兄妹なんだし
「……」
え? 冗談だろ? 一睡も出来なかったんだけど。
そんな俺とは違って、イリーゼは俺の腕の中でスヤスヤと規則的な寝息を立てながら、眠っている。
……え? 異性として意識してるのって俺だけなの? ……いや、兄妹なんだし、別にそれで全然問題ないんだけどさ。
「……ん、んぅ」
そんなことを考えていると、イリーゼが目を覚ましそうなのか、そんな声が聞こえてきた。
……もう一日中こうしてたわけだし、正直イリーゼとこれだけ密着している状況にも少し慣れてきたところなんだけど、これ、離れた方がいいのか? ……寝起きで俺に密着されている、なんてのはイリーゼも嫌……なことは無い、のか。
こうしてくれって提案してきたのはイリーゼの方だし、そもそも、仲直りが出来たんだから、嫌だなんて思われるはずない……よな? ……もしも拒絶なんてされたら、俺は泣くぞ。
「……お兄様?」
「あ、あぁ、おはよう、イリーゼ」
「はい。おはようございます、お兄様」
俺の心配なんて全く不要だったみたいで、目を覚ましたイリーゼはそのまま、俺に抱きついてそう言ってきた。
……大丈夫。俺は一日中こうしてたんだ。邪な考えなんてもう浮かばないぞ。完全に悟りを開いた状態だ。
「そろそろ、起きるか」
「……はい、お兄様」
一睡も出来てないし、ずっと起きてたんだけど、俺はそう言った。
起こしに来るであろうメイドにこんな姿、見られるわけにはいかないからな。
……いや、兄妹なら普通だってイリーゼが言ってたし、別に大丈夫、なのか?
「俺は服を着替えるから、イリーゼもそろそろ部屋に戻ろうな」
正直、今日は服を着替える気なんてないけど、俺はそう言った。
流石にこんな寝不足の状態で学園に行くのはどうかと思うから、普通に休むつもりだし。
……ほぼサボりだし、正直気分的にちょっと嫌なんだけど、イリーゼと仲直りができて復讐をされる心配が無くなった代償だと思えば、かなり安いものだ。
「……分かり、ました」
何故かイリーゼは名残惜しそうに頷いて、俺の部屋を出ていった。
……よし、寝るか。イリーゼも部屋から出て行ったことだしな。
イリーゼはイリーゼで一人で学園に行くだろう。
そう思って、俺はもう一度ベッドに寝転んで、布団の中に入った。
……イリーゼの匂いがする。……いや、何を考えてるんだ、俺は。兄妹だぞ。気持ち悪すぎるだろ。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか、俺は眠りについていた。
「……ん」
そして、目が覚めると、外は完全に明るくなっており、お昼になっていることが予想出来た。
……今考えると、メイドに休むことを伝えておいた方が良かったな。
……まぁいいか。一日くらい。
そう思いつつ、俺はリビングに移動した。
当然ながら、イリーゼは居ない。
良かった。ちゃんと学園に行ったんだな。
「昼食を用意してくれ」
「かしこまりました」
イリーゼがちゃんと学園に行っていることに安心した俺は、近くにいたメイドにそう言った。
朝食を食べてないし、普通に腹が減ったからな。
「お兄様、昼食をお持ちしましたよ」
「……い、イリーゼ!? な、なんでここに居るんだ? 学園はどうした?」
「服を着替えてお兄様のお部屋に戻ってきたら、お兄様が眠っていらっしゃったので、もちろん学園なんて休みましたよ?」
何がもちろんなんだよ。おかしくないか? なんでイリーゼまで休んでるんだよ。
いや、別に俺だって一日くらいいいかって思って休んでるわけだし、全然問題は無いんだけど、問題がないとはいえイリーゼが休むのは違くないか?
「……そうか。……明日は、ちゃんと一緒に学園に行こうな」
「はいっ!」
俺が休んでるのに、イリーゼに注意なんて出来るわけないし、俺はそう言った。
そしてそのまま、イリーゼが持ってきてくれた昼食を食べ始めた。
「美味しいですか? お兄様」
「ん? まぁ、美味しいよ」
「良かったです」
? なんでイリーゼが喜んでるんだ? 料理長が作ったものだろ? ……まぁ、別に喜んでいるのならいいか。
──────────────
あとがき。
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【平凡な村に守り神として君臨して早1000年、今までこんなこと無かったのにいきなり生贄が捧げられた俺はこの娘をどうしたらいいんだ?】
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