デート?

 フェリシアンからの果たし状……ではなく、手紙を読み終わって、しばらく自業自得だと自分に言い聞かせていたところで、俺は思った。

 そういえばなんだけど、決闘の日時が書いてないんだが、いつするんだ? ……日時が書いてなかった、ってことで、無しにならないかな。

 ならないんだろうな。


「お兄様、今、よろしいですか?」


 そうして色々と考えていると、再び、扉がノックされ、そんな声が聞こえてきた。

 今度はメイドではなく、俺の妹……イリーゼの声だ。


 イリーゼに変な心配をかけさせる訳にはいかないし、手紙を隠してから、俺は返事をした。


「あぁ、構わないが、何か用か? イリーゼ」


「中に入ってもよろしいですか?」


「……少し、待ってくれ」


 直ぐに肯定の言葉を言おうと思ったんだけど、手紙だけじゃなく、ペーパーナイフも隠した方がいいと思った俺は、そう言った。

 

「もういいぞ」


 そして、ペーパーナイフも隠し終わった俺は、扉の向こうに向かってそう言った。


「はい、失礼します、お兄様」


「それで、何の用だ? イリーゼ」


「お兄様、わがままを言ってもよろしいですか?」


 ……イリーゼが、わがまま?

 よく考えたら、イリーゼのわがままなんて聞いた事なんて……いや、どうだろうな。わがままでは無いのかもだけど、謎の圧で俺を脅……怖がらせてきたりはするからな。

 

「まぁ、いいぞ」


 そう思いつつも、俺は頷いた。

 可愛い妹のわがままだ。聞かないわけないだろう。

 そもそもの話、仲直りしたとはいえ、罪悪感が完全に無くなったわけではないからな。


「今日はお互い、もう暇、ですよね?」


「そうだな」


 俺は手紙の件もあって、暇とは言いがたいんだけど、頷いた。

 もうイリーゼと仲直りが出来たし、練習する必要が無いんだけど、少しづつマロウさんに貰った石を使わなくても、炎魔法を使えるようになってきてるからな。普通にマロウさんがまた来る日まで余裕がある。だから、大丈夫だろう。


「で、でしたら、デートを、しませんか?」


 イリーゼは顔を真っ赤にしながら、そう言ってきた。

 ……なんでそんな顔を赤らめてるんだ? だってあれ、だよな? デートとは言ってるけど、兄妹として、どこかに出かけたいって言ってきてるだけだよな?


「別にいいけど、どこか行きたい場所でもあるのか?」


 もうあの劇は正直嫌だと思いながらも、俺はそう聞いた。

 

「その、特に行きたい場所がある訳ではないのですが、お兄様とデートがしたかったんです」


「……だったら、適当に散歩でもしつつ、食事でもしに行くか?」


 その場合、もちろん護衛は連れて行くけどな。

 

「は、はい、是非」

 

「だったら、少し待ってくれ。準備をするからな」


「私も、着替えてきますね」


「いや、イリーゼはそれでも──」


 俺が言い切る前に、イリーゼは部屋を出て行ってしまった。

 まぁいいか。イリーゼが着替えたいって言うのなら、俺が止める理由もないし。

 それよりも、俺はライヤーを……いや、一人の時ならともかく、イリーゼと出かける時の護衛がライヤーは無いな。

 適当な奴に護衛を頼みに行くか。

 ……イリーゼが嫌がるだろうから、少し離れて、尚且つバレないように護衛をしてもらうようにも言わなきゃだし、さっさと行こう。

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