なんでバレるんだろうな
「美味しかったな、イリーゼ」
「はい、お兄様」
あの悲鳴が聞こえてきた辺りから離れた店で食事を食べ終わった俺たちは、そんなやり取りをした。
流石にあの周辺の店で飯を食べようとは思えなかったからな。
「イリーゼ、今日はもう帰るつもりだが、大丈夫そうか?」
「もちろん、大丈夫ですよ。お兄様」
こうやって呑気に飯を食べてはいたけど、早く父様に……当主様にさっきのことと噂のことを伝えておきたいしな。
ついでに、フェリシアンとの決闘のことも言っておいた方がいいだろうし。……まぁ、そっちの方はもう知っている可能性が高いけど。
はぁ。今まで怒られたことなんて無かったけど、今回は流石に怒られるかなぁ。
立場が上の人間とはちゃんと仲良くしろって言われてたしな。
「お兄様こそ、大丈夫ですか?」
そう思っていると、突然、イリーゼはそんなことを聞いてきた。
……顔、出てたか?
俺は貴族として育てられたんだ。
一応、顔に出さないのは得意なはずなのに、なんでいつもイリーゼにはバレるんだろうな。
この前だって、なんかバレてたし。
「大丈夫に決まってるだろ」
「本当ですか?」
「本当だよ」
そんなやり取りをしつつ、俺たちは店を出て、家に帰っていた。
「お兄様」
「なんだ?」
「私はお兄様の所有物です」
「いや、違うけど」
イリーゼの意味のわからない言葉を聞いた俺は、反射的にそう返していた。
一体イリーゼは何を言っているんだ? ……いじめをしていた時なら、まぁ、ともかく、今は絶対に違うだろ。
あれか? 俺が大丈夫じゃなさそうなことを察していたから、場を和ませる為にそんなことを言ったのか? ……だとしたら、ブラックジョークすぎて全く和まないぞ。
「?」
そう思っていると、イリーゼは本当に不思議そうに首を傾げてきた。
「そういう事ですか、お兄様」
「えっと、え?」
「ありがとうございます、お兄様。でも、頼ってくれていいんですからね? いつでも、私を頼って、甘えてください」
イリーゼはそう言いながら俺に抱きついてきて、上目遣いになるようにして、俺の目を見つめてくる。
可愛い……じゃない。いや、可愛いけど、相手は妹だ。何を考えてるんだ。
そうじゃなくて、イリーゼは一体何を言っているんだ? 俺にはイリーゼが何を言っているのか、全く分からないぞ。
「……変なこと言ってないで、早く帰るぞ、イリーゼ」
「……はい、お兄様。でも、忘れないでくださいね?」
「あー、まぁ、覚えとくよ」
正直俺にはイリーゼの言っていることを理解できなかったけど、多分、俺の事を思って言ってくれてるんだろうから、曖昧な返事ではあるけど、俺はそう言った。
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