第15話  小学生入学式


 あれから御子柴家とは、数か月に一度くらいの頻度でテニスをする関係に落ち着いた。


 そうして、普段は基礎練習がメイン。たまに長期休暇や、隼人さんの大会の関係でこちらに来るときは美月ちゃんとテニスをして遊ぶ。


 こんな幼稚園児生活を続けているうちに月日が経ち、気が付けばもうすぐ小学生になろうとしていた。


 テニスを極めんとするにあたり、問題の一つとして挙がってくるのが学校生活のことだ。大会の日程なんかによっては学校を休むことを余儀なくされると予想できる。


 なので、俺は小学受験を受け私立学校へ通うことにした。流石に小学校の勉強で躓くことはないので無事合格することができた。


 通うのは一番近くの帝亜第九大学付属小学校、略して帝九ていきゅう小学校だ。


 ……近いといっても、徒歩でどうにかなる距離ではなく電車通学になる。低学年のうちは母に車で駅まで送ってもらうことになるので、両親には本当に頭が上がらない。


 ピカピカのランドセルにいかにも小学生といった制服と帽子。家の前で両親と写真を撮ってから車で小学校へと向かう。


 今、俺の住んでいるところは街の中心地から少し離れた郊外だ。爺さんの家がここら一体の元大地主だったこともあり畑が多かったのだが、時代の流れか開発も進み、今はぽつぽつと家が建ち始めている。


 周りの景色を流し見ながら四十分程で学校へ到着した。

 校庭には臨時の駐車場が設けられ、そこに止めた車から降りる。


 校舎入り口の周りには人だかりが出来ている。


「校門前でも写真撮りたいのだけど、式の後にした方が良さそうね~」


 母がそう言っているが、俺も同感。列をなして撮影待ちをしているところを見るに、撮り終わるころには式が始まってしまうだろう。


 校舎の壁にはクラス分けが張り出されている。


 平仮名で書かれていて若干、見づらいが名前を発見。


「一組だって!」

 

 上からぱっとな行を探し、一クラス目で見つかった。


「ほんとね。あ、ふふ」

「なあ、環。クラス表、もうちょっと見てみたらどうだ?」


 母は笑い、父はいきなりそんなことを言い出した。


「えー、なんで?」


 同じ幼稚園で小学受験する子はいなかったし、知り合いのいないクラス表をじっくり見ても面白いことなんてないと思うんだけれど。


 よっぽど珍しい苗字の子でもいたのだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る