第16話 名前


 今生の名前は『丹羽にわたまき』。一度、両親に名前の由来を聞いたのだが、本来は別の名前をつける予定だったという。だかしかし、産まれてきた俺を一目見て、ビビッときたらしく『環』と命名された。


 俺はこれをテニス神のイタズラだと確信している。名前の由来はテニスの漢字表記である庭球。それをもじってプロテニス選手に『丹羽環庭球』がいたら面白いだろ、とか恐らくそんなノリだ。


 あいつ、思いつきで動いてそうだしな。まさに俺の転生の件とか。


 そんなわけでクラス表を改めて上から眺めていく。


 ひらがな表記で見づらいが、なにかここにあるのか?


「あ、もしかして……」


 そこに見つけたのは『みこしば みつき』の名前。


「あー! いたいたー、たまきくーん!」


 手を振って駆け寄ってきたのはテニス仲間の美月ちゃん。


「みつきちゃんもこの学校に通うの!?」


 県外に住んでいたはずなのに、どうしてだ?


「おはよう、環くん。それに、祐樹さんと遥さんも。今日から六年間、色々とお世話になります」


 美月ちゃんの後ろから現れた隼人さんと菖蒲さん。うちの両親に挨拶をし、世間話を始めた。


 しかし、どうして急にこっちの学校に通うことになったんだ?


「えへへ、実はねー。パパの仕事の関係? で引っ越すことになったんだよ!」


 聞いてみるとそんな返答が。


「へえー、随分と急だったんだね」


 というか、この学校。受験もあるのにそんな急に通えるものなのか?


「ううん、びっくりさせようと思って、環くんには内緒にしてってお願いしてたの。どう? 驚いた?」


「うん、凄くびっくりした」


 流石に予想外過ぎて驚いた。

 

「でしょ! じゃあ、一緒に教室に行こう!」


 こうして、二度目の小学校生活は、幼馴染という強い味方を得て幕を開けたのだった。

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