今はもう仲直り出来てるしな

 学園を休んだ次の日、俺は服を着替えて学園に行く準備をしていた。

 今日はイリーゼと一緒に寝ることはなく、一人で寝たから、寝不足なんかでもないし、スッキリとした気分で着替えられた。

 いくら普通のこととはいえ、兄妹で一緒に寝るのは、やっぱり色々と体の違いからも意識してしまうからな。一人で寝るのが一番だ。

 ……まぁ、イリーゼの体温はいい感じに温かかったことは否定しないけど、結局、緊張で眠れなかったしな。


「お兄様、今日も一緒に行きましょう」


「……それは構わないんだが、今日は馬車を使わないか?」


 二人歩いて学園に登校なんてしてたら、またフェリシアンに変な絡まれ方をされるかもだし俺はそう言った。


「……お兄様と二人っきりがいいです」


「馬車の中は二人だろ」


「……それは、そう、ですけど」


 なんでイリーゼはここまで馬車で行くことを渋るんだ? 

 ……フェリシアンに何かを言われるのは面倒だけど、イリーゼが馬車は嫌そうだし、二人で歩いて行くか? ……イリーゼも俺も弱い訳では無いし、まぁ、学園に行くくらいなら大丈夫か。


「二人で歩いて行くか?」


「いいんですか?」


「あぁ、イリーゼがそっちの方がいいって言うのなら、それでいい」


「で、でしたら、二人で、歩いて登校したいです」


「分かった。だったら、二人で行くか」


「は、はいっ!」


 イリーゼが嬉しそうにしてるし、これで良かったってことでいいんだよな。

 ほんと、最初からこうやって仲良くしておけば、って何度も考えてしまうな。……まぁ、仲直りは出来たんだし、今から仲良くしていけばいいだけの話なんだけどさ。


「だったら、そろそろ行くか」


 馬車で行くのなら、もう少ししてからでも良かったけど、歩いて行くのならそろそろ家を出ないと授業に間に合わないかもしれないからな。余裕を持っておくことは大事だ。


「はい! お兄様」


 イリーゼが頷いてくれたのを確認して、俺はイリーゼと一緒に家を出た。

 

「そういえば、お兄様」


「ん? どうした?」


「あの女……ではなく、お兄様の家庭教師になった女性の方はちゃんと私たちの関係を広めてくれていますかね?」


「あー、どうだろうな」


 別にマロウさんからしたらそんなことわざわざ広めるようなことでもないだろうし、正直、俺としてはどっちでもいいから、割と適当にそう答えた。

 あの時はまだイリーゼと仲直り出来てなかったし、噂を広めて欲しいと思ってたけど、今はもう仲直り出来てるしな。


「お兄様は広めて欲しいから、あの時あのように言ったのではなかったのですか?」


「あの時は広めて欲しかったけど、今は別にどっちでもいいかな」


「……た、確かに、今はもう、お互いの気持ちがハッキリしてますもんね」


「ん? まぁ、そうだな」


 俺の気持ちは最初からハッキリと……してないな。

 うん。してなかったわ。

 ま、まぁ、とにかく、今はお互いハッキリ? としたんだから、別にいいのか。




 そうしてイリーゼと適当に話しているうちに、学園に着いた。


「イリーゼ、また後でな」


「はい、お兄様」


 そして、イリーゼを教室まで送った俺は、自分の教室に向かいだした。

 ……フェリシアンに絡まれないように、授業が始まるギリギリになるようにして。

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