決闘
授業が全部終わってしまった。
決闘を学園で行うとはフェリシアンに聞いたけど、結局学園のどこで行うのかは知らないから、嫌だなぁと思いながら、席を立たずにいると、フェリシアンの方から俺のところに向かってきてくれた。
適当な奴に聞いて決闘の場所に向かうつもりだったんだけど、フェリシアンの方から向かってきてくれるのなら好都合だな。
「おい、何をボサっとしている! さっさと行くぞ。……逃げるなよ」
「逃げませんよ」
ここで逃げたってどうせフェリシアンはまた絡んでくるだろうし、意味なんて無いと思うからな。
そもそもの話、決闘のことはかなり広まっているみたいだし、逃げることなんて出来ないだろ。
「ならば早く来い」
「分かりました」
そう思いながらも、そんな言葉に頷いて、俺はそのままフェリシアンの後を追った。
「ここだ。お前はあっちで準備でも整えてこい」
「あ、はい。分かりました」
結構人が集まっていると思っていると、フェリシアンにそんなことを言われたから、俺は言われた通り向こうに向かった。
……人が多いな。
俺たちの決闘を見に来たのか、本来なら滅多に顔を出さない宮廷魔法使いのマロウさんを見に来たのか、どっちなんだろうな。
……どっちもか。顔には出さないけど、妹をいじめるような俺を嫌っている奴らも多いだろうし、フェリシアンを応援しに来てるんだろう。
……俺も、もしもこの決闘を観戦する側だったら、フェリシアンを応援してただろうし、文句は言えないな。
「お兄様、大丈夫ですか?」
いつあの決闘の場に行けばいいのかと考えていると、いつの間にか近くにいたイリーゼがそう言ってきた。
「いつの間に……ま、まぁ、それはともかくとして、大丈夫だって。別に負けたところで俺は構わないし、気楽にやるだけだ。イリーゼも気楽にだって言ってくれてただろ?」
「それは、そう、ですけど……いいんですか? お兄様は、負けても。……もちろん、お兄様が負けるだなんて微塵も思っていませんが」
……そんなことを言われたら、プレッシャーが凄いんだが。
「まぁ、別に問題は無いな。もう当主になりたいだなんて思ってないし」
「そうなのですか?」
イリーゼは驚いたようにそう聞いてきた。
「そうだよ。だから、この決闘で負けて当主になれなくなったとしても、問題ないんだよ」
正直、負けたところで俺に男の兄弟は居ないし、俺が継ぐことになりそうだけどな。
……兄か弟が居れば良かったのにな。
「……呼ばれてるし、そろそろ行ってくるな」
「は、はい、分かりました。応援していますね、お兄様」
そんなイリーゼの声を後ろに、俺は決闘の場所に向かった。
すると、そこには決闘を見に来た多くの人達と、マロウさん、そしてフェリシアンが待っていた。
とうとう始まってしまうのか。
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