???
「お兄様、申し訳ありませんでした」
イリーゼに決闘のことがバレた翌日、フェリシアンに絡まれることなく無事に学園が終わったから、庭で魔法の練習をしていると、突然そう言ってイリーゼが頭を下げてきた。
は? 急になんだ? 何かあったのか?
「ど、どうした? イリーゼ」
決闘のことがバレたと言っても、俺が決闘をするとバレたわけじゃないんだから、俺はまだイリーゼに嘘をついている状況だ。
むしろ謝ることがあるとしたら、俺の方だと思うんだが。
そんな思いがあるからこそ、内心で焦りながらも、俺はなんでイリーゼが頭を下げているのかを聞いた。
もちろん、頭を上げさせながら。
「決闘の日が6日後ということは本当だったのですね。それを私は、疑ってしまっていました。申し訳ありませんでした。……私はお兄様のことは何でも知っていますし、嘘なんて絶対に見抜けると思っていましたのに……」
……ん? 決闘の日が6日後だということが本当? ……いやいや、そんなわけないだろ。昨日のあの発言は完全に適当だったんだぞ? それが当たってたなんて、ありえないだろ。
「い、いや、大丈夫だよ。ただ、分かってるんだけど、決闘って6日後、なのか? そもそも、誰に聞いたんだ?」
「え?」
「お、俺も決闘が6日後だってことくらい分かってるんだぞ? 一応、だよ」
俺の言葉を聞いたイリーゼは綺麗な瞳で何も言わずに俺の目を見てくる。
……落ち着け、動揺するな。ただでさえ何故かイリーゼには俺の嘘がバレるんだから、動揺なんてするわけにはいかない。
「どうした?」
「……お兄様、酷いです」
「え?」
「なんでもないです。学園にてその辺にいた人に聞いたんですよ。決闘は6日後だと。もちろん女性です」
男か女かなんてどうでもいいけど、マジか。
失礼な話ではあるんだけど、イリーゼにそんなことを聞く友人がいたのか。……いや、その辺にいた人に聞いたって言ってるし、ただの他人なのか。
……少し前のイリーゼなら俺のせいで無視をされてた可能性が高いから、返事をしてもらっていることに喜べばいいのか、なんで今なんだと悲しめばいいのか。……喜んだ方がいいに決まってるな。全部俺のせいだったんだし。
「そ、そうか。それは良かったよ」
そう言いつつも、俺の中には一つの疑問が生まれていた。
イリーゼは決闘の日を人に聞いたと言っていた。
普通、誰が決闘をするかとかも聞くよな。
……あれ? まさかとは思うけど、バレてたりします?
「……なんですか、お兄様」
そう思っていると、俺の内心の疑問が伝わってしまったのか、拗ねたようにイリーゼはそう聞いてきた。
「え、いや……な、なんでもない、です」
俺はバレていない方にかけて、そう言った。
ほぼバレてるとは思ったけど、バレてなかった時、自分で白状するようなものだからな。
「お兄様、そこに座ってください」
「は?」
座るって、地面にか? と思いつつ、イリーゼの視線の先に目を向けると、そこにはさっきまで絶対になかった椅子が不自然に置いてあった。
どうなってるんだ? イリーゼが置いた、のか? ……どうやって?
「お兄様、早く座ってください」
「えっ、あ、は、はい」
本当はなんでこんなところに椅子があるのかを聞きたかった。
でも、イリーゼの圧に恐怖してしまった俺はつい頷いてしまい、そのまま椅子に座らされていた。
「???」
この椅子についての疑問は残っているものの、なんのために椅子に座らされたのかが分からなかった俺は、そのことについて訪ねようとしたところで、イリーゼに優しく抱きしめられてしまった。
いくら俺がイリーゼより背が高いとはいえ、椅子に座ってたら流石にイリーゼの方が高い。
そんな状態で抱きしめられたりなんかしたら、イリーゼの豊富な胸が顔に当たる……どころか、そこに埋まってしまう訳で……
お、落ち着け。今こそ、一番落ち着く時だ。
イリーゼは妹だ。変なことを考えるな。イリーゼだって、何か考えがあってこんなことをしているんだろう。だからこそ、落ち着こう。
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