第22話 VS美月ちゃん


 美月ちゃんとの試合では、全力を出すことは無い。


 おそらく、俺が本気で打ったフォアハンドは美月ちゃんでは返球することが出来ないだろう。


 まあ、当たり前の話ではあるが。


 だからこそ、勝負を成り立たせるために、美月ちゃんに飽きられないためにも、俺は全力を出すことはなく球威を押えコントロールを重視しつつもギリギリのラインを攻めたプレーをすることを心がけている。


 また、スキル《モーションアシスト》は試合中に効果を発揮しない。


 これによりアウトやプレーミスによる失点が重なって点差が開くことはあまり無い。


 それでも勝率は八割を超えているが。


「ていっ!」


 少し甘くなってしまったドロップショットを逆サイドの奥に叩き込まれる。


 これでゲーム数は1-1。


「やったあ!」


「ナイスボール。さすがに取れないや」


 うん、美月ちゃんもかなり強くなった。

 特に嫌らしいボールに対しての反応が素晴らしい。


「ふふ〜ん、今日はこのまま勝っちゃうもんねー!」


「まだ1-1なのに何言ってんだか」


 調子に乗ってる美月ちゃん。

 確かに今日は調子が良さそうなのも事実だし、こっちも集中するか。


 次は美月ちゃんがサーブだ。


「おっと!」


 美月ちゃんが打ってきたのはスピンサーブ。

 ボディに向かって飛んできたボールが高く跳ねる。


「やるなぁっ!」


 体勢が崩れたリターンになってしまった。


 将来、身長が高くなることはスキルが保証してくれている。しかし今現在、身長は美月ちゃんとさほど変わらない。


 サーブで崩されたのが痛かった。そのまま、ラリーで劣勢に立たされ点を取られてしまう。


 それにしても美月ちゃん、本当に調子が良い。


 そんな調子で今日のゲームは2-3で負けてしまった。


 ま、まあ。まだ本気出してないし。別に悔しくなんてない。ないったらない。

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