしまった。絶対に口にしてはいけないと思っていた気持ちを。
すると、俺の言葉を聞いたイリーゼは一気に笑顔になって、俺に抱きついてきた。
「……は?」
そんな様子を見ていたフェリシアンから何か情けない声が聞こえてきた気がするけど、それを無視しながら、俺の方からもイリーゼを抱きしめた。
本当にいいのか? と迷いを少し残しながらも。
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